USBバスを解析するUSBプロトコルアナライザ
Mercury T2
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USB 2.0プロトコルアナライザMercury T2は従来品と同等の機能を持ちながら、小型化、低価格化を実現しました。
はじめに
USBはUniversal Serial Busの略称で、コンピュータや組込み機器に搭載されるシリアルインターフェース規格です。2014年1月現在、市場にはUSB 3.0に対応した製品が出回っていますが、USB 2.0製品もまだまだ非常に多くの数が製造・出荷されています。最近では携帯電話やタブレットPCの普及に伴い多くのアクセサリー品が販売されていますが、そこに搭載されるUSBの多くがUSB 2.0です。本稿では、まだまだUSB規格の主流であろうUSB 2.0機器のデバッグを行うためのプロトコルアナライザ、「Mercury T2」をご紹介いたします。
USBの歴史
USBプロトコルアナライザはUSBインターフェース上のUSBトラフィックを記録し、 USB仕様に準拠しながらバス解析の手段を提供する装置です。開発ツール、デバッグ用ツールとも呼ばれています。USBは1996年に初版の仕様USB 1.0が公表されました。それからおよそ17年間の間にUSB自身の普及に連動するように仕様はUSB 3.1にまで進化しました(USB 3.1では10Gbpsの転送速度が定義されております)。皆さんが一番多く目にするUSBは、 High Speedと呼ばれる480Mbpsで通信するUSB 2.0であるかと思います。USBが普及した理由にはその手軽さや扱いやすさが挙げられます。パソコンや家電機器にもUSBインターフェースが標準的に装備されてきたために、誰でも簡単にデジカメやプリンタなどの機器を接続して使うことができます。しかしながらその便利さの影ではそれらの機器を開発・設計・検証するモノづくりをする方々の、並々ならぬ努力と奮闘が繰り広げられてきました。動作不具合、互換性、接続性における不良等、枚挙にいとまがありません。これらを一つずつ解決していくために不可欠なのが「プロトコルアナライザ」なのです。
USBプロトコルとは
USBでの通信は、厳密に決められたルールに従って行われています。例えばデータを送る順番、エラーが発生した場合の復帰手順などです。このルールを「プロトコル」といいます。USBプロトコルは仕様策定団体「USB-IF」によって決められており、USBを搭載する機器はプロトコルに準拠して動作しなければなりません。さらに、 USB機器は多種多様なUSBホスト機器と接続される可能性があるために、USBホストとデバイス間の相互接続性を保つようにしなければなりません。この相互接続性が維持されているかどうかを、予め決められた手順に沿って試験を行う「コンプライアンステスト」というものが策定され実施されています。コンプライアンステストに合格することでその装置は相互接続性を維持していることが証明されることになり「USBロゴマーク」を貼り付けて市場で販売する権利を得ることができます。
問題箇所を切り分ける
モノづくりの方々はUSBインターフェースによるホストとデバイスの接続構成において、発生する多種の不具合を解決するために問題箇所の切り分けを行わなければなりません。製品はソフトウェアとハードウェアから構成されており、ホストとデバイス、接続に使われるケーブルと、切り分ける箇所はいくつもあります。電気的な(ハードウェア)信号の様子などは汎用電子計測機器(例えばオシロスコープ)を使い測定することができます。電気的には正しく動作している、と確信されたら次はホストやデバイスにおいて実行されるソフトウェアによる通信手順に誤りはないかどうかを確認しなければなりません。そこで活躍する装置がプロトコルアナライザです。そもそも、USBとは差動信号による「0」と「1」のビット列のシリアル伝送であり、そこで送受信されるビットストリームデータは機器間の言語(=プロトコル)により定義されています。ビット列で解析するよりもプロトコルで解析する方が人間としては理解しやすいため、プロトコルアナライザはこのビットストリームデータを記録、加工して表示をします。このプロトコルアナライザによる解析画面を見るとホストとデバイス間の通信内容が完璧にわかるため、どちらに間違いがあるのか、どこで間違い始めたのかを正確に特定することができます。また、プロトコル上でどこにも間違いがない場合、他の原因が考えられるため次の手段を打つことができるようになります。
Mercury T2プロトコルアナライザ
Mercury T2は安価で、小型で手軽に持ち運べるサイズが売りのUSB 2.0プロトコルアナライザです。小型ながら従来の高級機と比べても遜色ない機能を備えています。USBトラフィックをもらさず取り込み、初めてUSBのプロトコル解析をする方でも直感的にパケットの流れや問題の箇所がわかるように表示します。カラフルな表示画面は「CATCトレース」と呼ばれ、昔からUSB機器の開発者の間で、業界標準とも言えるほどに普及しています。さらに、細かな条件設定によって目的のパケットやエラーを絞り込んで記録をするトリガ機能、大量のパケットの中から目的の箇所を瞬時に検索表示するサーチ機能など、プロトコルアナライザとしての基本的な機能を網羅しています。制御用PCのUSBバスから電源を取るバスパワー動作のため、外部電源が不要で屋外・屋内を問わず様々な解析現場で使用することができます。
Teledyne LeCroy PSGについて
米国CATC社はUSBが初めて世に出た頃からUSBプロトコルアナライザを販売してきました。CATCのUSBプロトコルアナライザはUSBパケットのやり取りを明快に理解することのできる機器として世界中で大ヒットしました。このCATC社が買収によりLeCroy社に社名を変え、現在はTeledyne LeCroy PSGとなりましたが、世界初のUSB 3.0プロトコルアナライザを世に送り出し、現在もUSB 3.1プロトコルアナライザの開発を行うなど、常に業界の先端を走るトップメーカです。