Scribner Associates(スクリブナーアソシエイツ / USA)
膜抵抗測定システム MTS740
MTS740型は、米国の燃料電池計測システム開発の パイオニアであるScribner Associates社により、米国 エネルギー省の高温加湿膜開発プロジェクトの一環として技術開発が行われ、開発された製品です。
PEMFC用の高温低加湿膜の開発にあたり、実用時と 同じ厚み方向(through-plane)のイオン伝導度を早く正確に測定可能です。
株式会社東陽テクニカ 脱炭素・エネルギー計測部
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Mail:keisoku[at]toyo.co.jp
特長
膜の伝導度測定のニーズと課題
燃料電池用の電解質膜の伝導度測定をする場合、発電時と同じ膜の厚み方向(through- plane)でのイオン伝導を測定することが望ましいですが、これまでは測定が困難でした。
厚み方向でのイオン伝導率測定は、電極で挟みこんで恒温恒湿槽内で測定する方法が 従来から行われてきましたが、電極で挟み込まれた膜の湿度状態の制御は難しいことや、 加湿による膜の厚み変動等の問題、またセル(MEA)に組んでの測定では膜以外の要素も影響するといった問題で、単純に膜だけの比較を行うのは困難でした。
そこで代用として行われていたのが面方向(in-plane)での測定です。 面方向での測 定は膜の加湿状態などを管理しやすいですが、実際の厚み方向でイオン伝導を測定して いないため、異方性がないとされる膜でしか代用となりません。近年は意図的に異方性を持たせた膜も登場しており、実用時と同じ厚み方向での評価が求められています。
MTS740は確立した測定手法と加湿条件制御を組み合わせることにより、このような 課題を解決した計測システムです。
MTS740の特長
膜厚み方向(through-plane)でのイオン伝導度測定
MTS-CellHead
(サンプルホルダ部)
サンプル膜をサンプルホルダ部の電極間に指定電極押圧で 挟み込み、ホルダ部を本体にセットするだけで、サンプル膜への加湿ガス導入を確保し、4端子交流インピーダンス測定が行えます。
オプションのMTS-Cell110型を使用することで、膜の面方向(in-plane)でもイオン伝導度を測定することができます。
迅速な加湿条件変更
サンプル膜をサンプルホルダ部の電極間に指定電極押圧で 挟み込み、ホルダ部を本体にセットするだけで、サンプル膜への加湿ガス導入を確保し、4端子交流インピーダンス測定が行えます。
MTS740 ガス供給部
ソフトウェアによる自動測定可能
MTS740付属のMTS4ソフトウェアにより、膜温度、膜周りの湿度を制御可能です。
また相対湿度変化のプロファイルを作成することで、指定のRH条件に到達後、ZPlot ソフトで動作するインピーダンスアナライザを連動させ、交流インピーダンス測定を行うことができます。
MTS4ソフトウェア
高い測定精度、再現性
下のグラフはNafion膜 NRE-212をMTS740型(計測はソーラトロン社製1260型) で、3MHz以下周波数範囲で交流インピーダンス測定し、Z実軸との交点から算出した伝導度のデータです。
伝導度の算出には膜乾燥時の厚みを用いています。 複数サンプルを交換して測定した際に、同加湿条件での伝導度のバラツキは±5%以内 と、高い測定再現性を持っています。
(※膜厚み方向で測定する場合、周波数~1MHzではZ実軸までプロットできません。)
サンプル:Nafion-212
測定条件
サンプル:80℃
相対湿度:90%~20%(10%刻み)
相対湿度変化15分後に測定
仕様
温度範囲 | 30℃~120℃(加湿器露点温度) 30℃~180℃(サンプル温度) |
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加湿精度 | ±2% @20~95%RH |
加湿度計測 | 静電容量型湿度センサー(Vaisala) |
圧力範囲 | 1~3気圧 |
試料寸法 | 10μm~200μm厚、10mm幅×30mm長 |
使用ガス | 水素、窒素、空気など(2種切り替え可能) |
湿度変更時間 | チャンバ雰囲気 3分、サンプル 7分 |
使用電源 | 100-120VAC、50/60Hz |
PC接続 | USB |
本体寸法 | 450mm(H)× 275mm(W) ×475mm(D) |
システム構成
MTS740 構成品
- MTS740(本体) 1台
- MTS-CellHead MTS740用セルヘッド 1個
- MTS4制御ソフトウェア 1式
- MTSGDL MTS740用GDL 1組(10ペア)
- MTSCPS MTS740用カーボンペイント 1ビン(30g)
- 測定用ケーブル、セルヘッド用断熱材
MTS740-PSM 構成品
- MTS740の基本構成 各1台
- PSM1735型 インピーダンスアナライザ 1台
・測定周波数範囲:10μHz~35MHz
・MTS4制御ソフトで連動可能
オプション
- MTS-CellHead MTS740用セルヘッド
・MTS740本体に付属している物と同じ予備用のセルヘッド
・MTS740本体のユーザーのみ追加購入可能 - MTS-Cell110 MTS740用セルヘッド
・サンプル取付部がBT-110型になった膜面方向での抵抗測定用セルヘッド - MTSGDL MTS740用GDL(10ペア)
・サンプル測定時に使用するガス拡散電極
・1サンプル当たり2個ずつ使用 - MTSCPS MTS740用カーボンペイント(30g)
・セルヘッドにMTSGDLを仮留めする際に使用 - MTS-TANK MTS740加湿器給水用タンク
・ガス圧をかけることでMTS740本体内の加湿器水位を一定に保持可能 - インピーダンスアナライザ(測定周波数範囲:~3MHz以上推奨)
・上記PSM1735型、または"ZPlot”ソフトウェアにより制御可能なインピーダンスアナライザ(Solartron社製1260型)の使用を推奨