脱炭素社会の推進に貢献―東陽テクニカのSDGsの取り組み
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はじめに
本号のテーマを脱炭素とする案が出たのは、2021年初頭のことでした。2020年10月に、日本政府が2050年にカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、それ以前よりも各企業に対する脱炭素への取り組みが期待されるようになってきた頃です。また、同じ頃、東陽テクニカとしてSDGsの達成にどのように貢献していくか、社内で統一認識を持ち、活動を実行するために、SDGsプロジェクトチームを立ち上げました。
本稿では、当社のSDGsプロジェクトチームの取り組みと、活動の中で決定した優先課題・活動目標をご紹介します。また、本号のテーマに関連して、脱炭素と関わりのある製品を取り扱う部門の社員が、日々どのような想いで仕事をしているか、語っていますので、こちらもぜひお楽しみください。
東陽テクニカのSDGsプロジェクトチームの取り組み
当社でSDGsの取り組みを始めることが決定し、プロジェクトリーダーに任命されたとき、真っ先に頭に浮かんだのは当社の企業理念でした。
この企業理念を改めてよく見てみますと、SDGsの考え方と向いている方向は同じであると気づきました。当社の企業理念に基づいて事業活動を推進していけば、自然とSDGsのゴールに向かって進むことになり、持続可能な社会の実現に貢献できる、と確信したのです。そこから、SDGsプロジェクトの活動が始まりました。プロジェクトは、三つのステップに分けて進められました。
ステップ1:SDGs を理解する
プロジェクトは部門横断的なメンバーで構成され、合計8回のワークショップを開催しました。初回は、カードゲーム「SDGs2030」を実施し、SDGsの17の目標を達成するための2030年までの道のりを疑似体験しました。ルールはいたってシンプルで、各個人は与えられたお金と時間を使いながら、世界の経済、社会、環境に影響を与えるさまざまなプロジェクトを実行し、個人のゴール達成を目指すものです。
このカードゲームを通して理解したことは、「世界はつながっており、私も起点である」という考え方です。環境問題に取り組むには経済力が求められますが、経済発展の裏には社会問題が潜み、また、社会問題が環境に大きな影響を与えるなど、全てが結びついていることに気づかされました。一方、一つの問題を解決することで新たな別の問題解決につながることもあります。個人(企業)の選択や行動一つで、世界に影響を与える可能性があることを皆が実感し、東陽テクニカとして何をすべきか、何ができるかを考えるステップに進みました。
ステップ2:優先課題を決定する
まずは、社会的課題を特定すること、そして当社の事業活動の棚卸からスタートし、当社の強みを生かして解決できる課題について議論しました。この活動を進める中で、当社の事業で環境や社会問題の解決に貢献していくという使命感をメンバーそれぞれが感じました。次に、この社会課題のうち、当社が取り組むべき「優先課題」を検討しました。これらの優先課題は普段から心がけて取り組んできたことですが、整理し、可視化することで意識もより高まりました。
ステップ3:目標を設定する
プロジェクトチームで検討を重ね、東陽テクニカの五つの優先課題を特定しました。そして、それぞれの課題に対し、活動目標と貢献するSDGsの各ゴールを設定しました。
本号のタイトルは「脱炭素社会を創る“はかる”技術」ですが、優先課題02「環境保全の推進」の活動目標の一つ目に、「脱炭素社会の推進」を掲げています。全固体電池や空気電池などの二次電池、電気自動車(EV)を始めとしたさまざまな電動移動手段や再生可能エネルギー開発に貢献することで、CO2排出削減を推進していくことを目標としています。具体的には、当社の計測ソリューションで、蓄電池の技術革新・高性能化への貢献、再生可能エネルギーの技術革新への貢献、環境に配慮したモビリティ社会の実現への貢献を目指していきます。
それぞれの優先課題の取り組みは当社のウェブサイトでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
https://www.toyo.co.jp/sustainability/sdgs/
脱炭素のソリューションに関連する部門で働く社員インタビュー
脱炭素のソリューションに関連する部門で働く若手社員3名に話を聞きました。どのような製品を担当しているか、日々どのような想いで仕事をしているか、ご紹介します。
現在の業務について教えてください。脱炭素とはどのような関わりがありますか。
7月に理化学計測部に配属され、電気化学測定システムを取り扱うグループに所属しています。お客様は、電解液や電極など電池の“材料”の研究・製造を行っている企業様がメインです。お客様の研究の主な目的としては、電池の充放電効率を良くすること、蓄電容量を増やすこと、電池の劣化を防ぐことなどがあります。電池の開発が進むことで、例えばEVの普及にもつながりますので、脱炭素にも貢献できるのでは、と思っています。将来的に、自分が提案した製品でお客様の研究がより進めば、嬉しいと思います。
「SP-300」 高性能電気化学測定システム(2ch・アドバンスドモデル)
BioLogic (バイオロジック)社が提供する最高級のポテンショ/ガルバノスタット。FRAを搭載したモジュールでは業界最高クラスの周波数範囲(10μHz~7MHz)、計測確度(0.3%、0.3°)でのインピーダンス測定が可能。
東陽テクニカ 「電気化学ソリューションポータルサイト」
https://www.toyo.co.jp/material/contents/detail/electrochemistry.html
社会人1年目ですが、仕事をするうえで心がけていることは何ですか。
わからないことはなんでも上司や先輩に質問するよう心がけています。もちろん自分で調べることは必要ですが、なんでも周りに質問できるのは新人の特権なので、今のうちに聞けるだけ聞いておきたいと思います。また、正確にお客様の状況を把握できないと良い提案はできないので、お打ち合わせの際はお客様の研究内容についてしっかりヒアリングすることを心がけています。
学生時代は何を勉強していましたか。東陽テクニカに入社した理由は何ですか。
理学部で物理学を専攻し、“有機伝導体”の研究をしていました。大学の研究室に東陽テクニカの取扱製品(Lake Shore社製品)があり、そこで知ったのがきっかけです。実は、学生時代には教員免許も取得しており、将来は多くの人と関わる仕事がしたいと考えていました。東陽テクニカにはさまざまな営業部門があり、多くのお客様にお会いできるチャンスもあります。そこを魅力に感じ、入社しました。学生時代に多くの教授や研究者と交流したことは、現在の営業活動にも活かせていると思います。
今後の目標を教えてください。
まだ自分の仕事の進め方を模索中ですが、自分なりの営業スタイルを見つけて、この会社に、そして社会に貢献していきたいです。まずは今年中に営業活動の流れをひと通り習得し、来年には1人で営業活動ができるようになりたいと思います。
以上、1年目社員のインタビューでした。続きましてはこちらの社員です。
10月に開発部に異動しましたが、今はどのような業務を行っていますか。
開発部は、既存製品でできないことを実現するために、ソフトウェアを作ったり、複数の製品を組み合わせてオリジナルの製品を作ったりします。私自身は、現在プログラミングの基礎を学んでいるところです。今後は、理化学計測部の製品を担当する予定です。
理化学計測部では、どのような業務を担当していましたか。
電源グループに所属していました。いわゆる「電源装置」を取り扱っており、お客様は、EV、電動船舶といった各種電動化、太陽光発電やエネルギーマネジメントなど、再生可能エネルギー分野の研究開発を行う企業様でした。例えば、太陽光発電に関わる試験では、実際の太陽光パネルを使うと、試験の条件が天候によって左右されてしまいます。そこで、太陽光パネルの代わりに「電源装置」を使って試験をするのです。理化学計測部のお客様は、その多くが脱炭素を目標とされていて、さまざまなアプローチで事業を進められています。近年、より脱炭素への関心が高まっているのを感じています。
電力回生式・双方向直流電源「PSBシリーズ」
EA Elektro-Automatik(エレクトロオートマティック)社の、バッテリーや太陽光発電などの出力をシミュレーションできる電源装置。各種電動化に欠かせないモータやインバータ、さらには太陽光発電・蓄電システムなど、幅広い試験ニーズに対応できる。
「PSBシリーズ」の製品ページ
https://www.toyo.co.jp/material/products/detail/psb9000.html
https://www.toyo.co.jp/material/products/detail/psb10000.html
東陽テクニカ 「電源ポータル」
https://www.toyo.co.jp/material/contents/detail/powersupply.html
業務のやりがいはどのようなところにありましたか。開発部での今後の目標は何ですか。
脱炭素に取り組もうとされているお客様に対し、シミュレーターを通してサポートすることで、貢献できているのかな、と思っていました。サポートがうまくいってお客様の試験が順調に進んだときや、感謝されたときは特にやりがいを感じました。開発部では、東陽テクニカの取扱装置に付加価値を付け、オンリーワンのものを作ることができると良いと思っています。それがお客様の役に立つことにつながりますので。
学生時代は何を勉強していましたか。
学部時代は、工学部の環境共生学科で環境問題を幅広く学んでいました。さまざまな視点で環境について学べたのは良かったと思います。大学院時代は、排熱を電気に変換する研究をしており、研究室で東陽テクニカの計測器を使っていました。当時、10台くらいの計測器を組み合わせて自動測定システムを作っていたこともあり、プログラミングには興味がありました。今回、開発部に異動して、やってみたかったことに挑戦できるのが楽しみです。
以上、開発部に異動して間もない3年目社員のインタビューでした。最後はこちらの社員です。
現在の業務について教えてください。
主に民間の測量会社様を担当しています。海底の地形調査などを実施する企業様に、製品をご紹介しています。例えば、マルチビーム測深器は海底形状をはかるための機器で、よく使っていただく製品です。
「SRV-8」高機動性ROV
RJE Oceanbotics社製。8基のスラスターと高度なプログラミングによってあらゆる方向に移動および回転が可能。また、さまざまなオプションを搭載することができるため、ニーズに合わせた調査が可能となる。
脱炭素の動きが加速し、洋上風力というキーワードもよく聞くようになり、問い合わせも増えている印象です。皆さんが脱炭素に注目しているのを実感しており、製品を導入していただけると、貢献できているのかなと感じます。東陽テクニカでは、マルチビーム測深器を含め、地盤検査から、工事中の検査、施工後のメンテナンスなど、各ステージでご活用いただける製品を取り扱っています。
東陽テクニカ 「洋上風力発電ソリューション」
https://www.toyo.co.jp/kaiyo/contents/detail/owp
仕事のやりがいは何ですか。
海洋計測部は取扱製品が多く、お客様のニーズがそれぞれ異なります。そのさまざまなニーズに合わせて考えて提案していくことをやりがいと感じます。九州から北海道まで、日本全国のお客様のところにお伺いし、海や川での調査に同行したり、現場でのトレーニングを行ったりするのも、海洋計測部ならではと思います。製品が多く機械の使い分けや差別化を学ぶのが大変ですが、部署のメンバーはお互い助け合う意識が高く、アドバイスもよくもらいます。
学生時代は何を勉強していましたか。
理学部の地球科学科に所属していました。現在携わる海洋のことや、自然現象、地質、化石など、地球物理全般を幅広く勉強できる面白い学科でした。私は理系でありつつ、いろいろな人と話す営業職に興味があったので、どちらも活かせるという点で、東陽テクニカに入社しました。
今後の目標を教えてください。
将来的には、世界で新しい製品を探し、日本のマーケットに持ってきて広めたいです。現在の取扱メーカーは北米、欧州が多いのですが、コロナ禍で自分自身はまだあまり出張できていません。これから、海外の展示会にも行きたいですね。
以上、海洋計測部の5年目社員のインタビューでした。
おわりに
企業理念の一つである、「“はかる”技術で未来を創る」には、“はかる”技術のプロフェッショナル集団として、社会に価値を提供していく、という思いが込められています。SDGs達成に向けた活動目標が明確となった今、引き続き社員一丸となり、課題の解決に挑戦しております。東陽テクニカは、“はかる”技術のリーディングカンパニーとして、最先端の計測ソリューションを提供し、脱炭素社会の推進に貢献してまいります。