ネットワーク監視に役立つフレームワーク ~FCAPSとITIL~

ハードウェアの故障、ソフトウェアのバグ、運用上のミス。これらは私たちが日常的に直面するITの現実です。完璧を追求しても、人間が作ったシステムには必ずしも避けられない欠陥が存在します。
今回は、「FCAPSモデル」と「ITIL」の2つフレームワークを通して、監視の重要性について解説します。

「ネットワークが遅い」ということ

私達は、しばしば「ネットワークが遅い」ということを口にしたり耳にしたりします。ネットワークに対して文句をつけるときは、たいてい「遅い」か「つながらない」のどちらかです。
「つながらない」状況とは、電話と同様、こちらから発信してみたものの相手に接続できない状況です。
では、「ネットワークが遅い」とはそもそもどんな状況なのでしょうか。

「遅い」というからには、なにかと比較しているはずです。

  • 「昨日」と比べて遅いのでしょうか?
  • 「隣の人」と比べて遅いのでしょうか?
  • 「他のアプリケーション」と比べて遅いのでしょうか?
  • 「(これくらいだという)自分の期待値」と比べて遅いのでしょうか?

重要なことは、「遅い」という主観的な言葉をいかに客観的な数値に変換して分析できるか、ということです。

ネットワークが遅い

実際のところ、ネットワークが遅い原因は様々あります。まずは「何と比較して遅いのか」そして「何に起因した遅延なのか」を調査する必要があります。
それらを調査するためには、ネットワーク監視ツールが必要となります。

ネットワーク監視とは

ネットワーク監視とは、一言で言えばネットワークが正常に稼働しているかを確認する作業です。
ネットワークが使えなくなってしまうと、その被害は甚大です。最近、有名な某企業でネットワーク障害が発生し、社内的な被害だけではなく、ビジネス的にも大きな影響があったことが大きな話題となりました。
ネットワーク障害はどれだけ対策を強化してもゼロにはなりません。
しかしながら、定常時から監視をしておくことで、予兆を検知し、障害時に素早く対処ができるようになります。

ネットワーク監視に役に立つフレームワーク

ネットワーク監視を考える上で2つのフレームワークをご紹介します。これらは、まずなにをどう監視するかを考えるとっかかりになります。

OSI FCAPSモデル

古くからあるフレームワークで、ネットワーク管理や監視をしている方であれば一度は耳にしたことがあるかと思います。
FCAPSとは、ネットワークで管理すべき対象の頭文字です。それぞれを定義の定義は以下のとおりです。

  • 障害管理 (Fault Management)
  • 構成管理 (Configuration Management)
  • 課金管理 (Accounting Management)
  • 性能管理 (Performance Management)
  • 機密管理 (Security Management)

OSIといえば、OSI参照モデルが有名(というより、もはやネットワーク界の教典?)ですが、FCAPSもこちらで規格化されています。1980年代初頭に策定されたこの指標は、事後対応型のネットワーク管理から積極的なアプローチに移行することが目的でした。
あくまで私の印象ですが、現在では「このフレームワークが実際に用いられている」というよりは、「フレームワークとして概念化され広く知れ渡っている」ように思います。

ITIL (Information Technology Infrastructure Library)

こちらも現場ではよく聞かれるようになった用語です。ITILとは、ITSM(ITサービスマネージメント)のベストプラクティス(成功事例)集のことです。時代のニーズにあわせて更新され、現在V4までリリースされています。
ITSMとは、事業部門が必要とするITサービスの計画/供給/改善を管理する仕組みを指します。ですので、実際にはネットワーク監視を含むもっと大きな概念でのフレームワークです。

ITIL 4の「指針となる原則」は以下の7つです。

  • 価値に着目する (Focus on value)
  • 現状から始める (Start where you are)
  • フィードバックを元に反復的に進化していく (Progress iteratively with feedback)
  • 協働し、可視性を高める (Collaborate and promote visibility)
  • 包括的に考え、取り組む  (Think and work holistically)
  • シンプルにし、実践する  (Keep it simple and practical)
  • 最適化し、自動化する  (Optimize and automate)

この原則は、アジャイル原則などとも共通する部分が多いです。

また、ITIL 4で、価値を共創するプロセスに不可欠な「4つの側面」は以下のとおりとなっています。

  • 組織と人 (Organizations and people)
  • 情報とテクノロジー (Information and technology)
  • パートナーとサプライヤ (Partners and suppliers)
  • バリューストリームとプロセス (Value streams and processest)

ベストプラクティスというだけあって、実践的で自分達のケースに落とし込みやすい形に整理されているため、業務で取り入れやすいのではないでしょうか。学んだ知識を実践しながら「慣れ」ていくことがITILを定着させる近道かと思います。

今年のJANOG50で、NEC様がITILをネットワークの運用監視に取り入れたという公演をなさっていました。本だけでは学べない、現場の方々のリアルな運用についてのお話を聞くことができ、非常に勉強になりました。
JANOG50 Meeting 運用を変化しながら継続していくための8つの極意

当社が提供するネットワーク監視ソリューション

当社では、ネットワークを総合的に監視するためのソリューションを提供しています。NeyEyez製品は、Easy to deploy、Easy to understand、Easy to analyzeをコンセプトにした製品となっています。
ネットワーク監視に興味がありましたら、下のボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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あとがき

ネットワーク障害を未然に防ぐ、または発生した障害を最小限に抑えるためには、適切なネットワーク監視が必要です。監視ツールは、手軽に始められる製品から大掛かりなシステムまでいろいろ存在します。使い勝手やコストなどを比較して自分達の環境に適したものを選ぶようにしましょう。

また、いくら監視ツールが優秀で、システムの自動化が進み、プロセスが高度化したとしても、運用には「ヒト」の要素がたくさんあります。ITILでいうところの「組織と人 (Organizations and people)」です。チームでプロセスを実現するのに必要な役割、人材像を明確化し、必要なスキル向上のためのトレーニング計画を策定し実践することが重要です。

システムのクラウド移行が進み、コンテナやオーケストレーションといったクラウドネイティブな技術が台頭し、従来の監視そのものの運用が変化しつつあります。「監視」よりも大きな概念を指す「オブザーバビリティ」という用語も聞かれるようになりました。
今後もネットワークの新しい技術やフレームワークについて、ブログでご紹介していければと考えています。