技術資料

粉末の加圧時と非加圧時における導伝率とかさ密度の違い

I はじめに

中国では中華人民共和国国家標準(日本でいうところのJISに相当)で電池材料の物性評価が行われています。 本文章では、LFPと黒鉛の粉体に関して、当社取扱のIEST社製品PRCD3100で測定可能なかさ密度測定と抵抗率測定についての測定事例を紹介します。ここでは四探針法での抵抗率測定の例を示しますが、FRA内蔵ポテンショ/ガルバノスタットなどと組み合わせたインピーダンス試験なども有効な測定です。

参照したGB/T規格は以下の通りです。
・GB/T 24533-2019
・GB/T 30835-2014

II 粉末圧縮密度と導電率試験

■II.1 試験装置

PRCD3100(IEST)を使用して荷重の印加、厚み測定、抵抗率測定を行います。

図1.PRCDの外観、加圧部

図1. (a) PRCD3100の外観、(b) PRCD3100の加圧部

■II.2 測定条件

荷重条件について、10MPaから200MPaの荷重と3MPaへの除荷を連続的に行いました。(10MPa→3MPa→20MPa→3MPa→30MPa→... →190MPa→3MPa→200MPa→3MPa)いずれの荷重も10秒間荷重を保持し、抵抗測定については四探針法を採用しました。

■II.3 サンプル重量

黒鉛、LFPともに1.0000±0.0010gで測定しました。

■II.4 試験結果(LFP)

LFPについて、II.2の通りの荷重印加を行い抵抗率を測定しました。 図2-(a)に荷重とかさ密度の
測定結果で、各荷重時と除荷時のかさ密度を抜粋したものが図2-(b)になります。 同様に図2-(c)が
荷重と抵抗率の測定結果の結果で、各荷重時と除荷時の抵抗率を抜粋したものが図2-(d)になります。 荷重の前と200MPa荷重の際を比較すると、かさ密度が約3%程度増加し、導電率は約30%程度増加したことが分かります。

図2.LFP粉体の荷重時の火さ密度と導電率測定結果

図2. LFP粉体の荷重時の火さ密度と導電率測定結果
(a) 印加した荷重とかさ密度の測定結果(b)荷重時と除荷時のかさ密度の抜粋
(c) 印加した荷重と導電率の測定結果 (d) 荷重時と除荷時の導電率の抜粋

■II.5試験結果(黒鉛)

黒鉛について、II.2の通りの荷重印加を行い抵抗率を測定しました。LFPの時と同様に 図3-(a)に
荷重とかさ密度の測定結果で、各荷重時と除荷時のかさ密度を抜粋したものが図3-(b)になります。 同様に図3-(c)が荷重と抵抗率の測定結果の結果で、各荷重時と除荷時の抵抗率を抜粋したものが
図3-(d)になります。 荷重の前と200MPa荷重の際を比較すると、かさ密度が約10%程度増加し、導電率は約80%程度増加したことが分かります。

図3. 黒鉛粉体の荷重時のかさ密度と導電率測定結果

図3. 黒鉛の粉体の荷重時のかさ密度と導電率の測定結果
(a) 印加した荷重とかさ密度の測定結果(b)荷重時と除荷時のかさ密度の抜粋
(c) 印加した荷重と導電率の測定結果 (d) 荷重時と除荷時の導電率の抜粋

III 結論

LFPでは200MPa加圧することでかさ密度は約3%程度増加し、導電率は約30%まで増加しました。黒鉛材料の場合、かさ密度は約10%増加し導電率は80%ほど増加しました。以上の結果から、粉体のかさ密度や導電率を試験する場合、荷重条件が測定結果に大きな影響を及ぼすことに注意が必要であると分かります。

IV 参考文献

[1] GB/T 30835-2014 《リチウムイオン電池用炭素複合リチウム鉄リン酸正極材料》

[2] GB/T 24533-2019 《リチウムイオン電池用グラファイト負極材料》


本内容はInitial energy science technology Ltd.の許諾を得て下記資料を一部改変し翻訳したものです。

引用元: Differences in Powder Conductivity and Powder Compaction Density in Pressurized and Unloading Modes

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