センサの取付方法が測定に与える影響

お役立ち情報

 

センサの取り付けは、全体的な振動と FFT 結果の両方に大きな影響を与える可能性があります。PCB Piezotronics社のDavid A. Corelli氏は、自身の論文” How Sensor Mounting Affects Measurements”の中で、センサの取付方法とその影響について示しています。この論文では、ねじ止め、曲面用マグネット、平面用マグネットなどの一般的な取付方法の周波数特性を実験室条件下で測定し、結果を示しています。
ここで重要なのは、違いを正しく認識することであり、その“違い”自体に過度に注目しすぎないことです。この論文中でも述べられている通り、センサ、取付方法、取付場所、データ収集システムが一貫していれば、測定値は有効に機能します。

センサの取付方法と周波数特性

では、センサの取付方法における周波数特性の違いについてみてみましょう。
David A. Corelli氏の論文では、PCB Piezotronics社製のセンサ「622B01」と「603C01」を使用しています。「622B01」は高精度タイプで、「603C01」は汎用タイプのセンサです。以下の表は各センサの仕様を示しています。ほとんどの工業用加速度センサには、センサ共振時の増幅効果を抑えるためにローパスフィルターが内蔵されており、それにより、高周波応答(センサの周波数範囲を超える領域も含め)も変化します。

センサ仕様

表1:各センサの仕様

センサの取付方法は、ねじ止め、曲面マグネット、平面マグネット、プローブ押し当ての4種類で検証しています。検証方法は、振動センサの校正設備を使用しています。

校正設備

校正設備

プローブ押し当て

プローブ押し当て

各測定条件での結果は以下のとおりです。

各測定条件での結果

表2:各測定条件での結果

この結果から、理想的な取付方法であるねじ止めよりも、マグネット取付の場合は周波数範囲が極端に下がることがわかります。例えば、「603C01」の場合、ねじ止めだと12.5k Hz ですが、曲面用マグネットを使用した場合では、3554 Hz に低下しています。これは、センサを被測定物に取り付けると、そこで振動系が形成され、その系としての固有振動数が生じるためです。これを接触共振と言いますが、接触共振は、接触状態や固定方法に依存し、基本的には固定方法が強固であればあるほど、接触共振は上がります。曲面マグネットでは、接触している面積が平面用マグネットに比べて小さく、その磁力が弱くなるため、結果的に接触共振が下がる方向になります。

振動計測で重要なこと

振動計測を用いて状態監視を行う上で、センサの周波数特性が高周波までフラットであることが望ましいですが、それ以上に重要なのは、計測が常に一貫した条件で行われることです。その理由は、周波数特性が一貫していれば、相対評価として正常と異常を判別することができるためです。ただし、接触共振が下がると、共振周波数よりも高周波側は減衰が大きくなり、感度が鈍くなるため注意が必要です。高周波の信号を捉えにくくなります。PCB社のStephen Arlington氏は、共著論文“Considerations for Accelerometer Mounting on Motors”の中で、各取付方法におけるセンサの周波数特性を計測していますが、各取付方法において、共振周波数より高周波側で減衰していることが示されています。SN比(Signal to Noise Ratio)がしっかりと取れるかがカギとなります。

このように、振動センサの周波数特性は、取付方法に大きく依存するため、目的に応じて最適な方法を選択する必要があります。

出展

David A. Corelli, “How Sensor Mounting Affects Measurements
James C Robinson, Stephen Arlington, “Considerations for Accelerometer Mounting on Motors

関連リンク