ISO 16063-11 レーザー干渉法の概要

加速度計校正の基本

加速度計の1次校正は、世界のほぼ全ての加速度計校正(産業用、政府機関、軍事、学術機関、またはベンダー)のトレーサビリティの根底にあります。レーザー干渉法による加速度校正は、試験対象の加速度計で測定された振動を一定の性質、つまりレーザー光の波長と比較する絶対的な方式であるため、重要な方式です。

ISO 16063-11規格は、1次校正のための3つの選択肢を示しています。各方式は、アルゴリズム/分析とハードウェアにおいて、より複雑なものを必要とします。そして位相情報およびサブ波長測定分解能のような追加的機能を定めています。

最も一般的に使用されている技術は 方式I-縞計算によるレーザー干渉法です。この方式の利点は、反射されたレーザービームの干渉縞を検出するための計算に、比較的簡単な電子機器を使用できることです。ISO 16063-11は、この技術は低周波数範囲(最大800 Hz)にのみ有用であると規定していますが、特別な状況下ではより高い周波数にも適用できます。特別な状況とはすなわち、800 Hzを超える周波数で加速度レベルが大幅に増加する必要があります。この方式は、電気部品ではなく主に機械部品による、非常に低い不確実性を有します。

干渉法の欠点は、多数の縞を数えるために変位が大きい低周波数でしか使用できないことです。また、位相情報を得られません。下記に説明する方式と同様に、レーザー反射点の位置は重要であり、取付け面にあることが好ましいです。しかしながら、シェーカーは純粋に平面運動をしない可能性があり、DUTの平面運動を決定または検証するために複数の測定を行う必要があるかもしれません。そのため干渉法のシステムは、時間がかかっても複数の測定を行うこと、または複数のレーザーヘッドを必要とします。さらに、横方向の動きを最小限に抑える電気機械式加振器を備えるために、多大な注意と投資が必要です。この性能は通常、新世代のエアベアリング校正加振器により実現されます。

スプリアス応答とは、直接応答の入力(ここでは主受感軸と一致する機械的振動)以外の様々な入力に対するトランスデューサの出力のことです。これには、温度依存性、過渡温度感度、横振動感度、回転振動感度、ストレイン感度、磁気感度、取付トルクに対する感度などが含まれます。理想的には、トランスデューサは測定におけるスプリアス出力を低減または除去するように設計されます。通常メーカは、研究開発および初期製造時に、スプリアス入力に対するトランスデューサの感度を試験することによって、センサ設計を検証します。従って、これらの試験の多くは、標準化された試験方式には依っていません。様々なスプリアス応答のうち、横振動感度(しばしば交差軸感度と呼ばれます)は、ユーザが自分で試験したくなることがあります。このため、横方向校正システムが市販されており、これに関する規格(16063-31)も存在します。

ISO 16063-11 方式II-最小点法は非常に面倒な手作業によるもので、ユーザは加速振幅を調整してレーザーのゼロ交差に合わせる必要があります。低横方向校正器は、高周波数では縞計算に必要な変位を実現できないので、この方式は10 kHzまでの周波数範囲で使用されます。

この方式の主な利点は、低周波数変調ミラーと補償数学を利用することによって、計数方式をより高い周波数範囲に拡張できることです。しかし、特定の設置形態では、より高い周波数で必要な変位を実現するために、特殊な高gレベルの圧電シェーカーを必要とします。商用化に際しての明らかな欠点としては、ビームを変調するための低周波移動ミラーの複雑さと耐久性の懸念が挙げられます。実際のところ、方式IIは実現できません。

方式III - 正弦近似法には、もともとデジタル化と処理が多く必要でしたが、これは今日の電子機器で実現可能になりました。正弦近似法の基本的な利点は、妥当な加速度レベルで全周波数範囲を処理し、位相情報も測定できることです。正弦近似法の主な欠点は、汎用レーザー振動計に起因する高コストと、非協調ターゲットでのスペックルドロップアウトにより収録時間が長くなることです。しかしながら、走査または再位置決めを排除し、また校正基準において統合された協調ターゲットを利用することによって、収録時間を短縮したマルチヘッドレーザー一次システムにおいて、近年進歩が見られました。

この規格は、システムの様々なコンポーネントの不確実性を非常に詳細に特定し、定量化しています。どのようなシステムでも最大の課題は、不確実性を最小限に抑えることです。機械式加振器の横方向の動きは、ISO 16063が明確に特定している測定の不確実性の大きな原因です。従って、規格では横方向の動きに関して次のような制限があります。

1 Hz - 10 Hz < 1%
10 Hz - 1 kHz <10%
1 kHz - 10 kHz レンジでは20%未満

各方法に共通の欠点としては、レーザーの比較的高いコストや、レーザーのような非慣性(または相対)測定技術では相対運動が問題となり得るので、支持構造に伴う複雑さなどが挙げられます。

選択された方式に関係なく、ISO 16063-11規格は、制御され、再現性があり、正確な方式での実装のための明確な指針となります。レーザー部品およびデータ収録における近年の進歩により、レーザー一次システムがより高性能になり、劇的に改善されたコストパフォーマンスで提供されることが予想されます。

東陽テクニカのセンサ校正とは?