フラットパネルディテクターとは

本記事の内容は、発行日現在の情報です。
製品名や組織名など最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

目次
  1. X線画像化への機器変遷
  2. 小型化(薄くそして軽く)
  3. X線曝射自動検出機能
  4. 直接変換方式と間接変換方式
  5. シンチレータ
  6. 無線接続
  7. まとめ(高画質そして低被曝)

本号の注目製品のページで紹介した「デジタルラジオグラフィー(以下、DR)」は、X線一般撮影に使用して人体の内部情報を取得する装置です。基本原理を簡単に説明すると、人体に対してX線を照射し、人体を通過したX線のみを画像化することで見慣れたレントゲン画像(X線画像)を生成します。此処では、DRの主要部品であるフラットパネルディテクター(以下、FPD)について説明します。

X線画像化への機器変遷

レントゲン装置が開発された初期の頃は、人体を通過したX線を直接X線フィルムに撮影していました。 X線フィルムは、コストは優れていましたが、撮影後にフィルムを現像する手間が必要となり、さらにフィルム自体を医師の元へ搬送しないと読影できないという煩わしさがありました。また撮影したフィルムを保管する必要があり、撮影量の増加と共に保管スペースや、管理に膨大な時間を要するようになりました。

このX線フィルム運用の問題点を解決するために開発されたのがコンピューテッドラジオグラフィー(以下、 CR)です。CRは、イメージングプレート(以下、IP)にX線撮影像をエネルギーとして蓄えます。このIPを読取装置で読取ることで、デジタル画像を作成することができます。画像がデジタルとなったことで、撮影後にフィルムに出力したり、画像保存通信システム(PACS)に転送しディスプレイ上で画像を読影したりするなど、選択肢が広がりました。

しかし、撮影に使ったIPは読取り機を使ってデータを読み出す手間が必要です。健診施設などでは、一日に500件以上の画像読取りをするケースも少なくなく、この読取り作業が技師の負担となっていました。この運用の手間を減らすことが可能となったのがFPDです。

FPDは、X線撮影から直接デジタル画像を作ることができます。それ故、X線撮影した後、数秒で画像を確認することが可能となりました。特に、IPを読み出す必要が無くなったので、大幅な時間短縮になりました。

図1:一般撮影装置の違いによる作業の違い

小型化(薄くそして軽く)

上記の機器変遷に記載したように、近年はフィルム撮影からCR撮影、FPDを用いたDR撮影への置き換えが進んでいます。この置き換えに必須となるのがFPDの小型化(薄さと軽さ)です。病院が従来使用していた撮影台にそのまま収まる薄さと重量でなければ、置き換えができません。現在販売されている一般的なFPDは、カセッテサイズと呼ばれるもので、このサイズのFPDであれば、病院で使用していた撮影台をそのまま利用することが可能です。

X線曝射自動検出機能

フィルムおよびCRからDRへの置き換えを進める上で重要なアイテムがX線曝射自動検出機能です。従来のDRに使われていたFPDは、X線を曝射するとその信号を受光部に送り撮影のトリガーを掛ける必要がありましたが、最新のFPDは、X線を受光するとトリガーが掛かり撮影される機能があれば、曝射装置とのインターフェースが不要になります。

直接変換方式と間接変換方式

FPDには、大きく2種類の変換方式があります。X線を直接電気信号に変換する直接変換方式と、シンチレータを用いてX線を一度光に変換してから電気信号に変換する間接変換方式の二つです。

一般的な特徴として直接変換方式は、シンチレータを用いないため散乱光の影響を受けないので鮮鋭度に優れています。間接変換方式は、シンチレータを用いることでX線の量子検出効率(DQE)が高く、線量低減が可能です。FPDが市場に出た頃には、直接変換方式と間接変換方式の両方が出回っていましたが、昨今では線量低減が可能となる間接変換方式が主流になりつつあります。

シンチレータ

間接変換方式に使われているシンチレータは、ガドリウム系(GoS)とヨウ化セシウム計(CsI)の2種類です。GoSタイプは、素材の安定度がCsIタイプより優れているので管理し易く価格についても安価になる傾向があります。CsIタイプは、結晶構造が柱状になっているので、光の拡散が少なく、DQEが高いのが特徴です。同じX線線量を照射した場合は、GoSタイプと比べて鮮鋭度が高くなります。よってGoSタイプと同等の画質を得るのに必要なX線は少なくて済みます。

無線接続

一般撮影機器は、屋内だけでなく災害現場などでも使用します。フィルムやCR撮影の場合は、撮影後に現像装置や読取装置にかけるので結線が不要でしたが、FPDは、直接画像を出力するので結線が必要です。

近年のモデルは、無線LANを搭載することで有線結線が不要となり、屋外での使用も可能です。

まとめ(高画質そして低被曝)

以上のようにFPDを使うことにより、撮影者の手間が低減されるだけでなく、患者への影響も大きく変わりました。受光器の感度の増加により、少ないX線量で高画質を得られるようになり、優れたダイナミックレンジを持つ画像によって、より細かな病変まで確認できるようになりました。

昨年には、一般撮影装置としてFPDを使ったDRの出荷台数がCRを抜き主流となりました。

今後は、FPDの画像処理も進み、さらなる進化を遂げることでしょう。

図2:フラットパネルディテクター外観図