不確かさを生む要因

詳細説明

加速度計の校正の不確かさには多くの要因があります。前回は、いくつかの主要な要因を手短に説明しました。前回に続き、今回はさらにいくつかの要因をご説明します。

加速度計校正の式、Vref/Vsut = Sref/Ssutを考えます。これは、加速度計(基準加速度計と被試験加速度計の両方)の出力電圧の比を取っているため、それぞれの感度の比に等しくなければならないことを示しています。電圧測定の比の性質上、外部要因が基準加速度計と被試験加速度計の両方の電圧測定に同じ影響を与える場合、校正に対する全体的な影響はゼロになる可能性があります(つまり、外部要因が式の分子と分母の両方にスカラー量として表示される場合、外部要因の項は省略されます)。

RMS(電圧計)ベースの校正システムによる従来の加速度計校正法は、歪みによって引き起こされる不確かさの影響を受けやすいです。離散フーリエ変換(DFT)を実行する現代の校正システムには、これと同じ制限はありません。そのため、現代の離散フーリエ変換ベースのシステムは、より良好な不確かさを提供できます。RMSベースのシステムは、全ての周波数にわたって加速度計の出力を測定します。場合によっては、基準加速度計と被試験加速度計の周波数応答がほぼ同じになり、歪みによる結果への影響がほとんどなくなります。ただし、加速度計の周波数応答の非線形部分に歪みが生じると、大きな測定誤差が生じる可能性があります。

たとえば、2 kHz、10 gの加速度レベルで加速度計を校正しているとします。使用しているエキサイタには、1次高調波(4 kHz)で5%の高調波歪みがあります。基準加速度計と被試験加速度計の両方が10 kHzまで「平坦な」周波数応答を持つ場合、両方の加速度計の測定結果は10.5 g(10g +(0.05 * 10g * 1.0))となり、校正結果には何の影響もありません。次に、基準加速度計は10 kHzまで「平坦」であると仮定し、被試験加速度計は2 kHzと比較して4 kHzで感度が50%向上するとします。 この場合、基準加速度計の測定値は4 kHzで10.5 g(10 +(0.5 * 1.0))となりますが、被試験加速度計の測定値は4 kHzで10.75 g(10 +(0.05 * 10g * 1.5))となり、感度は約2.3%高くなります。

RMS法に影響を与えるもう1つの状況は、ノイズがチャンネル間で同一でない場合に帯域外ノイズが存在することです。ノイズのRMSエネルギーが測定値に加算され、測定結果に誤差が生じます。 一方で、離散フーリエ変換法で個々のスペクトル線で処理すれば、すべての帯域外エネルギーが無視され、したがって測定結果には影響を与えません。これが特に顕著なのは、基準加速度計または被試験加速度計のいずれかが、広帯域分解能値(ノイズフロア)に近く、加速度計自身が持つノイズを配慮する必要がある場合です。

離散フーリエ変換法では、測定対象の周波数だけが解析され、「帯域外」信号は無視されます。アナログ方式で同等のことを実現するには、校正周波数で任意のバンドパスフィルタを使用することになります。このためISO 16063 Part 21では、狭帯域測定技術を使用しない限り、高調波歪みを適切な間隔で測定する必要があると規定しています(4.4章および4.6章)。

さらに、離散フーリエ変換法を使用すると、校正システムの不確かさを改善することができます。つまり、基準加速度計と被試験加速度計の両方のデータ収録チャンネルに同じ信号を同時に入力することで、離散周波数におけるデータ収録装置とシグナルコンディショナ内のゲインを校正できます。個々の周波数におけるチャンネル間の測定値の差を使って、システムは誤差を修正し校正結果を改善することができます。不確かさを改善するためのこの「チャンネル校正」は、被試験加速度計のシグナルコンディショナに対しても実行できます。もし詳しい情報が必要であれば、または加速度計校正における最近の動向についてご興味があれば、どうぞ弊社までお問い合わせください。

東陽テクニカのセンサ校正とは?