作品への思い入れなら自分たちが世界一!サイバーコネクトツーが人気IPの大ヒットゲーム開発を連発できる秘訣とは

株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役 松山 洋 氏

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目次
  1. この分野なら世界で一番を狙える。我々はそんな専門家になる
  2. 7年周期でゲーム業界にはシンギュラリティが起こる。だから新規参入者にもチャンスがある
  3. その作品が世界一好きだという人間が作ったゲームだからこそ成功できた
  4. より良い環境を作るために開発ツールやアプリは常に見直しを図っています
  5. ゲーム業界の未来は明るい

作品への思い入れなら自分たちが世界一!サイバーコネクトツーが人気IPの大ヒットゲーム開発を連発できる秘訣とは

右肩上がりの成長を続けるゲーム産業。世界の市場規模は、2021年の約23兆円から、2030年には約106兆円まで拡大すると予想されています1)。2022年時点で日本の市場シェアは10%未満2)と、今やゲーム開発のターゲットは世界中のプレイヤーとなっています。

今回は、「NARUTO -ナルト-」や「鬼滅の刃」といった人気IPや、「.hack」シリーズなどオリジナルIPの大ヒットゲーム開発を世界に向けて連発しているゲーム制作会社、株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役 松山 洋氏に、会社の誕生秘話や会社の理念、さらにゲーム開発にかける想いや、開発現場でのエピソードなどについてお話をお聞きしました。

1) Panorama Data Insights「Global Gaming Market」
※1ドル110円(2021年)で計算
2) 株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通ゲーム白書 2023」

サイバーコネクトツー LOGO

【インタビュアー】
株式会社東陽テクニカ ソフトウェア・ソリューション 課長
岩﨑 健太郎

松山 洋氏

2024年3月7日に東陽テクニカが開催した、バージョン管理システムについて学ぶイベント「Perforce on Tour」で基調講演を行う松山洋氏。
サイバーコネクトツーでは、東陽テクニカが取り扱うPerforce Software社製の高速ソフトウェアバージョン管理ツール「Helix Core」を導入。

この分野なら世界で一番を狙える。我々はそんな専門家になる

サイバーコネクトツーの起業の経緯を教えてください。

今から28年前、1996年に私を含め大学の友人10人が集まり、30万円ずつ資金を持ち寄って福岡で設立したのが有限会社サイバーコネクトです。

その頃は、1994年にソニーからプレイステーション、セガからセガサターンが発売され、ゲーム業界の大きな変革期でした。また、「バーチャファイター」や「鉄拳」といった、いわゆるポリゴン(3Dモデル)でゲームを形成するという作り方に大きくシフトした時期でもありました。さらに、当時のソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)がゲーム開発会社の独立起業の支援「ゲームやろうぜ!」を始めたんですね。プレイステーションでゲームを作らせてもらえるのであれば独立起業をしよう、そのような想いで大学の仲間と会社を興しました。

当時、私は25歳で社会人数年のまだ若造。無謀な挑戦で、売れるかどうかの根拠も何もなかったですが、不思議と絶対にいけるという真っ直ぐな信念がありました。最初の6ヵ月間は給料もなかったですね。

オリジナル企画を大手ゲームメーカーに提案して回り、紆余曲折あってプロジェクトが始動し、できあがったのが処女作となるプレイステーション専用の3Dアクションアドベンチャーゲーム「テイルコンチェルト」(1998年4月発売)でした。

その次の1年半で「サイレントボマー」という3Dアクションゲームを作り、3本目に作ったのが、のちに当社の代表作になる「.hack//感染拡大 Vol.1~絶対包囲 Vol.4」というプレイステーション2のアクションRPGです。ただ、その「.hack(ドットハック)」のプロトタイプを作っている最中に、突然当時の社長が会社に来なくなってしまったんです。しばらくして自宅に行くとそこはもぬけの殻。

そこで、会社の皆を集めて「俺が責任取るから新しい体制でやろう。その代わり俺が言うことを絶対に聞いてくれ」と提案したんです。全員がついてきてくれました。当時の私はグラフィックデザイナーでしたが、会社を全部買い取って社長となり、新たに興したのが株式会社サイバーコネクトツーです。現在は、福岡、東京、大阪の3拠点で合計約300名のスタッフが働いています。

サイバーコネクトツーの理念とはどのようなものでしょう。

松山 洋氏

サイバーコネクト時代は、10人で身の丈に合った仕事をしよう、コツコツ頑張っていればいつか結果が実る、という考えのもとで仕事をしていました。でも、お客様視点で考えれば100人で作った大手メーカーのゲームと、10人で作ったうちのゲームが売り場に並んだ時、同じ値段ならどっちを買うか。当然100人で作ったゲームのほうが、おもしろそうだと思い遊びたくなりますよね。

それなのに、頑張っていれば結果がついてくるなんてことは、あり得ない。どこかで心のタガを外して10人で100人分の仕事をする、そんな戦い方に切り替えないと絶対勝てないと思っていました。

そのためには、この分野なら世界で一番を狙える、そんな専門家集団になるしかないと。理念というかそのような考え方、価値観にガラッと変えたんです。社名も変えて完全に新しい姿勢、体制で会社をスタートしました。

新体制でスタートして、それまでと具体的に何を変えましたか。

私が社長となって、まず決めたのが朝9時出勤で遅刻厳禁というもの。絶対これで戦おうと。当時ゲーム業界は時間にルーズなのが当たり前だったので、当然社員からは大反乱が起きました。

でも、従業員と経営層では求められる責任と立場がそもそも違う。だから、その違いをはっきりさせたうえで明確にルールを決めました。9時出勤というのは、日本よりも大きなゲーム市場の海外とやり取りをするために必要なルールで、ちゃんと意味がある。だから新しい姿勢、体制を貫きました。

当時のクリエイターは、物を作るクリエイティブに長けているが故なのか、社会常識などが抜け落ちていました。もちろん今はそんなことはないですが、昔は本当に夢見る子どもみたいなクリエイターだらけでしたね。だから、研修制度を設けて社会人教養を含めて勉強させました。そこから開発の姿勢も環境も大きく変わりました。今も、私自身の考えを社内向けブログや動画で積極的に発信しています。「何がかっこいいと思うか」「どんな考え方をするのか」これが文化として浸透して、皆で同じ方向を向いて進んでいけるのだと思います。

7年周期でゲーム業界にはシンギュラリティが起こる。だから新規参入者にもチャンスがある

松山 洋氏

そもそも、松山様がゲーム業界に興味を持ったきっかけはなんですか。

私の子どもの頃からの夢が「週刊少年ジャンプ」の漫画家になることでした。でも、成長して世の中を見ると、世界には漫画だけではなくアニメもテレビも映画だってある。さらにゲームがある。そして、ゲーム業界は映画や漫画と違って、思いのほか歴史が浅い。つまりゲームだったら追いついて追い越せるチャンスがある、と気づいたわけです。

ゲーム業界には特異点、「シンギュラリティ」が定期的に起こります。大体、7年周期でゲーム業界は毎回リセットされてきました。

起業される前の1994年にも大きな変革があったとのことでしたね。

我々がゲーム開発を始めた時は、それまでの2Dのドットゲームからポリゴンのゲームに大きく変わったタイミングです。その瞬間どうなるかというと、皆がスキルを勉強し直すのです。2Dゲームで圧倒的なアドバンテージを持っていた任天堂の社員さんだって、僕らと横並びになってスタート地点に立ち、ゼロから新しい技術を勉強することになる。そこに新規参入の大きなチャンスがあるわけです。だから夢が持てたわけですね。次の変革も必ずやってきます。

基調講演資料

2021年に発売したオリジナルIP「戦場のフーガ」
(「Perforce on Tour」松山洋氏の基調講演資料より)

その作品が世界一好きだという人間が作ったゲームだからこそ成功できた

ここからはサイバーコネクトツーのゲーム開発について詳しく伺っていきます。まず、サイバーコネクトツーが制作を手掛けるゲームの特徴はなんですか。

私自身がやはり漫画が一番得意ということもあって、成功のためにはその得意な領域を伸ばすしかないと考えました。そこで「.hack」の開発を進めながら、水面下で企画を作っていたのが人気マンガ、アニメ「NARUTO-ナルト-」のゲーム「NARUTO-ナルト- ナルティメットヒーロー」です。私は今でも、漫画は年間1,200冊買っていますし、アニメは全て見て、映画は300本見ています。それら全てからヒントを得て制作しています。

世の中には、苦手なことをコツコツ頑張る美学、というのがありますよね。でも、エンタメの世界はそうではなくて、少年漫画と一緒なんです。一番の必殺技が勝つんです。好きでもないジャンルだけれど頑張って作りました、というゲームより、とにかくこの作品が大好きで、好きであることにかけては他の誰にも負けない、そんな人間が作った、まさに必殺技のようなゲームとどっちがやってみたいでしょう。

少年漫画が好きという強い想い、これが成功につながっているということでしょうか。

松山 洋氏

サイバーコネクトツーには、アクションと少年漫画が大好きなメンバーがそろっていて、誰にも負けない情熱がある。だから成功できたのでしょう。「ジョジョの奇妙な冒険」や、「ドラゴンボールZ」、「鬼滅の刃」のゲーム開発を手掛けた理由も同じです。その作品が好きだからです。やはり原点は少年漫画ですね。オリジナルIPの「.hack」も、「戦場のフーガ」も、その中身は少年漫画です。

少年少女の気持ちに戻って現実を忘れて、明日からまた頑張ろうという気持ちにさせてくれる、少年漫画が大好きなんです。そんな作品やゲームが好きな人間が作っているからこそ、多くの方が支持してくれるのではないでしょうか。逆に、うちはフォトリアルのゲームはやりません。現実にできることに私が興味ないので。あと、スマートフォンのゲーム開発は行っていません。これも私が好きではないからです。

サイバーコネクトツーが開発を手掛けた人気IPを題材にしたゲーム、例えば、「NARUTO-ナルト-」や「ドラゴンボールZ」、「鬼滅の刃」などが成功している秘訣はなんでしょう。

これも、言ってしまうと好きだから、という言葉に集約されるでしょう。当社が手掛けた人気IPを題材にしたタイトルは、それこそ夢の中でもそのタイトル、キャラクターのことを考えるような、その作品が世界一好きだ!と自負する人間が作っています。そこまで好きだからこそ、いろんなことに気づけるし、ファンと目線を共有できる。

例えば対戦アクションで、やられる時のモーションが全キャラクター一緒だったらどうでしょう。キャラクターによってその動きは全く別のモノになるべきです。うちではキャラクターを表現するモーションの使い回しは一切NGです。年齢、体格、性別が違えばニュートラルモーションも、歩き方のモーションも全部違うはずだからです。ちょっとした動きにもこだわりが詰まっている。それが多くの方に伝わって、結果、愛されているということなのではないでしょうか。

まさにキャラクターになりきって、一挙手一投足を考えるということですね。

松山 洋氏

はい、当社では1人で1キャラクターの全てのモーションを担当します。スタッフ間ではキャラクターの取り合いが起こりますね。「私こそがこのキャラを担当すべき」と周りにプレゼンしてキャラクターを勝ち取る。

能力が高いスタッフは家に帰ってからもずっとキャラクターのことを考えています。ある意味そのキャラクターになっている。好きだから考えられる、やはりそこにつながるのだと思います。世界一を名乗る資格があるか、どれだけ積み重ねて読んだか、考えたか、その結果、自分がそのキャラクターだったらどうしたか?という考えに行きつくんです。

この世界では能力がある人が全てで、簡単に下克上も起こります。例えば、人気キャラクターである「うずまきナルト」の息子「うずまきボルト」を担当したのは当時の新人でした。良いものができあがったら、そこは男女も年齢も国籍も何も関係ない。ある意味イーブンです。技術で勝負すれば誰も文句を言わないですし、負けたら技術でリベンジしようとします。

人気IPを題材に開発を手掛けつつ、オリジナルIPを積極的に展開されている理由は何なのでしょう。

物を作っている人は皆同じだと思いますが、作品、コンテンツを作る人間の目標はきっと一つで、自分達がゼロから生み出した作品で世界を支配すること。いわばIPによる世界征服ですね。これを夢見ていないクリエイターは多分いないはずです。

我々は、お預かりしているIPでお客様の満足を作っていきつつ、やっぱりゼロから作る自分達の作品で、世界中の人たちに愛してもらえるゲームやコンテンツを生み出していきたい。だから両方やっている。それは今後もきっと変わらないと思います。

基調講演資料

サイバーコネクトツーは受託(人気IPを題材に開発)とオリジナルIPの合計7ライン体制で制作を進める(「Perforce on Tour」松山洋氏の基調講演資料より)

松山洋氏が原作を担当するゲーム制作会社を舞台にした漫画「チェイサーゲーム」を始め、漫画や書籍も制作している(「Perforce on Tour」松山洋氏の基調講演資料より)

より良い環境を作るために開発ツールやアプリは常に見直しを図っています

効果的なチーム文化を築くために重要だと思う要素はなんでしょう。

話し合いながら作ることです。2020年頃のコロナ渦には当社も4ヵ月フルリモートに切り替えました。その結果、“きっちり”仕事が遅れましたね。当初は皆リモートなんて楽勝です、と言っていましたが、それぞれが作ったデータで組み合わせてみたら全く動かない。

また、その期間は新人教育も放ったらかしになってしまいました。リモートでも新人のサポートができると思っていましたが、そうではなかった。学びはやはり雑談の中から生まれるもの。後ろの席で誰かが怒られている、または褒められている。それだって情報なんです。

集団でいる会社というのは情報の宝庫です。皆で一緒に成長しながらものを作っていくなら、やはり同じ場所にいて、たくさんの情報を共有しながら、互いにさまざまなものを与え合う。それが重要なこと。そしてそれがサイバーコネクトツーの社風であり文化なのだと思います。

社員の方が新しいツールを使いたいと言った場合、それを受け入れる必要があれば導入を積極的に検討されているのでしょうか。

新しいツールやアプリの検討はほぼ毎日のように行っています。ゲーム業界は競争ですから、より良い環境を作るために常に開発環境の見直しを図っています。使用しているツールが時代と合っていないのなら大きく変えるべきですし、どのプロジェクトも常に情報を更新して比較検討しています。

当社が取り扱う高速ソフトウェアバージョン管理ツール「Helix Core」はそうして導入されたものですか。

まさにそうですね。それまでは前時代的なバージョン管理をやっていました。中途で入ってきた社員、大手企業から来た人間が見直しを提案してくれることも多く、それがきっかけとなり導入を決めることがありますね。他にも、積極的に他社さんと環境面での情報交換会なども行っています。

ゲーム業界の未来は明るい

ゲーム業界の未来について、最後にコメントをいただけますか。

松山 洋氏

ゲーム開発期間は約20年前に1年半程度だったものが、今では最低3年、長いと10年を超える場合もあります。また、ゲーム業界は大手メーカーによる大規模ビジネスとインディゲームと呼ばれる小規模開発の二極化が進んでいます。

資金面で厳しい世界ですが、それくらい世界中のお客様の目が肥えてきて、高いクオリティが求められているのです。クリエイターは世界のゲームプレイヤーの期待に応えることが努めだと思っていますし、売れ続けるゲームソフトを作り続けることが使命です。

ではそのゲーム業界で成功するにはどうすればいいか。まずは能力を磨いて大手メーカーで開発した実績を作って独立するのが一番とは思います。

また、テクノロジーも進化しています。「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」、「Unity」などのゲームエンジンが解決してくれることも増えて、ゲームを作る効率、環境はよくなっています。ツールの習熟がこれからのゲーム開発を大きく助けると思いますので、利用できるものは利用していく、という考えが必要と思います。

また、大規模ゲーム開発には、人を管理する立場の人が必要です。開発スタッフが円滑に力を発揮できるように立ち回れる人が必要ですね。ゲーム業界にはそのような人材も求められます。

右肩上がりの成長を続けるゲーム業界。厳しい世界ではありますが、これから一緒に面白いものを作ってくれる方をお待ちしています。

プロフィール

松山 洋 氏 写真

株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役

松山 洋 氏

博多にある元気なゲーム制作会社サイバーコネクトツーの代表。ゲーム開発・製作の総指揮を執る傍らで毎月、60冊の漫画誌を読んでいる大の漫画好き。アニメや映画、もちろんゲームも漫画も幅広く、こよなく愛している。非常に“濃く”“熱い”人間である。
http://www.cc2.co.jp/

最新作:
「戦場のフーガ2」
「NARUTO X BORUTO ナルティメットストームコネクションズ」
「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトルR」
「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」
「.hack//G.U. Last Recode」
「ドラゴンボールZ KAKAROT」

事業紹介