技術資料

温度可変・4探針シート抵抗測定

はじめに

シート抵抗測定は、新材料の電気的特性評価、薄膜の製造プロセスのモニタリング、半導体および導電性薄膜の均一性の決定、電極材料の品質検証など、様々な用途や業界で使用されています。従来、シート抵抗測定は室温環境下で行われますが、多くの薄膜材料は、量子技術開発用のクライオスタットや太陽エネルギー用途の高温など、極端な温度環境で利用されています。
今回は、温度範囲が4K未満から675 Kまでの極低温プローブステーションを用いて、温度可変シート抵抗測定を紹介します。

図1

図1: 基板上の薄膜の4探針式シート抵抗測定の構成

4探針シート抵抗測定法は、同一直線上の4つの探針を用いて、外側の2つ探針間に電流を流し、内側の2つ探針間の電圧を測定します。

接点は小さく、接点の間隔が均一で、薄膜が絶縁基板上にあり、薄膜の厚さが接点間隔に比べて小さいという条件下では、シート抵抗 RSH は次の式で表されます。

ここでV は測定された電圧降下を表し、I は接点を流れる電流になります。より複雑な接点配置や境界条件については他の場所で説明されています。※1

測定条件

Lake Shore社製 CRX-4K型プローブステーションには、標準マルチコンタクトウェッジ(MCW)プローブアームがあります。このプローブアームは、マルチコンタクトウェッジプローブへ最大14個のDC接続に対応でき、すべてのプローブが測定対象サンプルに均等に接触できるように平坦化調整機能を備えています。シート抵抗測定では、マルチコンタクトプローブに半径25μmのBeCuニードルプローブ4本が1mm間隔で均等に配置されています。プローブ間隔の不確かさは極低温でも5μm未満です。4つの独立したプローブアームを使用することもできますが、マルチコンタクトウェッジプローブ特有の同一直線性は、測定誤差が小さくなるだけでなく、ウェハ―上の複数の位置で特性評価が必要な場合にプロービングが容易です。

図2

図2: Lake Shore社 CRX-4K極低温プローブステーションに取り付けられたマルチコンタクトウェッジ(MCW)プローブアーム。
サンプルは絶縁タイプのサンプルホルダー上にあります。

電気測定はLake Shore社製 M81-SSM ロックインアンプ搭載ソースメジャーユニットを用いて行いました。
BCS-10型 電流ソースモジュールを用いて1mAのDC電流を外側のプローブに印加し、VM-10型 電圧測定モジュールを用いて内側プロ ーブ間で生じた電圧降下を測定しました。BCS-10型の電流ソースは、外部コモンモード除去機能あるいはCMR(同相信号除去)機能を備えています。BCS-10型のこのノードは、測定セットアップにおけるグランド電流やその他の検出点から生じる目的以外の信号を低減するため、VM-10型のlow(またはB)端子に接続されています。※2 。Lake Shore社の MeasureLINK™ ソフトウェアを使用して、温度を連続的に測定しながら抵抗測定では電流反転プロトコルを実行して、熱起電力によるオフセットを除去しています。

図3

図3: 4探針シート抵抗測定用のM81-SSMの配線図。
BCS-10 バランス電流ソースがサンプルに直流電流を供給し、 VM-10 電圧測定モジュールが中央プローブ間の電位差を測定。 MeasureLINK™ ソフトは電流反転や平均化など抵抗測定を制御。

結果と考察

このウェハ―プローバー測定構成の性能を実証するために、 10μm厚の銀-白金焼成膜(Heraeus C4729)のシート抵抗率の温度依存性を測定します。
この測定で使用した膜は、アルミナ基板上に堆積され焼成されていますが、このように焼成された厚膜導体は、太陽電池の接点、 PCBボードアッセンブリ、パワーエレクトロニクス、さらにいくつかの特殊な集積回路などの様々な用途で使用されています。極低温特性は、量子コンピューティングの制御および読み出しのために、クライオスタット環境に移行するアナログ回路およびマイクロ波回路のボードアセンブリにとっても特に興味深いものです。このサンプルを図3のセットアップにて測定した室温の時のシートの抵抗率は4.35mΩ/□でした。これは銀-白金焼成膜(Heraeus C4729)の仕様の<5mΩ/□ と一致しています。
この焼成膜の温度によるシート抵抗率の低下は中程度の純度の銀と同様の特性を持っており、膜中の電子の格子散乱および欠陥散乱が比較的低いことを示しています。30K未満では電子散乱に対するフォノンの寄与は小さく、それに応じて温度の変化に対する抵抗率の低下は小さくなります。このサンプルでは4Kでのシート抵抗率は100μΩ/□に近づきました。

図4

図4: 銀-白金厚焼成膜(Heraeus C4729)の シート抵抗率の温度依存性

まとめ

今回の測定、CRX-4K型極低温プローブステーションとM81-SSM ロックインアンプ搭載ソースメジャーユニットを用いて、銀ベースの厚膜導体に対して高感度な温度可変・4探針式シート抵抗測定が可能であることを実証いたしました。同様の測定構成は半導体フィルムの特性評価や新素材の開発など様々なアプリケーションに応用できます。

参考文献

※1 Semiconductor Material and Device Characterization, Third Edition, D. K. Schroder, John Wiley & Sons, 2015.
※2 “Minimizing the Effect of Common-Mode Noise Interference in Low-Temperature Applications,” Lake Shore Cryotronics Application Note, J. R. Lindemuth and E. A. Codecido, 2022.

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