FAQ

燃料電池

燃料電池評価

ID.Q8

Q. 同じセル、同じ運転条件で測定してもデータが再現できないのは?

A.


計測器の故障でない場合、考えられる大きな原因は5つあります。

1.セルの劣化
長期間運転したセルでは特性が違ってきます。
その変化を見極めるのがFC評価装置の1つの役割なので、これは全く問題になりません。

2.セルのセッティング
セルのセッティングに変更がないのに測定結果が変わる場合、計測機器の故障も疑わしいですが、念のためまずセルと測定ケーブルの固定状況(ネジの緩み等)を確認してみるとよいです。セルの付け外しがあった場合は特に確認が必要です。測定の設定以前の部分になるため、オペレータにとっては見落としがちな原因ですが、トラブルシュートの第一歩になります。
セルに測定ケーブルを取付けた際のネジ止めが甘いと接触不良が生じ、測定系側の抵抗値が大きくなったり、不安定になって測定結果に影響します。接触不良で抵抗値が大きくなった場合は前述の電圧降下が大きくなって測定も困難になります。最初から接続で接触不良があり、何かが振れた際に接触状態に変化が起きて測定結果が変わったという事例は過去数多くあります。

3.温度管理の不調
実験毎に出力が上下する場合、加湿が不安定な場合があります。またデータに定期的にピークが生じる場合は結露によるフラッディングが考えられ、セルや配管の温度管理が十分にできていないか、配管の構造に問題がある可能性があります。装置側/セル側のどちらに問題があるかで考えると、装置側の温度管理ができている場合はセル側に問題があるケースが多いです。

4.排気ラインの圧損
複数の装置を所有している際にその排気ラインを合流していて、その合流排気管の太さが十分ない場合、他の装置と同時に運転をしたりすると、装置の排気側に圧損がかかり、上流側の装置全体(セル)に想定外の圧力が掛かり、それが原因で発電状態に影響が出る場合があります。背圧の数字が大気圧時に0 kPaGまで下がらない場合などはこの状態が考えられ、他の装置の発電条件の変更や運転状況に応じて変化する場合は要注意です。
寒冷地で排気ラインを屋外出しにしている場合などは、ガスに残っていた水分が排気管の出口で凍結し、排気管の出口を狭めたり塞いだりする場合もあります。

5.装置が異なる
異なる装置で同じ条件で測定したデータを比べた場合、OCVが10mV以上違うと気になりますが、数mVだと装置の”機差”という可能性があります。同じ仕様で装置を製作したとしても、個々の機能部品にも精度誤差があり、例えばMFCでは精度±1%FSの範囲内でも設定値に対して少し下の流量で安定したり、少し上で安定したりします。このような誤差の積み上げが機差として存在し、全く同じ結果を得るのは難しいです。
違う装置で測定されたデータを比較する場合は、機差があることを踏まえた上で比較をすることが重要です。同じ装置で測定したデータでも上記で紹介した違いなども生じるので、ハード的なセッティングから慎重に行うことを推奨します。
また100W級の装置で測定したセルを、1kW級の装置で100W級と同じ設定で測定した場合、同じ測定結果が得られる可能性は低くなります。
例えば電子負荷装置は、100W級と1kW級の装置で異なるレンジで測定すれば精度が違うはずです。レンジ変更などで同じレンジだったとしても、異なる測定ケーブルを使えば電圧降下などの影響が変わってきます。
特に影響が大きいのはガス供給装置で、同じ設定にしたつもりでもMFCのレンジ違いによる精度誤差や、配管の太さによる挙動の違いなどが必ず生じます。大レンジの装置で小レンジの測定を行うとその粗さが影響し、全く同じ測定結果を得ることはまず無理です。ガス供給装置に関しては”大は小を兼ねない”ということです。
このことから、10セルスタック評価用の装置で単セルの評価を行うことは精度の高い評価をするには相応しくないと言えます。またその結果を単セル用の装置で測定した結果と比べるのも意味がありません。自ら迷宮に入り込む行為となります。
条件が甘くなる装置での評価結果は、あくまで同じセルでの相対比較であれば参考になると言えます。

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