技術資料

大型円筒形バッテリーと小型円筒形バッテリーの充放電膨張率の比較

I 概要

円筒型セルは、その構造的安定性からシリコン系材料など体積膨張率が高い材料の採用も進んでおり、さらなるエネルギー密度増大への取り組みとしてセルの大型化なども盛んに行われています。一方で円筒セルが大型化した際や膨張の顕著な材料を用いた際に、円筒セルのメリットである機械的安定性が維持されるのかという問いに対して明確な測定はほとんど行われておりません。本文章では21700型と4695型の円筒セル(いずれも正極三元系、負極材料については非開示)で充放電を行った際の膨張について、円筒セル膨張測定システムCCS1300を用いて測定しました。測定から、ラミネートセルに対して膨張は明らかに小さいことが分かりましたが、一方でセルのサイズや材料によっては膨張が大きいことが示唆されました。これは円筒セルにおいて、より高いエネルギー密度と安全性を実現するには膨張測定が必要であることを示唆します。

II 試験内容

■II.1 試験装置

本試験は、CCS1300円筒セル膨張測定システムを用いて測定しました(図1)。CCS1300では、電池の画像を連続的に撮影し画像処理を行うことで体積変化を測定することが可能です(図2)。

図1.試験装置CCS1300Operando円筒セル膨張測定システム

図2.試験イメージ

■II.2 試験値条件

・セル情報:
本試験では4695セルと21700セルについて、円筒セル充放電試験時の膨張を測定しました(表1)。

表1.セル情報(負極情報は非開示)

・充放電条件:
温度条件は25℃で充放電条件は表2の通りです。

表2.充放電条件

III 結果と分析

■III.1 温度条件の検討

CCS-1300内のセル温度条件を測定したところ、いずれも25℃±1℃程度で安定していました(図3)。

図3.温度試験曲線

■III.2 充放電試験結果

21700セルの充放電に伴う結果は図4の通りで、CC充電中は充電末端を除き膨張し、CC充電末端からCV充電初期にかけてM字様の収縮と膨張がみられ、CV充電中とRestにおいては収縮し、CC放電を開始するとW字様の膨張と収縮が見られました。3.6V以下では、急峻な膨張を起こし、Restで厚みが収縮しました。初期体積に対する体積の最大変化率は0.01%程度でした。

図4. 21700バッテリー充放電時の体積膨張率と電圧推移

4695セルの充放電に伴う結果は図5の通りで、CC充電中は4V以上でいくつかの変曲点が見られるが一貫して厚みは増加し、CV充電においても膨張し、CC充電との切り替わりのタイミングで変曲点が見受けられました。CC放電時は3V付近にかけて厚みが収縮し、3V付近から2.5Vでは厚みが増大しました。Restは充電後・放電後にかかわらず厚みが収縮しいていることが見受けられました。初期体積に対する体積の最大変化率は0.2%ほどでした。

図5. 4695バッテリー充放電時の体積膨張率と電圧推移

IV 考察

■IV.1 温度条件

温度は25℃±1℃に収まっており、安定的な測定が行えていたことが分かります。

■IV.2 ラミネートセルとの比較

典型的なハイニッケル系のNCM/Graphiteラミネートセルの膨張収縮挙動は、CC充電時に膨張し、CV充電時は一時的に厚みが低下しその後また膨張するM字様に厚み変化し、Rest時は外圧により厚みが漸減し、CC放電時は収縮することが知られています。また、NCMの体積膨張率が1~2%程度、Graphiteの体積膨張率が10%程度と知られています。上記と21700セルを比較すると、①放電時にセルの膨張が起こること②材料の体積膨張率に対してセルの膨張が極めて小さいことが示唆されます。これはセル缶の応力によるものである可能性が挙げられます。
一方でシリコン系負極を含むラミネートセルではシリコン含有率次第ですが充電時に高い膨張率を示し、CV充電時にM字様の厚み変化は見られず継続的に膨張することが多いです。また、シリコンは300%近い体積膨張率を示しますが、負極全体に対する重量は5%程度であることが多くせいぜい25%程度の体積変化しかしないことが知られています。このシリコン系負極のラミネートセルと今回の4695セルを比較すると①充放電に伴うセル膨張は同一の傾向を示す②体積膨張率は一般的なラミネートセルと比べると小さいが、21700セルに比べると20倍程度大きいことが分かります。

円筒型セル(21700セル)とラミネートセルの体積変化の差は以下の可能性が考えられます。

・電池容量と構造設計:
ラミネートセル電池の柔軟なアルミ・プラスチックフィルム製ケースとは対照的に、円筒形電池の硬い金属ケースは、内部膨張によって発生する圧力の分散を防ぐことができます。金属ケースと内部巻芯の接触が不均一であるため、小さな空隙が生じ、図6に示すように圧力分布が不均一になります。また、4695円筒形電池は、21700電池と比較して容量が大きく電池の内部構造がより複雑になります。容量が増加するということは巻き芯の層が多いことを意味し内部圧力がより大きくなる可能性があります。内部圧力が大きいと体積変化がより不均一になり、その結果電池の金属ケースがより顕著に変形してしまいます。さらに、内部構造が複雑化することで、体積変化に対応するための弾性・緩衝能力が低下し、体積膨張率が増加する可能性があります。

・材料特性:
円筒形電池は電極材料や電解質の配合が型名により異なる場合があります。充放電時における電極材料や電解液の膨張・収縮特性が異なるため、電池全体の体積変化にばらつきが生じます。さらに、電池の金属ケースの厚さと強度は、変形の程度を決定する上で極めて重要な役割を果たします。電池の金属ケースが厚く強度が高いほど、より大きな圧力に耐えることができ、変形が少なくなります。

・製造工程:
電池の製造工程も体積安定性に影響を与えます。例えば電極コーティングの均一性、巻線または積層時の気密性、電池ケースの密閉性などの要因はすべて、電池の体積変化に影響を与えます。特に、セルの組立気密性(巻芯とケースの隙間)は重要な部分となります。この隙間が大きいと、電池はより大きなコアの変形に対応することができ、その結果ケーシングにかかる力が小さくなり、電池の変形も小さくなります。

・試験条件:
チャンネル間の温度差は制御可能な範囲内であるが、充放電速度、放電深度、充放電回数など他の試験条件も電池の体積変化に影響を与える可能性があることに注意すべきです。

図6. 円筒形電池の体積変化時の内部構造模式図

V まとめ

本試験では、21700セルと4695セルの膨張を測定することができました。一方でその原因については複雑な現象であり、解析と最適化のために多くの要因を考慮する必要があると分かります。

VI 参考文献

Wenxuan Jiang, Haoran Li, Sicong Wang, Sa Wang and Wei Wang,Dynamic Volumography of Cylindrical Li-Ion Battery Cells by Watching Its Breath During Cycling,CCS Chemistry. 2023; 5:1308–1317


本内容はInitial energy science technology Ltd.の許諾を得て下記資料を一部改変し翻訳したものです。

引用元: Amazing Discovery! Large Cylindrical Battery Expand Ten Times More Than Small Cylindrical Battery

記事一覧に戻る

電気化学測定システム、充放電測定システムに関するカタログ

電気化学測定システム、
充放電測定システムに関する
カタログはこちら

カタログダウンロード

ダウンロードには会員登録(無料)が必要です。