状態監視を効率的に行うための2つの主要パラメータとは?
お役立ち情報
状態監視を行う上で、管理するパラメータをどのように設定するかは重要な問題です。全体的な効率を維持しながら、同時に、通常使用する機器の仕様や技術スタッフに求められるスキルレベルを抑えることも必要です。
かつては、振動問題については、「振動速度」が指標として用いられてきました。このパラメータは、計算が簡単で、アンバランスやミスアライメントなどの限られた故障を早期に発見することに役立っていました。しかし、設備の故障の多くの部分を占めるベアリングの故障については、信頼できる指標ではありませんでした。そこで、ベアリングの故障について、新たに有効な指標として「加速度ピーク値」が用いられるようになりました。
今回は、PCB社から発行されているWhite Paper "Creating an Effective Vibration Monitoring Program for Reliability Departments With Limited Resources" で紹介されているこれらの2つの管理値の事例をご紹介します。このWhite Paperの中では、設備の故障としてよく発生する「潤滑不良」「内輪故障」「内輪傷」「アンバランス」を例に挙げています。
対象周波数は、以下となります。
■ 速度RMS値 :0.3 *設備の回転周波数 ~ 1,000 Hz
■ 加速度ピーク値 :500 ~ 20,000 Hz
事例のご紹介
潤滑不良
潤滑剤は接触面の間に使用され、部品の連続的な動きを助け、接触面の間の金属同士の摩擦を回避または軽減します。また、補助的な機能として、冷却、腐食防止といった機能もあり、非常に重要な役割を担っています。そのため、適切に潤滑が行われていないと、設備の故障につながります。潤滑不良を管理するパラメータとして加速度ピーク値が用いられます。Fig.1 は撹拌機に使われている軸受に潤滑不良が発生した際の加速度ピーク値の変化を表しています。2003年3月20日まで加速度ピーク値が上昇を続け、この日に潤滑を行い、加速度ピーク値が正常な値に落ちていることがわかります。

Fig.1
軸受内輪故障
次は圧延機のピニオンスタンド減速機に使われるベアリングの内輪故障の事例です。Fig.2 は800日間の加速度ピーク値の変化を表しています。500日を超えたあたりからレベルが上昇していることがわかります。Fig.3 は故障した軸受の写真です。

Fig.2

Fig.3
軸受内輪傷
次は製紙機械用のサクションプレスロールに使われている軸受に傷があった事例です。Fig.4 はある時点の非常に短時間(8秒間)の加速度ピーク値の変化を表しています。この事例では、異常の閾値を 2.2g と設定していましたが、それをはるかに上回る 14g 程度の加速度ピーク値が発生していることがわかります。Fig.5 は傷が発生した軸受の写真です。

Fig.4

Fig.5
アンバランス
次は高速ファンのアンバランスの事例です。Fig.6、Fig.7 は2003年10月14日から約300日間の速度RMS値(Fig.6)、加速度ピーク値(Fig.7)を表しています。この事例では、2004年3月18日に速度RMS値のレベルが 0.35 ipsに達していますが、同時刻の加速度ピーク値はほとんど変化していないことがわかります。この結果より、アンバランスを監視するには、加速度ピーク値では役に立たず、速度RMS値を用いる必要があることがわかります。

Fig.6

Fig.7
2つの重要なパラメータ
上記で見てきた通り、2 つの主要パラメータ、速度RMS値と加速度ピーク値は、産業機械でよく見られる多くの振動問題を管理できることが示されています。これらの 2 つのパラメータは、低周波数範囲の 速度RMS値と高周波数範囲の加速度ピーク値です。速度RMS値は、バランス、アライメント、緩みなどの問題に最も敏感です。加速度ピーク値 は、衝撃、摩擦、疲労につながる問題に敏感です。
2つの重要なパラメータを実現する製品のご紹介
ベアリング故障検知用トランスミッタ 682C05

682C05
ベアリング故障検知用トランスミッタ「682C05」は、機械設備内のベアリングの故障を振動状態監視により早期警告できるように設計されたトランスミッタです。682C05は2つのパラメータ、10 ~ 1,000Hzまでの速度RMS値、および、1k or 5k ~100 kHzまでの加速度ピーク値を出力できます。これらの信号を使うことで、軸受損傷か、もしくは軸受損傷ではないのか(アンバランスなど)を切り分けることができます。また、振動の生信号を計測できる端子も備えているため、その後の詳細分析を行うことも可能です。
IO-Link対応振動センサ 674A91

674A91
IO-Link対応振動センサ「674A91」は、エッジで生の振動データをデジタル処理し、加速度ピーク、RMS 加速度、RMS 速度、波高率、温度などの主要な傾向値を送信します。このデータにより、ベアリングやファンモーターの複数の故障状態を監視し、ベアリングの潤滑の必要性やシャフトの位置ずれなどの早期警告状態を容易に検出できます。特に、加速度ピーク値、速度RMS値は、対象とする周波数を変更できるため、様々な回転機械に適用ができます。
このように、当社では状態監視を実現していくうえで、効率的に監視する方法をご提案可能です。