直径2m~4m
パラボラアンテナを用いた小型衛星用地上局
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小型衛星用地上局は、「低コスト」、「高信頼性」、「簡素化」を目標に人工衛星のミッションや要求性能に合わせたハードウェアとソフトウェアから構成されます。東陽テクニカは、低コスト・高信頼性・簡素化に加え“最新技術”を取り入れた小型衛星用地上局を提供いたします。
大型商用衛星用地上局や最新鋭電波望遠鏡への長年の実績から得た豊富な知識と経験、高度な技能を生かした最新鋭小型衛星用地上局を提供!
小型衛星の活況
近年では地球観測や災害監視などを目的とした質量100kg未満の小型衛星開発が、民間企業を巻き込みながら大学や研究機関で驚異的な勢いで活発化しています。活発化の要因は、開発コストが低く開発期間が短いことに加え、欧米での商用化の成功事例があることです。大型衛星の開発コストは1機当たり約200億円かかり、開発期間は5年から10年必要とされるのに対して、小型衛星の場合は数億円・2年程度で開発が可能です。
小型衛星ビジネスの成功例は、コンステレーションと称される地球規模で衛星を分散配置して頻繁に観測する技術と、高い時間分解能を意識した観測により得られたデータの利用です。ひと世代前の小型衛星からのデータダウンリンク(以下データDL)速度は数十Mbpsであったものの近年では数百Mbpsを達成し、大型衛星に匹敵する観測が可能です。
小型衛星と同様にその地上局は「低コスト」実現のため、カタログ化されたサブシステムや装置が販売され始めました。小型衛星ビジネスの成功には衛星ミッションに最適化されたシステム設計による専用地上局とサポートが重要となります。
小型衛星用地上局の構成
小型衛星用地上局は、衛星運用コマンドを送信し、衛星からのデータを受信・解析するためのサブシステムから構成されます。一般的な4つのサブシステムを紹介します。
アンテナ・駆動系
衛星へのコマンド信号や衛星からのデータ信号をアンテナ口径 4m以下のアンテナから送信・受信します。
信号は、二つの周波数帯域(S帯とX帯)を二つの偏波(右旋・左旋円偏波)で受信できます(図1)。
データ受信信号は低雑音増幅装置(LNA)で増幅し、電気信号を光信号へ変換して光ケーブルにより室内の制御室へ長距離伝送します。光ケーブルの利用は、距離の離れた設備のグランド電位の違いにDLした信号が影響を受けない効果もあります。制御室では、光信号をアナログ信号に再変換し送受信サブシステムに接続します。 コマンド送信信号は電力増幅装置で増幅し、アンテナより衛星に向けコマンド信号を発射します。
また、アンテナを衛星側に向ける姿勢制御装置を「ペデスタル」や「ポジショナ」と呼び、コンピュータベースのアンテナコントロールユニット(ACU)により制御されます。姿勢制御はイーサネット経由でリモート制御が可能です。
送受信系
衛星からのアナログデータをデジタル化して復調・復号処理する受信系と、衛星を制御するためのデジタルコマンド信号を高周波搬送波に変換する送信系から構成されます。
高速データレートに対応した受信機を利用すると高速で安定したデジタル化が実現できますが、高額な装置になります。したがって、小型衛星用地上局では低コスト化を考慮し、専用受信装置や高速パソコンを利用してソフトウェアベースの復調・復号装置の開発が進んでいます。
データ処理・ストレージ系
大容量化するDLデータをデータベースソフトウェアによりデータ保存と高速伝送を行う装置です。データ量は1回のデータDL可能時間を10分間としてDL速度を500Mbpsとすると、1回のデータDLで約37.5ギガバイトとなり、同程度以上のデータストレージが必要です。平均して1日2回のDLを想定すると1年間で約27テラバイトのデータストレージが必要です。高速バスや通信も重要な技術要素です。
ユーザインターフェイス系
据え付け時に明確になる、地上局の正確な地球座標とGPSなどからの正確な時刻情報から、追尾する衛星の指向角度の算出と追尾スケジュールを作成します。衛星軌道は、インターネット経由で提供されるTwo Line Element(TLE)から演算されます。 少ないリソースの地上局運用では、自動化された誰にでも操作ができるユーザインターフェイスが適切です。親和性に配慮された自動化や省力化は、ユーザの負担軽減に貢献します。
実例とこれからの小型衛星用地上局
小型衛星用地上局は大型衛星用地上局と比較して「簡素化」が進み「低コスト」が実現しています。これは、複数の拠点に小型衛星用地上局の設置を促し、データDLを確実に受信する環境整備の促進につながります。
衛星の大きさに関わらずパラボラアンテナの直径は通信周波数・通信速度・送受信性能により決定され、パラボラアンテナの口径とアンテナの開口効率を最適化することで小口径化が実現できます。データDL速度が一桁変わることで受信性能は10dBの変化に換算されます。一方でアンテナ口径と受信性能の関係は、口径を2倍することで受信性能は約6dBの性能向上になります。ここで重要なのは、アンテナの受信性能を決定付ける要因は、パラボラ面と給電装置(フィード)の正しい位置合わせです。データDLで用いられる周波数帯の波長は約36mmで、波長を考慮してアンテナ口径に対するフィードの位置合わせを行います。この位置関係が理想状態となることで理論どおりの受信性能が得られます。送受信信号のアンテナ指向角度と地球座標系を正しく合わせるアライメントには、豊富な経験と高度な技能を持ったエンジニアが必要です。当社には、熟練のエンジニアが多数在籍しております。
数百MbpsのデータDL速度を達成するため、JAXA宇宙科学研究所 齋藤教授指導の下、開発コストを極力抑えた3.8mパラボラアンテナとフィードを開発・納品(図 2)いたしました。アンテナ製造メーカ所有の近傍界測定装置を用いてパラボラアンテナとフィードの最適化を実現しました。納入後の通信実験では、二つの周波数帯域で小型衛星と通信が確認でき、データDL速度は小型衛星の「ほどよし4号」と348Mbpsでの通信に成功しました。さらに500Mbps(64APSK変調)を達成していると聞きます。
当社は小型衛星用地上局全体のシステム設計を行い、海外企業の製品だけでなく日本企業の優れた製品を採用することで、「低コスト」と「高信頼性」の地上局を提供しています。加えて、小型衛星用地上局で世界をリードし、日本社会へ貢献することを目指しております。製造メーカにとらわれない多くの製品情報と最新技術を持った当社熟練エンジニアがお問い合わせをお待ちしております。