直流電源装置:電流リップルが大きい負荷への電力供給
直流電源装置:電流リップルが大きい負荷への電力供給
負荷がインバーター(DC/AC)、DC/DCコンバータ、DCモーターなどのアプリケーションにおいて、多くの場合DC電源は大きなリップル成分を持つ負荷を駆動する必要があります。リニア電源であればこのようなリップルが大きい負荷を簡単に処理できますが、スイッチング電源を使用してこのタイプの負荷を駆動する場合、予期しないような問題が発生することがあります。
その理由は、スイッチング電源はリニア電源とは異なり、出力キャパシタに電力が常時継続的に供給されているわけではなく、一定のレート(スイッチング周波数)で”パケット”のように断続的に電力を供給するからです。
負荷が安定している場合、スイッチング電源が出力キャパシタを「満充電」状態に保ち、安定した出力を維持することは比較的容易です。しかし、負荷が安定していない場合、スイッチング電源の制御ループが負荷の変化に対応して出力キャパシタへの電流量を増やす前に、出力キャパシタがかなり放電してしまう場合があります。そうすると出力キャパシタの電圧が低下するため、出力電圧を設定電圧まで戻すためにスイッチング電源はかなり高い電流を出力キャパシタに供給しなければなりません。スイッチング電源内のコンバータの電流制限によっては、出力キャパシタを再充電するのに数サイクルかかる場合もあります。
電流リップルが大きい場合、もう1つ問題があります。たとえば、電流リップルがDC出力電流の約5%を超える場合、スイッチング電源がこの電流値をエラー状態とみなし、過電流保護機能により電源をシャットダウンするかもしれません。負荷のパルスレートが電源のスイッチング周波数と調和関係にある場合、制御ループが不安定になる可能性があります。また、電流リップルが大きいとスイッチング電源の出力に負担がかかり、寿命を縮める原因にもなります。
実用的なソリューション
この問題に対する最も実用的なソリューションは、以下の図のように等価直列抵抗(ESR)が低いキャパシタをスイッチング電源の出力側に接続し、電源装置を安定したDC負荷に接続するのと同様の状態にすることです。キャパシタの静電容量は、リップル電圧を出力電圧の5%未満にするのに十分な大きさにする必要があります。
必要な静電容量は、ピーク出力電流とリップルの許容値および周波数から計算できます。たとえばリップルの許容値を動作出力電圧の2.5%とすると以下の式になります。
C = ((t/0.025)/Vout)×Ipk =((40×t)/Vout)×Ipk
※C:静電容量(F) t:1/F(秒) Vout:出力電圧(V) Ipk:ピーク電流(A)
一般的に、静電容量はピーク電流1Aあたり1000 μF~10000μF程度となります。また、出力電圧が低いほど、必要な静電容量は大きくなります。
外付けキャパシタを選定する際は、必ず「コンピュータグレード」のものを選択してください。コンピュータグレードのキャパシタは等価直列抵抗(ESR)が低く、非常に高いリップル電流まで許容できます。通常、キャパシタにはネジ端子がありますので、スイッチング電源の出力端子からコンデンサの端子へ配線し、次にもう1本の電線でコンデンサから負荷へ配線して図のようにスイッチング電源と負荷の間に入るように接続してください。
※本資料では「キャパシタ」という言葉は「コンデンサ」と同義で使用しています。
参考資料
AMETEK Programmable Power社のブログ
「External Capacitor Prevents Problems with High Ripple Current Loads」
お問い合わせ先
株式会社東陽テクニカ eモビリティ計測部