長寿命高品質の太陽電池のために
~プラズマ光源技術~
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Ⅰ.次世代エネルギー
太陽電池の研究の歴史は古く、1950年代に単結晶シリコンから始まり注目を集めています。その後、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、金属化合物、有機化合物など現在でも新しい太陽電池の研究開発が行われており、変換効率、寿命などの向上を目指しています。当社では太陽電池の基礎材料の物性評価から、太陽電池モジュールの性能評価試験まで各種評価装置を取り揃えております。
Ⅱ.プラズマ光源技術
太陽電池を評価するためには必ずソーラーシミュレータと呼ばれる太陽光を擬似する光源が必要です。当社の取り扱う光源は新しいプラズマ発光方式を採用した光源であり、25,000時間という長寿命をもつ今までにない特長をもつ製品です。
太陽光のシミュレータとして一般的に使用されている光源は、電極を使用して、ガス封入中の電気アークによって光を出力します。Xenonランプもまたガラス製発光管内に電極を設け、Xenonガスを封入したものです。Xenonランプはとても寿命が短く、 200~2,000時間の寿命しかありません。電極をベースにした光源は電極が焼きつくことにより、色品質や発光効率が劇的に変化します。そして単寿命の割に高価となります。今までの殆どのソーラーシミュレータはこれらのランプの組み合わせであり、反射板やフィルターを駆使して太陽光の擬似光を作り上げています。
プラズマタイプの光源はこれらの問題はなく、何年もの間、品質低下する事なく、十分に安定した出力を出します。
このプラズマ光源は約20年前に米国のFusion Lighting Inc社により開発され、現在では、スイスのSolaronix SA社に技術が引き継がれ更なる研究、開発が行われています。当社ではスイスのSolaronix SA社 の 光 源を使 用し、台 湾 のKing Design社がシステムアップを行い、各種ソーラーシミュレータを日本国内のお客様にご紹介をさせて頂いております。 Solaronix SA社はスイスのローザンヌにあるEPFL(スイス連邦工科大学)の研究成果を受けて次世代の色素増感型太陽電池の開発を目的に創立されました。会社設立以来EPFLのSUN2ライセンスを所有しており、LPI研究所と関係があり、色素増感太陽電池の発明者 Prof.Michael Gratzel氏とも深い関わりを持っております。
一方、King Design社は信頼性試験装置など30年以上の歴史をもつ会社であり、太陽電池モジュールの評価に関してはソーラーシミュレータ以外にも、UV照射試験機や、降ひょう試験機、機械的負荷装置などIEC61646/61215 の試験項目全てに対応する機器を提供する事が可能です。また、IECのサプライヤーとして、IECのWebでも紹介されております。開発拠点は台湾の工業技術研究院(ITRI)内にあり、 ITRIのメンバーとともに研究開発を行っております。
当社は Solaronix SA社の光源部門、 King Design社両社の日本の総代理店として、日本のお客様の要求を彼らに伝え日本の太陽電池技術の発展と普及の為によりよい製品を提案していきます。
Ⅲ.定常光ソーラーシミュレータの薦め
太陽電池モジュールの保証は、10年間の出力保証という形で定められています。太陽電池のタイプにもよりますが、シリコン系の場合は20~30年の期待寿命といわれています。シリコンの高騰により、冒頭でも述べましたが薄膜系や有機系と言った各種の太陽電池の開発が盛んに行われています。高効率化もそうですが、次世代太陽電池においても長寿命の製品の開発を目指しています。その為に、通常の規格試験以上のきびしい条件下での加速試験を各メーカーが行っています。光+温度、湿度、長時間といった様々な要素を加えた試験です。
従来から日本ではフラッシュタイプやパルスタイプのソーラーシミュレータが多く使用されてきました。しかし、これらには熱の問題や機器の消費電力の問題がありました。プラズマ光源は従来のランプよりも発熱が少なく、また消費電力も少ない為、定常光として使用する事が可能です。太陽自体がプラズマ常態で発光しています。当社の提供する光源もプラズマ発光で、原理的に太陽光に非常に近い光を提供する事が可能です。有機系や化合物系といった応答速度の遅い太陽電池を評価するには定常光のソーラーシミュレータが必要になります。
Ⅳ.プラズマ光源を使用した試験
当社は、以下のように定常光、長寿命といった特長を生かし加速、劣化試験に最適な装置を提供しております。
1 恒温恒湿槽一体型ソーラーシミュレータ
温度範囲 -45℃~90℃
湿度範囲 60℃@80%、80℃@50%
有効照射面積は 360x360(mm)~モジュールサイズの1.1mx1.4mまで対応しています。
長時間の照射劣化試験などに最適です。
2 幅広いスペクトル範囲
標準のプラズマ光源は350‒1,300nmにおいて優れたスペクトル合致度を持っております。(実際には1,300nm以上の近赤外域においてもスペクトルがあります。)
従来のソーラーシミュレータは違うタイプのランプを複数使用し広い帯域をカバーしてきましたが、これでは片方のランプが切れるとまた再調整しなければならないといった手間がかかります。その点プラズマ光源であれば1個のランプで幅広い領域をカバーできるため日々のメンテナンスが容易です。
3 劣化加速試験用ソーラーシミュレータ
定常光を長時間照射させる試験を行っている研究者も多くなってきています。低照度から1SUNまでが従来の試験環境ですが、1.5SUNや2SUNといった強照度の試験環境も提供できます。このような試験でも25,000時間という長寿命が生かせられます。
また長寿命、低消費電力といった低ランニングコストのソーラーシミュレータを使う事により、今までは困難であった新しい試験環境を作りだすことができます。今後の太陽電池の性能向上の為に御利用下さい。
おわりに
日本の太陽光発電技術に関するガイドラインを制定するための最先端の研究を行っている独立行政法人産業技術総合研究所の太陽光発電工学研究センターと米国の同研究機関であるNREL(National Renewable Energy Laboratory)国 立再生エネルギー研究所との共催による「太陽電池モジュール国際基準認証信頼性フォーラム」が2012年11月に東京で開催され、当社もコンソーシアムメンバーとして参加をいたしました。
日本では数年前より戸建ての個人住宅に向けた小型の太陽電池が普及してきましたが、震災による福島原子力発電所の事故を受けて代替エネルギー供給の促進策として2012年に政府が決定した固定価格全量買取制度により、メガソーラーと呼ばれる太陽光発電所向けの大型太陽電池が急激な勢いで普及しています。2012年下半期の認定発電量ベースで、発電所用大型太陽電池がそれまで多数であった個人住宅用を逆転して上回りました。普及の後押しとなるコストダウンのための技術革新も次々に推し進められてきました。しかしその速度があまりに急であるために、必ずしも使用される太陽電池の十分な信頼性や安全性・耐久性の評価や検証がなされないままに発電事業各社の競争のために建設工事だけが先行して進んでしまっている現状があります。
このフォーラムはそのような問題を回避して安全性を担保する規格をどのように定めるのが確実で合理的であるかを、基礎実験データを収集・解析することで明確にしていこうという目的で運営されています。 AISTの研究者と、シャープ、京セラ、パナソニック、三菱電機、カネカ、ソーラーフロンティアなど、日本の太陽電池メーカーのほぼ全ての会社が一堂に会して議論を重ねています。これらの民間会社からは、科学技術面の議論だけでなく実現のコストやビジネスとしての採算性などもテーマとなります。また経済産業省(資源エネルギー庁)もこのフォーラムに参加しており、国のエネルギー政策の策定にも影響力を持っています。
製品の品質や信頼性の高さは、ずっと日本が世界に誇ってきたテクノロジーです。その技術を活かして世界をリードする高品質・高信頼性の太陽電池製造技術を開発し続けるために、今後も当社の「はかる」技術で貢献していきたいと思います。