ISO 16063について

規格の概観

多くのユーザがISO 9000の広範な影響には精通していますが、特に加速度計の校正について、ISO 16063で利用できる詳細情報に気づいていません。今回は、振動および衝撃トランスデューサの校正方法を規定するISO 16063の枠組みの基本的な概要について説明します。

規格の第1部では、振動および衝撃トランスデューサの校正のための基本概念と方法の概要について説明しています。基本的に、ISO 16063規格は振動トランスデューサの主要な性能/挙動特性をカバーし、2つの主要な分類(直接応答とスプリアス応答)に分けます。

直接応答は、一次入力または測定量に対するトランスデューサの出力です。振動トランスデューサの受感素子は、単一方向の並進加速度を測定するように設計されています。(3軸加速度計には、3つの直交方向の加速度を測定するための3つの独立した受感素子があります。1つの便利なパッケージに、3つの個別の加速度計が入っているものと考えて下さい。)その直接応答は、受感軸方向の機械振動入力によるトランスデューサからの周波数応答出力です。理想的には、これには振幅と位相の両方で平坦な周波数応答を試験し、振幅入力の特定の範囲にわたる直線性を試験することが含まれます。実際のところ、振幅と位相に対するこの周波数応答の継続的な検証は、加速度計の定期的な校正の基本的なメリットです。

Phase Response 位相応答
Amplitude Response 振幅応答
Phase 位相
Deviation 偏差
Frequency 周波数


スプリアス応答とは、直接応答の入力(ここでは主受感軸と一致する機械的振動)以外の様々な入力に対するトランスデューサの出力のことです。これには、温度依存性、過渡温度感度、横振動感度、回転振動感度、ストレイン感度、磁気感度、取付トルクに対する感度などが含まれます。理想的には、トランスデューサは測定におけるスプリアス出力を低減または除去するように設計されます。通常メーカは、研究開発および初期製造時に、スプリアス入力に対するトランスデューサの感度を試験することによって、センサ設計を検証します。従って、これらの試験の多くは、標準化された試験方式には依っていません。様々なスプリアス応答のうち、横振動感度(しばしば交差軸感度と呼ばれます)は、ユーザが自分で試験したくなることがあります。このため、横方向校正システムが市販されており、これに関する規格(16063-31)も存在します。

16063規格のパート1の最後のセクションでは、不確実性の表現について規定しています。不確実性は、おそらく最も重要で、最も議論されている加速度計の校正分野です。人間的な問題(研究所間の誇りなど)に左右されるだけでなく、加速度測定のダイナミクスと校正測定プロセスがよりよく理解され、技術が進歩するにつれて、不確実性の領域は進化し続けています。現在の最先端技術による1次校正では、周波数範囲によって約0.2%から1.5%の測定不確実性があります。一般的な2次校正の測定の不確実性は、比較校正システムでは約1%から3%です。
 

拡張不確実性表サンプル

16063規格の残りの大部分では、トランスデューサの周波数応答、または前述の直接応答を校正するための、様々な1次および2次方式を詳細に規定しています。この加速度計の校正には、16063-21規格で規定されるback-to-back比較方式が最も一般的です。この校正技術は、一般的にトランスデューサメーカの生産ラインで使用されているだけでなく、再校正サービスを提供する計測ラボでも使用されています。あまり一般的ではありませんが、より高精度の1次方式としては、レーザー干渉法(16063-11規格)および相互作用法(16063-12規格)が挙げられます。 市販のレーザー1次校正システムとback-to-back比較校正システムとの間にはかなりな価格差があるため、より高精度な1次校正システムの使用は、国立の計測ラボおよびいくつかのトランスデューサメーカに限られます。

以下の表は、規格の構成部分に関する簡単な説明です。

a. –11 primary vibration calibration by laser interferometry
レーザー干渉法による-11の1次振動校正
b. –12 primary vibration calibration by reciprocity
相互作用法による-12の1次振動校正
c. –13 primary shock calibration by laser interferometry
レーザー干渉法による-13の1次衝撃校正
d. –15 angular vibration calibration by laser interferometry
レーザー干渉法による-15の角振動校正
e. –21 vibration calibration by comparison
比較による-21の振動校正
f. –22 shock calibration by comparison to a reference
基準との比較による-22の衝撃校正
g. –31 testing of transverse sensitivity
横感度の-31の試験
h. –41 calibration of laser vibrometers
レーザ振動計の-41の校正

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