FAQ

【電気化学測定】バッテリーに関するFAQ

Q1 一次電池と二次電池の違いは何ですか?

A

一次電池と二次電池の明確な違いは充電の有無にあります。
一次電池は、充電することが出来ないため繰り返し使用することができません。製造・販売の時点が満充電で、使うたびに充電容量が減っていきます。
多様な電化製品のエネルギー源として使われており、メーカー側も電化製品の規格に併せてさまざまな一次電池を製造販売しています。
二次電池は、充電することが出来るため充電することで繰り返し使用できます。 現在、主流な二次電池は、リチウムイオン二次電池です。
特徴は、小型、軽量、高エネルギー密度な点にあり、ニッケル水素電池や、鉛蓄電池から置き換わってきました。
携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器の開発と共に、高容量で小型軽量なリチウムイオン電池の研究開発が行われてきました。
近年では、安全性や高エネルギー密度、高出力の観点で全固体電池のニーズが高まっています。

▼東陽テクニカルマガジン 【第28号】掲載
国立大学法人東京工業大学 教授 菅野 了次 氏インタビュー
全固体電池研究の最前線」の記事もご参照ください。

Q2 ハーフセルとはどのような電池を指しますか?

A

例えばLiイオン二次電池の場合、一般的に正極または負極に対してもう一方の極にLi箔を用いてセルを構成したものをハーフセル(半電池)と呼びます。
ハーフセルは主に単極(正極または負極の一方)の評価に利用されます。
ハーフセルに対して、正極および負極とも通常の二次電池材料(例:正極:LiCoO2、負極:グラファイト)で構成したものをフルセルと呼ます。

Q3 Cレートとは何ですか?

A

Cレートとは、充電及び放電のスピードのことです。定電流充放電測定の場合、電池の理論容量を1時間で完全充電(または放電)させる電流の大きさを1Cと定義しています。

【例】
電池の容量が2Ahだとしたら、1Cは2Aとなります。
2Cは1Cの倍の電流値に相当し、理論容量を30分で完全放電する電流値を意味します。
よって、電池の容量が2Ahだとしたら、2Cは4Aに相当します。

【例】
1/2Cは1Cの半分の電流値に相当するため、完全放電するまでの時間は2時間になります。

よって、電池の容量が2Ahだとしたら、1/2Cは1Aとなります。

全てのBio-Logic社電気化学測定システム(ポテンショスタット)及び充放電システムでは、電流値だけでなく、Cレート設定での充放電試験が可能です。 EC-Lab®およびBT-Lab®ソフト上であらかじめ電池容量を入力、もしくはBCD(Battery Capacity Determination)という測定テクニックを使用して、容量の実測値をもとにしたCレート設定も可能です。

Q4 SOC、SOHとは何ですか?

A

SOCは「State Of Charge」の略で、充電率または充電状態を表す指標です。
満充電状態を100%、完全放電状態を0%と定義しています。たとえば、満充電容量が2000mAhの電池で、満充電から500mAh放電を行った時、その電池のSOCは(2000-500)/2000×100=75(%)となります。

充放電中の瞬間のインピーダンスデータを決定・解析する事は通常容易ではないですが、時間情報が測定データに記録されるBio-Logic社製品と、Z-3D 3Dインピーダンス解析ソフトウェアを用いると各時間・SOCでのインピーダンスデータを算出する事が可能です。

SOHは「State of Health」の略で、健全度や劣化状態を表す指標です。 初期の満充電容量(Ah)を100%とした際の、劣化時の満充電容量(Ah)の割合です。
つまり、劣化時の電池がSOH 50%となった場合には、満充電の状態にしても初期の半分の容量しか持たない電池になっていることを表します。 似たような略称ですが、全く異なるものですのでご注意ください。

Q5 クーロン効率(充放電効率)とは何ですか?

A

クーロン効率は、充電時に充電された充電容量に対する放電時の放電容量の比を百分率で表した値です。
測定手法は、電池のSOCが0%になった状態から一定のレートで充電を行いSOC100%(満充電)にし、基本的には充電レートと同レートで放電を行った結果からクーロン効率を算出します。

例えばリチウムイオン二次電池の場合、
クーロン効率が高い電池ほど、充電で入った容量を損失なく放電に使用できるため、寿命が長い良い電池です。
クーロン効率が小さい場合、充電時に副反応が生じていたり、何らかの要因でLiイオンが放電時に使われてなかったこと等が考えられます。
またリチウムイオン二次電池は初回充電時にSEI皮膜を形成するために、充電容量が大きくなり見かけ上のクーロン効率は低下します。

この時の容量差を不可逆容量とも言います。

Q6 電池の定電流充放電試験とはどのような試験方法ですか?CC充放電、CC-CV充放電とは何ですか?

A

電池の定電流充放電試験とは、一定の電流値で充電、放電を繰り返してサイクル特性などを評価する最も基本的な電池の試験方法です。
定電流のため、この方法をCC(Constant Current)充放電と呼びます。この方法により、電池の充電容量、放電容量を測定することができます。
その他、CC-CV(Constant Current-Constant Voltage)充放電という方法が良く用いられます。CC-CV方式は始めに定電流CCで充放電を行い、電池電圧が規定の値(カットオフ電圧)に到達したら定電圧で充放電を行う方法です。 CV充放電では、電流値(の絶対値)が徐々に減衰していきますが、この値が一定以下もしくは規定した一定時間で測定を停止するのが一般的です。途中で定電圧に切り替えるのは過充電/過放電になって電池に負荷をかけないようにするためです。
Bio-Logic社の測定システムはCC-CV充放電でのカットオフ条件(電位、時間ほか)を簡単に設定して充放電試験を行えます。

Q7 充放電曲線とは何ですか?

A

横軸が容量、縦軸が電圧としたときに描ける曲線のことです。
充放電試験で得られる生データは時間と電圧です。得られた時間(h)に測定電流値(mA/gまたはmA)をかけて容量の単位(mAh/g または mAh)とし表示させます。
充放電曲線は1サイクルにつき充電曲線と放電曲線の2つのプロットが得られます。
電位が平坦になる電位のことをプラトー電位と呼びます。

Q8 DCIRとは何ですか?

A

電池におけるDCIR(Direct Current Internal Resistence) は直流内部抵抗のことを指します。
リチウムイオン二次電池では固体内拡散、電荷移動など、電極上の各反応を含んでいます。

Bio-Logic社 充放電装置では下記の式で直流内部抵抗Rdcを求めます。

Rdc = ΔE/ΔI = |E2-E1|/|I2-I1|

電池の内部抵抗の測定方法としてACIR法もあります。
これは交流で内部抵抗の測定を行う、いわゆるEIS法になります。

Q9 電池評価における交流インピーダンス法とはどのような測定手法の事ですか?

A

電池評価における交流インピーダンス法は非破壊で正極・負極・電解液の各抵抗成分を測定/解析する手法として用いられます。
インピーダンスは交流信号に対する電気の流れにくさを表し、測定対象により周波数毎の流れにくさ(インピーダンス)が変わります。
電池の正極および負極は、主に電気二重層としての容量成分、電荷移動抵抗の抵抗成分で表され、電解液は直列の抵抗成分として表されます。
直流(低周波)では、コンデンサー(容量成分)に対して充電が完了すると反応が進まなくなるため、電流を流すことができません(インピーダンスが無限大)。
交流では電流の向きが変わるためコンデンサーに対し通電することが可能となり、高周波になるほどインピーダンスが低くなります。
正極/負極の周波数応答の違いを利用して各抵抗成分を分離して解析できるため、電池研究では広く利用されています。
インピーダンス測定原理の詳細は「電気化学インピーダンス測定の原理」をご覧ください。

東陽テクニカでは電池評価で交流インピーダンス法を行える
Bio-Logic製 FRA内蔵ポテンショ/ガルバノスタットを取り扱っています。
製品詳細は下記をご覧ください。
ポテンショ/ガルバノスタット製品一覧

Q10 dQ/dV曲線(プロット)とは何ですか?

A

横軸が電圧、縦軸が容量の電圧微分で表すグラフで、充放電曲線から作成します。
充放電曲線において電位の平坦な部分は重要な意味を持ちます。
電位平坦部が複数ある場合には反応が複数の段階に分かれて進行しているか、別な副反応が起こっているということが予測されます。
このような電位平坦部について詳細な議論をする際にはdQ/dVプロットを使用するのが便利です。充放電曲線で電位平坦部がピークとして検出されるので、反応が起こっている電位が明確になります。
このdQ/dV曲線はサイクリックボルタンメトリーを低速で行った際のサイクリックボルタモグラムと類似します。

Q11 ラゴーンプロットとは何ですか?

A

ラゴーンプロットとは、二次電池のエネルギー密度[横軸]と出力密度[縦軸]の関係を示したグラフのことです。
「出力密度」(W/kg)は、単位質量(kg)あたりどれだけのパワー(W)を引き出せるかという指標です。
一方、「エネルギー密度」(Wh/kg)は、単位質量(kg)あたりどれだけエネルギー(Wh)を蓄えられるかという指標です。
ラゴーンプロットの右上の方にいくと、単位重量あたりの出力、容量がともに大きいことを示します。

Bio-Logic社電気化学測定器のEC-Labソフトウェアでは、ラゴーンプロット用の測定テクニックと解析機能を備えています。

Q12 GITT、PITTはどのような測定方法でしょうか?

A

GITTは、Galvanostatic Intermittent Titration Technique の略称で定電流間欠滴定法のことです。
定電流印加と緩和(REST)を繰り返して充電(放電)を行い、主に各電位における拡散係数を求めるのに使用されます。

PITTは、定電圧を用いた間欠滴定法でこちらも拡散係数を求めるのに使用されます。
どちらの手法もBio-Logic社製ポテンショ/ガルバノスタット充放電装置にて行うことが可能です。

Q13 高精度クーロメトリー(HPC:High Precision Coulometry)とは何ですか?

A

高精度クーロメトリー(HPC:High Precision Coulometry)は、二次電池のクーロン効率を高精度に測定することにより電池の副反応の定量評価や劣化解析を行う手法で、2010 年にカナダ・ Dalhousie大学のJeff Dahn 教授により初めて提案されました。
*詳細論文:J. Electrochem. Soc., 160, A521-A527(2013).
充放電測定の初期段階でクーロン効率のわずかな差異を見分けることが出来るため、二次電池の性能評価・寿命予測を短時間で行うことが可能です。

東陽テクニカでは高精度クーロメトリーが行えるNovonix社製精密充放電評価システムを取り扱っております。

▼製品詳細は下記をご覧ください。
UHPCシリーズ 精密充放電評価システム

Q14 充放電曲線におけるスリッページ(Slippage)とは何を意味しますか?

A

スリッページ(slippage)とは充放電曲線における各サイクルの充放電曲線の終着点間の差を言います。
特に充電(charge)容量の差をcharge slippageといい、放電(discharge)容量の差をdischarge slippageと言います。
charge slippageは副反応に起因(電解液の酸化など)していると考えられ、discharge slippageは容量減少(Li失活など)に起因していると考えられます。
このようにSlippageは電池性能評価/解析に有用な指標として活用できます。
Slippageの評価には1サイクル毎の僅かな差を測定する必要があるため、Novonix社製精密充放電評価システムのように非常に高い測定精度が要求されます。

Q15 電池の寿命予測を短時間で行うにはどのような方法があるのでしょうか?

A

カナダのJeff Dahn教授の論文によると、Zero Fade Cellモデルに当てはまるLiイオン二次電池ではHPC測定(High Precision Coulometry)を数サイクル~十数サイクル充放電サイクル試験を行うことで、何百サイクルで寿命(容量の80%)となるか推定できるとされています。
容量が急降下するセル(Zero Fade Cell)にのみ適用できる理由は、副反応による生成物量が一定量に達した時に電池寿命となる仮定を前提とするためです。
このモデルが成立つとき、下記の簡素な式が成立ちます。

(1-CE)× 寿命となるサイクル数 =k  ※ kは定数

HPC測定はNovonix社製 精密充放電評価システムで行うことが可能です。

電池寿命図

参考論文:Journal of The Electrochemical Society, 160 (9) A1451-A1456 (2013)"

Q16 充放電後のインピーダンス測定で、データがきれいに取れません。対処方法はありますか?

A

充放電後に十分なRestもしくはOCVが取れているか確認ください。
測定粒に系の応答が変化することは、インピーダンス測定において好ましくない状態です。
一般的にインピーダンス測定において、正しい応答(出力信号)を得るためには、線形成、
不変性、因果性を保つ必要があります。
※線形成、不変性、因果性については以下のリンクに説明があります。

インピーダンス測定の品質評価

充放電後は不変性が担保されていないので、系が安定するまで十分なRestをとった後、インピーダンス測定することを推奨します。

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