特集 01
2020.09発行
ログイン・新規会員登録して近年は、毎年のように日本の各地で水による災害が発生しており、この10 年間で水害被害が2.6 倍にもなっているというデータもあります1)。技術の進歩により日本の治水対策も進んでいるとは言え、自然の力にはまだまだ及ばないというのが現状です。一方で、外洋では他国との制海権争いも年々激しさを増しており、この広い海に囲まれた日本をどう守るべきかも大きな課題となっています。当社の海洋ビジネスでは、海、河川、ダムなど水中での調査の際に必要な計測機器から、海上防衛に関わる装置まで幅広くご紹介しております。我々の製品力と技術力が、水害による被害を最小限度に抑え、安心して外洋で活動や航海を行うために貢献できると確信しております。
1)国土交通省Webサイト(https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/bousai/saigai/kiroku/suigai/suigai_1-1-5.html)
部門紹介
日本を囲む海の底には私たちが知らない「謎」がまだまだ存在しています。その「謎」を明らかにしたいと思われる方のお手伝いをするのが、我々東陽テクニカ海洋計測部のミッションの一つです。当部では海洋調査の際に必要不可欠な計測機器を50 年以上にわたりご紹介しています。現在ではその数は60 種類以上にもなりました。
計測機器と言ってもさまざまですが、基本的に水中で使用する機器の多くは音響技術を利用したものが一般的です。しかし最近ではレーザー技術を使ってより鮮明なイメージ画像を描けるものが登場するなど、日進月歩で新たな技術が取り入れられてきています。また、これら計測機器で集めたイメージデータを画像処理することで、より見やすくより扱いやすくしてくれるソフトウェアもあり、海洋調査の重要なツールになっています。この分野にはAI 技術を利用した画像解析ソフトウェアなども登場しており今後のさらなる進歩が期待されています。少し話がそれますが、最近は水中での無線通信技術にも注目が集まっています。私たちが取り扱っている無線水中モデムのデータ転送性能は、1メートルの距離で1Gbpsの通信スピードを実現できるものがあります。地上の無線通信と比べて利用環境や性能にはまだ制限がありますが、今後さらに技術が進み、ROV(遠隔操縦機)を使って水中の映像をケーブルなしでリアルタイムに鮮明な画面で楽しめる時代が来るかもしれません。水中無線通信の分野では、「ALANコンソーシアム」という海中光技術を開発・研究する組織で日々技術共有がなされています。
本号特集記事の紹介をいたします。2019 年末、私たちの仲間が南極観測船「しらせ」に乗船し、第61 次南極地域観測隊のメンバーの一人として昭和基地へ向かい、当社が販売しているマルチビーム測深機を使って南極付近の海底調査を行いました。特集1は、その際にお世話になった観測隊長青木茂様にご執筆いただきました。南極地域での環境の変化から地球温暖化など私たちの身近な「謎」が明らかになるのかはとても気になるところです。特集2では、熊本県八代海の海底に点在する謎の丘の正体に迫りました。2020 年5月にNHKの番組「潜れ!さかなクン」でも放映され、我々がお客様に販売したパラメトリック地層探査機が紹介されました。私も、収録が行われた2020年2月にその調査船に同乗しましたが、重い計測機器を揺れる船の上で固定し、配線する作業は大変な労力でした。限られた時間のなかでの作業でしたが、お客様と当社のスタッフが団結して作業を進め、予定通り撮影を行うことができました。特集3は、海洋においてモニタリング技術とセンシング技術を使って「どんな魚が、いつ、どこを、どれくらいの量泳いでいるのか」を見える化するという話です。この技術が確立し汎用化できれば、漁師さんは夢のようなテクノロジーを手にすることになります。また、私たち消費者にとっても嬉しいことがあります。いつでも好きな魚を安く同じ価格で食べられるようになるかもしれません。また、地球規模で見れば乱獲を防ぐことにもなります。漁師さんの収入が安定すれば若い人にとっても人気の職業になるかもしれません。当社が販売しているUSV(無人船)や魚群探知機、ソーナーや各種センサー(ハイドロホン、音速度計、CTD(ConductivityTemperature Depth profiler)センサーなど)、画像解析ソフトウェアが少なからずこの取り組みのお役に立っていることは私たちの誇りです。私たちの仕事は、お客様から感謝の言葉をいただくまで続きます。これからも計測機器を通じてお客様とともに海底の「謎」に迫っていけたらと思っております。本号をお読みいただき、謎解きのワンシーンを楽しんでいただけたら幸いです。