東陽テクニカ社員が感じる“未来のモビリティ社会”
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- 目次
はじめに
普段、“はかる技術”でクルマの研究開発を支えている東陽テクニカ社員が、ユーザー目線も交えてクルマの未来について想像してみました。今回、営業・技術部門から、間接部門、役員までを対象にアンケートを実施し、普段クルマの技術に携わる人もそうでない人も、クルマに乗る人も乗らない人も、様々な立場からの回答307件を集めました。その結果をご紹介します。皆さんはどのような“未来のモビリティ社会”を想像しますか。
東陽テクニカ社員の“今” ―車を運転しますか?
まず、車の運転について質問しました。
図1:車を運転しますか
図2:車を運転する頻度
車を運転する人は全体の75%でした。年代が上がるとその割合も上昇しています。また、運転する人のうち、61%が週に1回以上運転しており、最も多かったのは週末のみとの回答でした。
図3:車の運転は好きですか
図4:車を運転する理由(複数回答)
車の運転が「とても好き」「好き」と回答したのは70%でした。車の運転をする理由は、「行動範囲が広がる」「日常生活に必要」との回答が多く、「他の交通手段よりも便利・安心」という点に関しては、子どもと移動する時に便利、密を避けるため、といったコメントもありました。
図5:運転支援システムで、役立ったと思うもの(複数回答)
車に搭載されている運転支援システムについては、多くの回答者が普段から活用していると回答し、日々の運転の助けとなっていることがわかります。「その他」の回答として、車線変更アシスト機能、360度カメラ機能、オートクルーズなども挙がりました。
図6:車を運転しない理由(複数回答)
一方、車を運転しないと回答した理由を尋ねると、「他の交通手段を利用」が最も多く、「運転する必要性を感じない」と合わせて日常生活で特に必要ないから、との理由が主でしたが、「運転が苦手」で運転をしない選択をしている人も多くいました。
東陽テクニカ社員の“今” ―若者の車離れ?
続いて、車の所有状況について質問しました。
図7:車を所有していますか
車を所有しているのは全体の54%でした。それぞれのライフスタイルが異なるため一概には言えませんが、若い世代ほど車の所有率が低いという、「若者の車離れ」が顕著に表れる結果でした。
図8:車の購入時に重視すること(複数回答)
車の購入時に重視する点は、「価格」との回答が最も多く、「デザイン」「大きさ」と続きました。
図9:車の利用用途(複数回答)
車を所有する人の利用用途で最も多いのは「レジャー」で、「まとまった買い物」「日常生活の移動」「送迎」「雨天夜間」といった日常的な用途も目立ちました。
図10:車を所有しない理由(複数回答)
一方、車を所有しない理由としては、「日常生活で車が必要ない」が最も多い結果となりました。また、車所有者が購入時に重視した点の1位は「価格」でしたが、所有しない理由でも「購入費・維持費が高い」は2位に入っています。一方、車を所有しない人のうち、35%はレンタカーやカーシェアリングを活用し、必要な時に車を利用していました。
東陽テクニカ社員が感じる“未来”
―EVが普及するには
EVは既に実用化されており、“未来のモビリティ”というよりは“現在のモビリティ”の一つと言えるかもしれません。政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現する方針を発表しており、ゆくゆくは純ガソリン車の販売を規制する意向とも言われていますが、この“未来”に向けて、東陽テクニカ社員はEVに対してどのような想いを持っているのでしょうか。
図11:所有する車の種類
図12:EV、PHVを購入・購入検討したことありますか
現在、東陽テクニカ社員が所有する車の98%はガソリン車・ディーゼル車、またはHVでした。また、これまでにEVまたはPHV(外部電源から充電できるHV)を購入または購入検討したことがある人は、全体の17%に過ぎず、まだまだEVが広く普及している状況とは言えません。
図13:EV、PHVを購入する際に気になること(複数回答)
EV、PHVを購入する際に気になるポイントとしては、「充電ステーションの普及」が最も多く、「車両価格」「航続距離」が続きました。「その他」の回答で多かったのは、バッテリーの寿命に関するコメントでした。
では、実際に検討・購入に至らない理由には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。アンケートのコメントから、近距離の移動は良いが長距離は不安、充電ステーションの普及状況、バッテリー寿命の不安、車両価格が高いなどの課題が見えてきました。コメントの一部をご紹介いたします。
<充電場所・時間>
・集合住宅には充電設備がないことが多く、戸建てでないとEVを所有しにくい
・ガソリン補給と比較して充電時間が長く、移動時間のロスになる
・充電ステーションの設置ポイントが少なく、家の周りにない
・急速充電ができると遠出もできて使い勝手が格段に良くなる
・災害時の充電など、インフラを整えるのにどれくらいの時間がかかるのか
<バッテリー>
・バッテリーが高額、寿命が心配
・バッテリー交換方式になれば検討するかもしれない
・寒冷地での使用はどうなのか
・気温低下からの電池性能低下による航続距離への影響はどうか
・数年経つとバッテリーの劣化により走行距離がより短くなるイメージ
・電池の廃棄コスト・再利用技術はどのようなものか
<航続距離>
・帰省などの長距離でも実用に耐えることができるか
・1回の充電で、エアコンをつけた状態でも300km走行できれば、購入したい思いは高まると思う
・近距離利用は良いが長距離移動には向かないのでは
<音>
・運転音が静かで、歩行していると後ろから車が接近しているのが分かりにくい
・近寄ってくる車に子供が気付かないのでもう少しエンジン音が欲しい
・エンジン音がしないので通行人との接触事故をしないか不安
<価格>
・車両価格が高く購入に至らない
・電気代次第ではないか
・長期的に見るとコストが高い
また、環境への影響に関しては、EVは走行時のCO2排出はゼロとなるものの、トータルで見たらエコとは言えないのでは、との疑問が複数寄せられました。日本は現在、発電の大部分を化石燃料で賄っていますが、再生可能エネルギーの利用を拡大し、クリーンエネルギー由来の電源比率を高めることで初めて、EVがゼロエミッションに貢献できるのでは、との意見が多く出ました。
<環境面>
・発電のCO2排出を考えると本当にエコなのか不明
・EVそのものより、クリーンエネルギー由来の電気を使用するインフラ整備が最重要
・関連設備や充電ステーションの新設が必要となり、今の段階では環境負荷が大きいイメージ
・電力システム自体を考えないと一概にEV=環境に良いとはならないと思う
・EV車がCO2削減に貢献できるのか疑問が多い
・化石燃料の使用量が増えて、環境的に変わらないのではという思いもある
騒音がなくて静か、排気ガスによる空気の汚れが少なくなる、災害時に非常用電源として利用できるなどの意見や、近距離移動や日常生活には便利そうなど、購入検討してみたいとの意見がある一方で、乗り越えるべき課題は多くあり、実際に購入するのはまだ先になりそう、というのが実情でした。
東陽テクニカ社員が感じる“未来”
―完全自動運転車は夢の「お抱え運転手」?
ここからは、実用化に向けて研究開発が進む完全自動運転車について、東陽テクニカ社員の想いを聞いてみました。
図14:完全自動運転車に乗ってみたいですか
完全自動運転車に「ぜひ乗りたい」「乗りたい」と回答したのは全体の68%でした。年代別に見ると若い世代のほうが乗りたいと回答する割合が多い結果となりました。
図15:完全自動運転車に期待すること(複数回答)
完全自動運転車に期待する点は、その主な開発目的である「交通事故の減少」に、「体力・精神面の負担軽減」「年齢・健康面による移動負担の軽減」が続きました。
完全自動運転車に対するイメージとして、「お抱え運転手」「自分専用タクシー」「ドラえもんの世界」「先進テクノロジーの集合体」といったキーワードが挙げられ、行き先を設定したら何もしなくても目的地に到着している、という便利な未来を想像するコメントもありました。ユーザー目線に立って完全自動運転車に期待する点のコメントをご紹介します。
<安全面>
・自分で運転するより安全そう
・居眠り運転のリスクが減らせる
・歩行者から見ても安心感がある
・事故を起こす可能性を減らしたい
<移動時間の充実について>
・飲食、睡眠ができる、映画などのエンタメを楽しめる
・深夜に寝ているうちに目的地に移動できることで、移動範囲が増える
・鉄道と異なりプライベートな空間を保ち、移動中に気を張らなくてよい
・営業活動で使う場合、移動中に別の仕事ができる
<体力面・精神面の負担軽減>
・運転が苦手、恐怖、嫌い、緊張する、事故が不安な人でも、ストレスなく移動やドライブを楽しめる
・運転ができなくて行くのをあきらめていた場所にも行けるようになる
・渋滞時のストレスがなくなる
・長距離運転の負担が減る
・高齢になっても車に乗りたい、免許返納の心配がなくなる
東陽テクニカ社員が感じる“未来”
―完全自動運転車の実用化に向けた課題
夢のような未来に多くの期待が寄せられる一方、大部分の人が完全自動運転車の実用化に何らかの懸念を抱いています。
図16:完全自動運転で不安に感じること(複数回答)
特に「誤作動の不安」「事故発生時の不安」を指摘する人が多くいました。技術面と事故が発生したときの法規制面で不安に思う点のコメントをご紹介します。
<技術面>
・交通量が多い道路や、道幅の狭い道路、他車の急な車線変更にどこまで対応できているのか
・完全自動運転が、非対応の車や街頭機器(信号機)とどのように連携できるのか
・霧の日はレーダーが効かないという話があるが、その懸念点がどの程度解消されたのか
・緊急時に自動運転から手動にすぐ切り替わるのか
・無線通信環境に問題はないのか
<法規制面>
・事故発生時の責任の所在はどこにあるか
・装置の責任所在の不明確さによる人間への補償有無について
このほか、IT攻撃の対象となり得ること、テロなどに使われる危険性を不安視するコメントもありました。また、未来の世代が、免許を取得してすぐに自動運転車から運転が始まる場合に、基本的な運転スキルを身に付けられないのでは、との懸念もありました。
このようにまだまだ“未来のモビリティ”であるがゆえ、期待と不安がそれぞれに大きく膨らんでいる状況です。実用化については、「都市部の一般道路での運転ではまだまだ技術革新が必要」「高速道路での運用や、トラックやバスなどの決まったルートを走る車での早期実現を期待」などの意見が複数ありました。また、「運輸業界の人手不足や労働環境の改善にも繋がる」との期待の声もありました。
運転が好きな人からは、自分で運転する楽しみがなくなってしまうことを懸念する声もありましたが、それでも最新技術を体験したい、興味がある、試してみたい、面白そうという、全般的に最先端に触れたいという興味関心が感じられる結果となりました。
おわりに
東陽テクニカ社員が感じる“未来のモビリティ社会”をご紹介しました。EVについては、近距離移動には適しているものの、バッテリーの寿命、航続距離の短さ、そして充電ステーションの普及状況や充電時間を考えると、まだ購入検討段階にないというのが実情のようでした。また、日本の電源の大部分が化石燃料で賄われている現状、EVが普及しても総合的に見て環境に優しいと言えるのか、との懸念もあります。完全自動運転車については、「交通事故の減少」「交通弱者の移動手段の確保」に加え、移動時間の有効活用、長距離移動が楽になる、運転ストレスからの解放に期待する声が聞かれました。一方で、安全面、法整備、テロの可能性などの不安もあり、運転や車自体が好きな人からは、運転の楽しみがなくなるのは寂しいとの意見もありました。
どちらの“未来のモビリティ”も、実用化や普及の面で、まだまだ多くの課題がありますが、課題を乗り越える意欲と強い意志、そしてソリューションがあれば、実現可能ではないでしょうか。東陽テクニカは、未来のモビリティ社会の実現に向けた研究開発に、“はかる”技術で貢献していきます。その技術の一部を本号でもご紹介しておりますので、ぜひお楽しみいただければ幸いです。