第14回 アクティブサウンド制御のさらなる応用(まとめと展望)/
音や振動のアクティブコントロール

今回で最終回となります。今回はこれまであまり触れてこなかったアクティブ手法の適用可能性に関して、いくつかの例をあげながらご紹介していきたいと思います。

アクティブサウンド制御が検討された初期の頃、研究者らは単一の離散周波数からなる音場の予測可能性を利用して、それらを効果的にキャンセルしようと試みました。当時、その様な新しい手法をテストするための技術的な方法としては、離散高調波周波数スペクトルを計測出来る電気変換器が必要でした。

しかしながら当時この変換器に求められる仕様はかなり複雑なものになり、負荷依存の空間放射パターンを引きおこし、その為に空間的に可変な2次場(セカンドフィールド)を必要としました。したがって実験の成功は、明確なボリュームや特定の空間的角度、又は単純化された基準ラジエーターに限定されていました。

この様な理由から、変換器から放射される二次音源によるグローバルな体積の補正は、その複雑さとレベル低減があまり見込めない点から、あまり有益ではないと判断されてきました。それにもかかわらず、ある論文では、ラウドスピーカーによって基本周波数を補正かつ、ケースに固定された圧電セラミックアクチュエータにより高調波の補正に成功したシステムについての報告例もあります。又変換器によるアクティブ対策は、例えば遮音が特に必要とされる開口部にアクティブ音響アッテネーター(減衰器)を備えることで、パッシブ(受け身)な対策を補完する場合があります。

ただし建物の窓が開いている場合には、同じ様なソリューションを見つけることができませんでした。アクティブサウンド制御の研究が行われた最初の数年間にかなり数の調査が行われましたが、3次元の入射波動場を許容可能な範囲で再現することが困難であった為、最終的には失敗に終わりました。2つの部屋がある場合では、互いに隔離される様な構造とすれば2つの部屋の間の遮音性は改善され、物事は扱いやすくなります。又、閉じられたウインドウに関する調査はいくつかの論文で見つけることが出来ます。

振動制御においては、電子制御を必要とするあらゆるアプローチはアクティブな手法として分類されます。例えば磁気軸受や軽量なロボット装置などで見ることが出来ます。アクティブ磁気軸受は、位置制御のために適切に制御された磁力を使用しており、摩擦損失が低減される為、主に回転システムで適用されています。それらの利点及び応用や問題点についても、これまでいくつかの論文の中で説明されてきています。

ロボットデバイスの分野では、軽量化されていくアームの動作速度の増加に対処しなければなりませんでした。それ故にロボットの制御はアームの位置決めに制限されるだけではありませんでした。移動する構造の運動状態を考慮に入れる必要があり、ロボットの動きを制御する信号で運動状態を補正する必要もありました。

また、音場量や振動場量の代わりに、動的特性(例えば、ばね剛性)が制御される場合もあります。このアプローチの典型的な例はセミアクティブと呼ばれる手法であり、ショックアブソーバーやアクティブにサポートする動的な振動アブソーバーです。

アクティブ制御を適用、開発するにあたっては、どんなに緻密なアルゴリズムや高いスペックのハードウエアを使用したとしても、それらは物理学的な基本限界により制限されてしまう為、アクティブ制御の開発は本質的な物理メカニズムに重点が置かれてきました。物理的な可能性に関して十分な知識を持つことは、満足のいく解決結果に向う為の最も体系的で有益な方法です。この様な物理的基礎に重きを置くことで、成功したアプリケーションの事例の多くは実験室での実験やテストでの結果を上回る結果を示しています。

他の技術的方法と同様に、音および振動のアクティブ制御は、すべてのアプリケーションに対してではありませんが、騒音や振動の問題を多くの点で解決する事ができる可能性を持っています。音や振動を発生させる材料や概念、信号を処理する為の電子ユニット、複数の入力と出力に対する明確かつ堅牢なコンセプトがさらに進化するならば、処理がより改良され、アクティブシステムのコストや労力も許容できるレベルまでに低減するはずです。

この様な背景から、今後増加していく様々なアプリケーションに対してアクティブサウンド制御や振動制御を促進させる動きが活発化し、それらが実際に適用されていくことが予想されています。

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