ワイヤレス超音波厚さ計測システムのご紹介
製品情報
ボルトは古くからある機械要素であり、現代においても多くの分野で多用されています。しかし、ボルト締結にまつわる不具合は、未だに後を絶ちません。ボルトの破断、緩み、摩耗などが主なトラブルとして挙げられますが、これらはボルト締結に関する理解が不足していることも一因ではないかと考えられます。
ボルト締結について
ボルト締結の管理は、一般的には締結時の締結トルクを計測して行いますが、ボルト締結にとって重要なのはトルクではありません。締結力です。トルクはあくまでも、締結力を推定するための代替でしかないのです。トルク管理が難しい理由は、トルクは摩擦の影響を受けるためです。ボルト締結における摩擦の主な発生場所は、ボルト座面、および、ねじ面ですが、これらの摩擦は、ボルト締結時に加えるトルクのエネルギーの実に90%程度を消費します。ボルト締結に必要な締結力は、加えたエネルギーのたった10%からしか発生しないと言われています。ボルト締結は、非常に管理が難しい部品と言えます。
では、ボルト締結にまつわる不具合を少なくしていくにはどうすれば良いのでしょうか。一つは、摩擦のバラツキを抑えることです。表面処理や形状、潤滑剤を工夫して、摩擦のバラツキを抑えます。そうすることで、トルク管理でも、誤差の少ない締結力の管理が可能です。もう一つは、ボルトに何かしらの機能を付加して、直接、ボルトの締結力を管理することです。後者については、ひずみゲージを用いる方法と、超音波センサを用いる方法があります。ロードセルを用いる方法もありますが、ロードセルの場合、ボルトヘッド下に挟み込む必要があるため、実験用途以外では使いにくいです。
ワイヤレス超音波厚さ計測システムについて
この度、Broadsens社から、画期的なワイヤレス超音波厚さ計測システムが発売されました。この製品の主なアプリケーションの一つに、ボルトの長さ計測があります。こちらは、従来からある超音波式とは違い、ボルトが実際に市場で使用されている状態で、ボルトの長さをモニターすることを目的に開発されました。ボルトの長さを計測することで、ボルトにかかっている軸力を知ることができます。
センサはバッテリー駆動で、標準使用においてバッテリーは10年以上持ちます。同社の振動センサと同じく、ワイヤレス通信はBLEが使用され、データはゲートウェイに転送されます。ワイヤレス通信の通信距離は100mとなっています。長期のボルト軸力のモニタリングに加え、10Hzサンプリングでの動的計測も可能です。また、センサには内蔵メモリが搭載されており、最大9,200点のデータを保存可能です。ゲートウェイと通信できない環境でも、データを見流すことがありません。測定レンジは5cm~500cm(最大1,000cm)で、洋上風力や鉄道、建設機械などの大型機械などで使用されるボルトの軸力の長期モニターに最適です。
システム構成図
これまでにない画期的なワイヤレス超音波厚さ計測システムは、機械構造物の締結問題に大きな変化をもたらすでしょう。