(計測用)加速度計の取り付けガイドライン
周波数応答
加速度計の周波数応答の精度は取り付け方法の影響を受けます。そのため、最適な精度を得るために適切な取り付け方法を選ぶ必要があります。加速度計に付属する校正証明書に記載された動作周波数範囲は、基準加速度計にしっかりと取り付けた状態で行われるback-to-back比較校正法によって求められています。
最高の精度を求めるなら、スタッドによる取り付けがおすすめです。非常に滑らかな表面に加速度計をスタッドで直接取り付けることで最も高い共振周波数と広い周波数範囲が可能となります。
この章で紹介される他の、磁石や接着による取り付け方法にはそれぞれ利点はありますがスタッド取り付けほどの精度が期待できません。加速度計に何らかの質量(接着マウントベースまたは磁石マウントベース)を加えると、検出システムの共振周波数が低下し、使用可能な周波数範囲が制限されるからです。
ゴムの取り付けパッドも加速度計の周波数応答に影響を及ぼします。柔らかい材料はフィルタリング効果をもたらし、高周波伝達率を低下させます。
取り付け表面の準備
最高の精度の測定結果(特に高周波測定)を得るためには加速度計は滑らかで平らな機械加工された表面に取り付けることが必要です。取り付ける表面とその周辺に金属のバリ、他の異物がないことを確認します。取付面を密着させるため、加速度計のベースと取付表面の間にシリコングリースを塗ります。これにより、ベストな高周波伝達率が得られます。
スタッドによる取り付け
加速度計に付属のスタッド(一体型もしくは取り外し可能型)が付いている場合は、スタッドによる取付を推奨します。この取付方法は工場出荷前に行われる校正と同じ取り付け方法なので最も正確な値を得ることができます。加速度計のベースがあたる表面を研磨、または機械加工して平らで滑らかにします (ベースの面積などはPCB の仕様書に記載されています)。次に、東陽テクニカから別途提供される取付図にしたがってタップ穴を開けます。穴は、確実に取付面に対して垂直になるようにします。そして加速度計を取り付ける際にはスタッドがタップ穴の底部または加速度計ベース側のネジ穴の最奥に付かないようにする必要があります(PCB®社のほとんどの取り付けスタッドには、深さ制限のあるショルダーがあり、スタッドが加速度計の最奥に付かないようになっていますし、どのベースにも座ぐりがあるので、加速度計はショルダーにのりません)。加速度は、構造体表面から加速度計のベースに伝わります。スタッドがタップ穴やネジ穴の最奥に付いたり、加速度計と取付け表面の間に異物が入り隙間ができると、加速度が伝わらず、測定精度に影響がでます。締め付けは推奨されたトルクで行ってください。
ネジロック剤を取付スタッドのネジ部につけることで、ネジの緩みを防ぐことができます。図2に、スタッド取り付けされた加速度計の例を示します。
ネジによる取り付け
リング型の加速度計をしっかりと取り付けるには、絶縁キャップスクリューを使用します。加速度計ハウジングの貫通穴からキャップスクリューを入れ、取付面のタップ穴に締めこみます(図3A)。タップ穴は、ネジが底につかないくらい十分な深さである必要があります。PCB®社のすべてのリング型加速度計にはキャップスクリューが付属します。
キャップスクリューは、厚さの薄い物体に加速度を取り付ける時にも使用できます。(図3B)。その場合は計測対象物に十分な大きさのタップ穴を開け、キャップスクリューを貫通させます。一方で加速度計ベース側では穴の一番奥までスクリューが届かないように注意が必要です。
いずれの場合でも取付面にシリコングリースを薄くつけると、高周波伝達率が向上します。
接着剤による取り付け
接着による取り付けも可能です。接着剤による取り付けには、加速度計ベースの損傷または取付ネジの固着を防ぐために別売の接着マウントベースの使用が推奨されています。ノイズによる影響を減らすためPCB®社のほとんどの接着マウントベースは電気絶縁されています。推奨される接着剤の種類は、アプリケーションによって異なります。PCB®社が提供する接着剤としては、室温での使用ではペトロワックス、120℃までの高温アプリケーションでは速乾性ゲルがあります。2液性エポキシよる強固な取り付けは長期に渡る安定した計測を可能にします。アプリケーションによっては、歯科用セメント、ホットグルー、瞬間接着剤、ガムテープなども使用可能です。
ただし、取り付ける対象物にはさまざまなものがあり、一つの接着剤がすべてに適しているわけではありません。使用環境なども考慮して接着剤を選定する必要があります。図4は、接着マウントベースを用いて加速度計を測定対象物に取り付けた例です。
取り外しの際には、加速度計を損傷しないように、接着剥離剤を使用します。接着剤の種類(強力接着剤、歯科用セメント、エポキシなど)によって使用する剥離剤は異なります。速乾性ゲルの剥離には、アセトンが推奨されています。剥離剤を十分接着剤に浸透させる必要があるので塗布してからは数分待ちます。
剥離剤が効いた後は、通常の両口スパナを使用して加速度計を外します。ティアドロップ型の加速度計の取り外しには、付属の取外しツールを使用します(図5)。レンチまたはツールを使って、加速度計をゆっくりと回して計測対象物ら外します。
磁石マウントベースでの取り付け
磁石マウントベースは、磁気を帯びた表面への取り付けに使用されます。比較的手間がかからない方法なので一時的に取り付ける場合などには便利です。また、強力な磁気による強固な取り付けは優れた高周波応答を可能にします。
その他、磁石による取り付けの利点として、曲面用磁石マウントベースを使うことによって曲面(モータやコンプレッサのハウジング、パイプなど)への取り付けも可能となることです。ただし取り付け強度が落ちるため加速度計の動作周波数レンジを著しく低下させる可能性があります。マグネットベースは、平坦な表面に取り付けることでこそ優れた高周波応答性が得られます。
加速度計と磁石マウントベース間、および磁石マウントベースと構造体間には、シリコングリースを薄く付けます。表面が平坦でないか、非磁性体などの場合は、スティールパッドを溶接したり、エポキシ接着剤を使用したりすることで磁石マウントベースが使用できます。図6~8は、マグネットベースとマグネット取り付けした加速度計を示します。
注意:磁石マウントベースに加速度計を付けてから測定対象物に取り付ける際は、パチンと勢いよくつけないで下さい。それによって非常に大きな加速度レベルが発生し、場合によっては加速度計が損傷する恐れがあります。このような損傷を防ぐため、少しずつ近づけながら取り付けるか、横からスライドして取り付けてください。一番推奨される方法としては、まず磁石マウントベースを計測対象の構造体に取り付けてから、次に加速度計を磁石マウントベースにねじ止めすることです。
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