ネットワークの自動化とREST API
ネットワークの自動化は、現代のIT環境でますます重要性を増しています。エンジニアにとって、タスクの自動化は効率化と作業負荷の軽減につながります。
そして、ネットワークの自動化とREST APIは、ネットワーク管理や操作の効率化を目指すために密接に関連しています。
自動化にはさまざまな方法がありますが、本記事ではREST APIに焦点を当ててネットワークの自動化について解説します。
ネットワークの自動化とは
ネットワークの自動化とは、手作業で行っていたネットワークタスクを自動的に実行するプロセスです。ネットワークの設定、監視、テスト、トラブルシューティングなどの作業を自動化することにより、迅速かつ効率的に行えます。
ここではひとつひとつの技術については解説はいたしませんが、ネットワークの自動化はさまざまな技術が活用されています。
ネットワークの自動化を考える上で重要なことは、「ネットワークの自動化とはエンジニアだけにメリットをもたらすのではない」ということです。
ネットワークエンジニアにとって、繰り返しの定形作業や手動での設定作業を自動化することで、作業の効率化や一貫性の確保が可能になります。開発エンジニアにとっては、開発しているアプリケーションのスケーラビリティやオープン化を向上させます。セキュリティエンジニアにとっては、セキュリティタスクの自動化やリアルタイムの脅威検知などの対応が可能になります。
このようにエンジニアのメリットばかりに注目が集まっていることは事実です。
では、ユーザにとってのメリットとはなんでしょうか。
それは、ネットワークの自動化により、ネットワークの安定性やパフォーマンスが向上し、信頼性の高いネットワーク接続を享受することができるようになります。また、自動化されたネットワークプロビジョニングにより、新しいサービスやアプリケーションが自動的に展開され、ユーザはより迅速で効率的なサービスを利用することができるようになります。
このようにネットワークの自動化していくことは、エンジニアだけでなくユーザの組織全体にとってもメリットが大きいと考えます。
REST APIの基本概念
RESTには主に4つの設計原則があり、それに則ったAPIがREST APIとなります。
- アドレス可能性 (Addressability)
- 提供する情報がURIを通して表現できること。
全ての情報はURIで表現される一意なアドレスを持っていること。
- ステートレス性 (Stateless)
- HTTPをベースにしたステートレスなクライアント/サーバプロトコルであること。
セッション等の状態管理はせず、やり取りされる情報はそれ自体で完結して解釈できること。
- 接続性 (Connectability)
- 情報の内部に、別の情報や(その情報の別の)状態へのリンクを含めることができること。
- 統一インターフェース (Uniform Interface)
- 情報の操作(取得、作成、更新、削除)は全てHTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETE)を利用すること。
RESTの設計に関する一次ソース的なドキュメントは、Roy Thomas Fielding氏が2000年に発表した論文「Architectural Styles and the Design of Network-based Software Architectures」と言われています。
そこで、この論文のREST記述がある5章を読んでみました。するとこの論文にはそれぞれの設計に関する記述はありましたが、「4原則」という記述はありませんでした。4原則はあとからまとめられた言葉のようです。
興味がある方はぜひ読んでみてください。ページ数が多いですので、まずは該当の5章のみから読み始めることをおすすめします。以下のリンクから該当のページが確認できます。
Architectural Styles and the Design of Network-based Software Architectures - CHAPTER 5 Representational State Transfer (REST)
パケットキャプチャ製品であるSYNESIS(サーバ)とユーザ(クライアント)の例で、REST APIをイメージするとこのようになります。
REST APIは、リソースを一意のURLで表現するため直感的でシンプルです。また、通信プロトコルにHTTPを使用していますので、プラットフォームや言語に依存しません。さらにHTTPの持つキャッシング、ステートレス性、スケーラビリティなどの特性を活用できます。
REST APIは、提供する側にとっても、使用する側にも、メリットが大きいアーキテクチャと言えます。
ネットワークの自動化におけるREST APIの活用例とメリット
一般的にネットワークの自動化にREST APIを活用することで、さまざまなタスクを効率化することができます。例えば、ネットワークデバイスの設定変更やデバイスの監視、トラブルシューティングなどが挙げられます。
REST APIを使用することで、プログラムやスクリプトを作成してこれらのタスクを自動化することが可能です。ネットワークデバイスへの接続や認証には、APIキーまたはトークンを使用します。これにより、セキュアな通信と認証が確立されます。
さらに、REST APIを活用すると、ネットワークの状態やパフォーマンスに関する情報を取得できます。たとえば、トラフィックの統計データやデバイスの利用状況などをリアルタイムに監視できます。また、ネットワークデバイスの設定変更やアップグレードを自動化することも可能です。
また、REST APIは広く普及しており、多くのツールやフレームワークがAPIの設計、開発、テスト、ドキュメント作成などをサポートしています。このため、開発の効率性や生産性を向上させることができます。
パケットキャプチャ製品「SYNESIS」ができる自動化
当社が開発、販売している「SYNESIS」は、REST APIを提供しています。現時点のREST APIバージョンはv2となっており、v1の機能を拡張し統一性をもたせた使いやすいAPIとなっています。
ちなみに当社の開発環境でもたくさん利用しています。
SYNESISの主要なオペレーションはすべてREST APIで操作可能です。
- キャプチャの開始・停止
- トレースファイルの作成
- キャプチャセッションの削除
- キャプチャセッションのロック
- 各種フィルタ操作
- パケットリプレイヤーによるトラフィックの送信 など
SYNESISが提供するREST APIの詳細は、お持ちのSYNESISの「SYNESIS 文書一覧 & 配布ファイル」より確認が可能です。
最後にSYNESISのREST APIを使用するユースケースをいくつかご紹介します。
- 定期的なオペレーション(キャプチャ開始・停止、ステータスチェック)
- ルータやサーバなど、イベント・エラーが発生したIPアドレスや通信セッションについてフィルタを作成し適用、トレースファイルを作成
- トレースファイルをローカルへ転送、フォルダ作成・名前変更などファイル管理
- スイッチを経由したSYNESISのキャプチャポイントの自動変更
- SYNESISまたは各機器からのSNMPトラップを契機とした各種操作 (キャプチャ開始・停止、トレースや各機器等ログの取得、解析など)
- ラボ環境においてのトラフィックエミュレーション装置と連携したデバイステストの自動化
このようにパケットキャプチャの自動化は、運用環境だけでなくラボ環境でもお役立ていただけます。もし、SYNESISによるパケットキャプチャの自動化に興味がありましたら、以下よりお問い合わせください。
あとがき
ネットワークの自動化は、進化し続けています。ですので情報のアップデートも重要な鍵となります。
そういえば、もうすぐInterop23 Tokyoが開催されますね。そこでもきっとネットワークの自動化ソリューションの展示はたくさんあるでしょう。インターロップには当社も出展する予定ですので、来場の際にはぜひお立ち寄りください!
「Interop Tokyp 2023」出展のお知らせ(2023/6/14-16)