電荷出力型加速度計入門
はじめに
電荷出力型加速度計は、加えられた加速度に比例した電気出力を生成します。使用温度範囲が163℃までのアンプ回路を内蔵しているICP®センサとは異なり、アンプ回路を内蔵していないので、高温環境下での振動アプリケーションに最適です。温度範囲が649℃まで使用できるように設計された電荷出力型加速度計もあります。
電荷出力型加速度計の出力は高インピーダンスの電荷信号であり、ケーブルノイズや劣悪な環境条件では歪んでしまうことがあります。そのため、ローノイズケーブルを使用し、電気的な接続はできる限りノイズの少ない状態にすることが重要です。信号をデータ収録機または計測機に送る前に、研究室仕様のチャージアンプまたはインラインチャージコンバータで信号を変換する必要があります。
電荷出力型加速度計の構造
適切な信号変換を可能にするために、電荷出力型加速度計には慣性マスが取り付けられた圧電体(水晶等)を含むさまざまな機械部品が使用されています。加速度が加わると、慣性マスから、圧電体が変形し加速度に比例した電気出力が得られます。その結果が直線的になるようにプリロードリングまたはスタッドは圧電体と強固な一体構造になっています。出力は電極に集まり、リード線によって電気出力コネクタに伝わり、そしてそこから接続されたローノイズ伝送ケーブルへと出力されます。
電荷出力型加速度計の電源供給
電荷出力型加速度計は、ICP®加速度計のように外部電源が必要ありません。機械的ストレスが加わると、圧電素子から高インピーダンスの電荷信号が出力されます。高インピーダンス信号は、データ収録装置または計測機器で処理される前に低インピーダンス電圧信号に変換する必要があります。この変換には、次の2種類の方法があります。
1) 研究室仕様のチャージアンプの使用
2) インラインチャージコンバータとICP®電源の使用
一般的に、チャージアンプにはゲイン/レンジ調整機能がついています。その他、フィルタリング、信号の最適化や低周波測定のための時定数調整が可能なものもあります。
インラインチャージコンバータには固定の変換係数(1mV/pCまたは10mV/pC)があり、ICP®シグナルコンディショナからの電源が必要です。
注:チャージコンバータは、動作温度とセンサの絶縁抵抗を考慮して選択する必要があります。
レンジ
電荷出力型加速度計には、ICP®圧電型加速度計のような最大5Vのフルスケール電圧レンジの制限がなく、仕様に記載されているリニア測定レンジ内であれば動作できます。電荷出力(pC/g)は、チャージアンプまたはチャージコンバータで変換できます(mV/pC)。研究室仕様のアンプは、一般的にゲイン(mV/pC)と測定レンジが調整できます。チャージコンバータのゲインと測定レンジは固定されているのが一般的です。例1に、固定チャージゲインの変換を示します。例2には、システムの測定レンジの計算を示します。
例 1
電荷出力型加速度計:357B03、感度:1pC/(m/s2)
チャージコンバータ:422E52、固定チャージ変換:10mV/pC
期待入力値:14g
10pC/g×10mV/pC=100mV/g×14g=1400mV=1.4V
例 2
電荷出力加速度計:357B03、感度:1pC/ (m/s2)
チャージコンバータ:422E52、入力レンジ:±500pC
±500pC÷10pC/g=50g測定レンジ
電荷出力型加速度計の低周波応答
電荷出力型加速度計の仕様書には、低周波および放電時定数の仕様は含まれていません。これらは、チャージアンプまたはインラインチャージコンバータによって決まる電気特性だからです。これらの情報が必要な場合はチャージアンプまたはチャージコンバータの仕様書を参照してください。例えば、PCB®のインラインチャージコンバータ、モデル422E52の時定数は0.1s以上であり、低周波応答は5Hz(-5%)です。
電荷出力型加速度計の高周波応答
電荷出力型加速度計毎に、周波数測定レンジの上限が決まる固有の共振周波数があります。この共振周波数は、物理設計に依存します。図5で示されているように共振周波数に近づくと感度は急速に上がり、信号出力がオーバーロードになることがあります。
高周波を正確に測定するには、取付けが重要になります。モデルごとの正しい取付方法については、取付図面および製品マニュアルを参照してください。加速度計の高周波応答と取付方法の詳細については、ウェブサイトをご覧ください。
校正/再校正
すべてのPCB®が提供するICP®加速度計には図6で示されるような校正証明書が付いてきます。この証明書には、各加速度計の特性と、いくつかの重要な仕様値が記載されています。
図6:加速度計の校正証明書
校正は、加速度計に基準加速度計を取り付け、両方同時に加振して出力されるデータを比較して行われます(back-to-back比較校正)。この技術は幅広い周波数レンジに渡る加速度計の感度を手早く、簡単に確定するための方法です。使用される基準加速度計は、認証された規格団体で校正されています。
両方の加速度計にかかる加速度は同じであるため、出力電圧の比は加速度計の感度の比にもなります。基準加速度計の感度はわかっているため、それを基に校正される加速度計の感度を計算で求めます。
PCB®は再校正サービスを提供しています。社内のキャリブレーションラボは、ISO9001認証およびA2LA認定されています。校正で使用される機器は、NIST(National Institute of Standards and Technology、米国標準技術局)に直接トレーサブルです。
両方の加速度計にかかる加速度は同じであるため、出力電圧の比は加速度計の感度の比にもなります。基準加速度計の感度はわかっているため、それを基に校正される加速度計の感度を計算で求めます。
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