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コラム
ノーベル賞で改めて注目された青色LEDとは?
本記事の内容は、発行日現在の情報です。
製品名や組織名など最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
はじめに
みなさんは昨年のクリスマスをどのように過ごされましたか?少し街を出歩く中で、華やかなLEDイルミネーションを目にされた方も多いのではないでしょうか。現在のように、LEDで多彩な表現が可能となった背景には、青色LEDの発明が大きく貢献しています。
LEDイルミネーション
Ⅰ.LEDの魅力とは?
LEDには、これまで使用されてきた白熱電球や蛍光灯に比べて、主に次のような利点があります。
1. 低消費電力
LEDは、半導体素子に電流を流し、電子と正孔が結合するエネルギーを光に変換します。そのため、LEDは白熱電球に比べて発熱による損失が少なく、その消費電力は約5分の1になります。
2. 長寿命
白熱電球では、フィラメントと呼ばれるタングステンなどでできた細い電線に電流を流し、高温に発熱して発光させるため、フィラメントが徐々に劣化し最後には切れてしまいます。LEDは半導体の固体を使用しているため断線する心配が有りません。一般的に、白熱電球の寿命が、約2,000~4,000時間、蛍光灯が約6,000~15,000時間に対して、LEDでは約40,000~50,000時間と非常に長寿命です。
3. 小型・軽量
LEDは半導体の固体素子が発光するため、他の光源よりもより小型化にすることが可能です。電子回路のプリント基板上に電子部品として実装することも可能であり、照明インテリアや携帯端末など高いデザイン性が求められる分野に強みを持ちます。上記3つの利点に加えて、LEDは高輝度、高速応答性、耐衝撃性、水銀などの有害物質を使用しないなどの特長もあります。
Ⅱ.LEDはなぜ光るのか?
LEDでは、p型半導体とn型半導体の間の発光現象を利用しています。p型半導体とn型半導体を接合させたpn接合面では、 p型半導体の正孔とn型半導体の電子が結合し、キャリアの無い(電気的に絶縁された)領域が生じます。このpn接合に対して、p型側に正電圧を印加(順方向バイアス)すると正孔と電子が接合面で再結合し、バンドギャップエネルギーに対応したある特定の波長の光を放ちます。
LEDの発光原理
下の表に、LEDの主な材料とその発光波長を示します。歴史的に、最初に赤外、赤色のLEDが開発され、その後、緑色、青色と短波長側の開発が行われてきました。
LEDの発光色と発光材料の関係
Ⅲ.白色光を可能とした青色LEDの発明
様々な波長のLED光が研究、開発されてきた中で、特に実現が困難であった色が青色です。この青色が実現できたことにより、光の3原色である赤・緑・青が揃いLEDで全ての色を表現できるようになりました。特に、照明用途へ応用できる白色の表現が可能になったことが最も大きな貢献と言えます。一度は「20世紀中の開発は難しい」とまで言われたこの青色LEDは、 1989年に名古屋大学の赤﨑勇氏、天野浩氏らのグループにより窒化ガリウムを用いて高輝度なものが開発されました。その後、1993年に当時日亜化学工業の研究員であった中村修二氏により量産化の技術が確立されました。
現在、主に次の3つの方法を用いて白色光は表現されています。
① 青色LED+黄色蛍光体
白色LEDの中で最も主流の方法です。 LEDから発光した青色光が黄色蛍光体を励起して黄色光を発生させます。黄色は、ちょうど赤色や緑色の中間の波長にあたり、両波長も含んだ状態で、蛍光体を一部通過してきた青色光と混ざることで白色が表現されます。この方法は、発光効率も良く、構造もシンプルにできるのですが、青色成分が強いために青みがかかった白色になってしまうところが難点です。
② 青色LED+緑色LED+赤色LED
光の3原色である青・緑・赤を混合して白色を表現する方法です。緑と赤が含まれることでより自然な白色を表現することができますが、3個のチップが必要になり、回路構造が複雑になります。
③ 近紫外または紫色LED+青色・赤色・緑色蛍光体
近紫外または紫色LEDを青・赤・緑の蛍光体に当て、それぞれの色を励起発光させて、白色を作り出す方法です。自然光に近い白色が表現できますが、発光効率が低いことが課題です。
疑似白色光の波長分布図
Ⅳ.身近で活躍する青色LED
現在、青色LEDは白色LEDとしての利用も含めると身の回りの様々なところで使用されています。
<信号機>
代表的な青色LEDの応用例としてLED信号機が有ります。光源を白熱電球からLEDに置き換えることにより視認性がよくなりました。また、LEDは白熱電球に比べて長寿命であり、ランプ切れに伴う交換作業の頻度も低下させることができるため、有用な代替品と言えます。
<照明>
省エネ、長寿命、高輝度の観点から、室内用、屋外用を問わず広く普及しつつあります。特に、室内用は、東日本大震災後の節電ブームの影響を受け普及が加速しています。問題点としては、白熱電球、蛍光灯に比べてLEDは価格が高いことや、 LEDは点光源のため、面光源の蛍光灯よりも影ができやすくなってしまうことがあります。なお、屋外用としては、東京スカイツリーやハウステンボスなど観光名所での利用が進んでいます。
<液晶ディスプレイのバックライト>
液晶ディスプレイのバックライトとして、これまでは蛍光灯が用いられてきましたが、低消費電力や光源小型化の利点からLEDが採用されることにより、液晶テレビの省エネ化と薄型化が進みました。また、同じように、LEDはスマートフォンを始めとする多岐の携帯端末の液晶画面のバックライト用としても普及しています。
青色LEDの応用例
(a)信号機 (b)東京スカイツリー (c)スマートフォン (d)自動車用ヘッドライト
上記以外にも、光源小型化の観点からデザインの可能性を広げた自動車のヘッドライトへの応用や、従来のDVDよりも記憶容量が増加したブルーレイディスク、発熱が少ないため植物に与える影響が少ないことや照射波長の選択性があることから好まれている植物工場用の照明など、青色LEDが利用されている分野は幅広く、今後はさらに通信、医療の分野などへの応用が広がっていくことが期待されます。
おわりに
現在、世界の電力消費の約4分の1が照明用として使用されていると言われています。 LEDは従来よりも低消費電力、長寿命な21世紀の人工光源として、この大規模なエネルギーの削減に貢献するだけでなく、今後も様々な分野で私たちの生活をより豊かで快適なものにしてくれることが期待されます。
筆者紹介
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株式会社東陽テクニカ 営業第1部
清水 栄一
2012年4月入社。物性測定の営業を担当。特に磁性、半導体分野が専門。
- 磁気測定
- ・磁気測定アプリケーション
- ・磁気測定方法
- ・ガウスメータ
- ・磁気測定全般
- 低温測定
- ・温度センサー
- ・温度コントローラ・モニタ
- ・その他(低温測定)
- ・極低温プローバー
- ・低温測定全般
- ・【森貴洋 博士、更田裕司 博士】(2)大規模集積量子コンピュータの実現に向けた シリコン集積デバイス工学の開拓
- ・【森貴洋 博士、更田裕司 博士】(1)大規模集積量子コンピュータの実現に向けた シリコン集積デバイス工学の開拓
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- ・世界をリードする材料開発 ~材料物性評価で技術革新への貢献を目指して~
- ・ノーベル賞で改めて注目された青色LEDとは?
- ・AGM・VSMの原理・特長と磁性材料の評価
- ・省電力・再生エネルギー技術への貢献を目指して― 半導体物性測定システム ―
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