モータ計測を支援する分散型データロガーとその活用事例

EVをはじめとする電動化技術の開発における計測機能の強化を支援

地球温暖化につながる温室効果ガスの排出を実質ゼロにする脱炭素への取り組みは、日本の自動車業界においても重要視されており、電気自動車(EV)をはじめ、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などの普及拡大が見込まれています。

東陽テクニカでは、モータ出力・効率などモータ性能のほか、モータの電気的、機械的特性を計測できるシステムの導入を支援し、新たな自動車開発に必要なコア部品として求められる、低損失のバッテリとインバーター、高出力、高効率を両立するモータの性能評価に貢献します。
ここでは、一般財団法人日本自動車研究所(JARI)様の設備である「大型モータダイナモ設備」への適用事例をご紹介いたします。

「大型モータダイナモ設備用データロガー」搭載の計測モジュール(左)とデータロガー(右)

分散型データロガーとその有効性について

ドイツ・imc Test & Measurement GmbH社のデータ計測機器を用いたシステムの事例です。
本システムは、"EtherCAT”という高速な産業用プロトコルを用いた分散計測機能と、自動車で汎用的に用いられる“CANバス”プロトコルを用いた分散計測機能の両方を備えています。

「大型モータダイナモ設備用データロガー」の分散計測イメージ

「大型モータダイナモ設備」のような広い試験室内において、設備から大きな電磁ノイズが発せられる環境でアナログ配線のケーブルを敷設すると、計測時にノイズトラブルが発生するリスクがあります。データロガーは大きくメインユニットと複数の計測モジュールで構成されていて、本システムは、計測モジュールをそれぞれセンシングポイント近傍に分散して設置し、センシングポイントの近傍でアナログからデジタルへの変換を行い、ノイズに強いデジタル信号をメインユニットにデータ転送する仕組みで、ノイズトラブルを避け安定した計測環境を実現しました。

モータ近傍の恒温槽内部での分散計測モジュール(左)とモニタ室へ設置したデータロガー※PC で波形表示(右)

写真提供:一般財団法人日本自動車研究所(JARI)

また、分散型の計測モジュールは、最低-40℃までの極低温下でのモータの性能試験に対応しています。計測モジュールを極低温の恒温槽内部に設置することで、熱電対ケーブルの長距離の敷設をなくし省配線化しました。
加えて CAN バス計測機能を用いて、ECU※1 からのモータの制御情報やダイナモメータ※2、電力計※3 との信号接続ができるため、モータの制御状態と実際の挙動を多チャンネルかつ同期された時刻で一度に視覚化することが可能です。

※1 モータの制御を行う車載コンピュータ(Electronic Control Unit)
※2 モータの駆動力に対して負荷を発生させる装置
※3 モータへの入力と出力のエネルギーを高速に演算しモータの特性を解析する装置
 

「大型モータダイナモ設備用データロガー」の接続イメージ