自動車モーダル解析用のセンサ選定に必要な考慮事項

古典的モーダル解析と実稼働モーダル解析は、自動車の動的な構造挙動を理解し最適化するための重要なツールです。より頑丈で安全な自動車の開発とともに、より良好な製造歩留まり、燃費と性能の向上、乗り心地の改善、ハンドリングの向上、そしてNVH(騒音・振動・ハーシュネス)の向上につながります。測定された振動データとモーダル解析から、エンジニアは車両と下部構造の動的モデルを構築することができます。動的モデルは、各振動モードの共振周波数、減衰値、およびたわみパターンを予測します。ターゲットとなる周波数範囲は、乗り心地のハンドリングに関しては1ヘルツ未満から数ヘルツまでであり、車両全体およびホワイトボディ(塗装や装備を施す前のボディ)モーダル試験については10ヘルツ~500ヘルツです。

構造の動的挙動とモード形状の視覚化をよりよく理解するために、古典的なモーダル解析では、測定された力の入力とその振動応答から得られる伝達関数を用いて動的特性を抽出します。通常、ホワイドボディから始めて、エンジニアは試験対象の構造的な挙動を記述する数学モデルを実験的に取得します。

インパクトハンマーを使用した試験から、数百のICP®加速度計およびモーダルシェーカを使用した大型で複雑な構造物のマルチシェーカ試験まで、測定手法は様々です。最適な結果を得るためには、エンジニアが技術、目標、制限を理解することが重要です。古典的モーダル解析は、線形性、時間的な不変性、相互性に関して結果の仮説をたてる必要があります。

テスト構造上の特定のモードを観察するためには、選択された測定点で適切な空間分解能をもつことと、適切な励起技術が必要です。モーダルアレイ加速度計であれば、取付けがしやすく多くのチャンネルを管理しやすいです。小型軽量、高感度で、優れた分解能を持つICP®加速度計を選択してください。加速度計と一緒にモーダルチューン(Modally Tuned®)インパクトハンマーを使用すると、モーダルノードから離れた試験構造の硬い領域を見つけるのに役立ちます。これは、モーダルシェーカで興味のあるモードを適切に励起する場所を見つけるのに役立ちます。

古典的モーダル解析では、試験構造が時間不変性または定常性を示すことが前提ですが、実際には時間や温度による変化が影響します。そのため、一度の「スナップショット」で全ての測定データを取得するのが最善です。これにより、経済的なモーダルアレイ加速度計の多チャンネル使用の傾向につながっています。シンシナティ大学構造力学研究所で開発された革新的なケーブルや、信号調整技術が効果的であることが証明されており、64チャンネルを超えるテストでは、BNCコネクタではなく、リボンケーブルとマルチピンコネクタの使用が推奨されています。多くの論文(titlelink bono / Dillon + titlelink ATA)が、試験時間の短縮と測定の信頼性という面で、議論されています。

モーダル解析の厳格な要件を満たすには、効率的な取付けおよび接続システム、さらにTEDS自己識別の導入をご検討ください。TEDSメモリを搭載した多チャンネル振動測定システムは、試験設定を迅速化し、試験時間を短縮し、人的エラーを減らします。試験時にセンサとその感度の識別を可能にするTEDSオンボードメモリは、特に多チャンネルのNVH試験に最適です。

少ないチャンネル数のデータ収録装置を使用しなければならない状況では、コスト効果の高い解決策はバンク切替を選択することです。ICP®モーダルアレイ加速度計とモジュラーバンク切替シグナルコンディショナを併用することで、応答信号を電子的に切替え、少ないチャンネル数のデータ収録器で、測定セットを迅速に自動サイクルできます。時間的な「スナップショット」を近似しつつ、価格と性能の最適なバランスを実現します。

セットアップには少し時間がかかりますが、センサやハンマーと一緒にシェーカ操作を行うと、システムの線形性を検証するのに役立ちます。試験構造への入力レベル(低、中、高)を制御することによって、試験対象の構造応答が出力振動の線形範囲内にあるか確認します。モーダル解析の原則によると、測定または推定された複雑な試験構造の周波数応答は、1自由度の周波数応答関数(FRF)の線形結合で構成されるため、出力挙動の線形範囲内で試験励起をすることが望ましいです。

多入力多出力(MIMO)モーダル試験では、任意の入力点ペア間で応答が一致しているかどうかの検証が重要です。 相互性を検証するためにPCB®は、同じ場所に配置された駆動点加速度計と入力力センサで構成される独自のICP®インピーダンスヘッドセンサを開発しました。駆動点FRFの正確な比較を可能にし、相互性が満たさていることを確認できます。

ブレーキパッドやバックミラーのような、より小さく、繊細な部品には、非常に軽量の加速度計が、好まれます。一般に、古典的なモーダル試験に使用される最適な加速度計には、高感度、優れた分解能、堅牢性、そして小さな質量が必要です。一般に、高感度加速度計は大きな質量を伴うことが多いですが、ホワイトボディモーダル試験や車両全体のモーダル試験では、質量の影響が少ないため、高感度の加速度計が適しています。1 V/gの高感度を持つ、小型でありながら高感度の加速度計を検討するとよいでしょう。

古典的なモーダル解析は、自動車の構造設計に欠かせません。弱点を特定し、動的な改善の方向性を示します。有限要素解析の進歩により、今日の解析モーダルモデルの信頼性が高まり、一部のケースでは古典的モーダル解析の役割が減少していますが、特に既存の構造物については依然として古典的なモーダル解析が必要です。これは、新しい自動車製品への追い風が高まる中で、客観的でかつ実証的なデータを追加するためです。一般的な用途としては、解析モデルの相関確認、トラブルシューティング、設計研究、構造最適化と損傷検出、力応答シミュレーション、カスケードターゲット設定などがあります。

時間と予算の都合により、多くのエンジニアが古典的なモーダル解析よりも実稼働モーダル解析を選択しますが、複雑な構造力学の課題を解決するためには両方の手法が必要です。実稼働モーダル解析では、構造物が実際の運転環境での振動応答から構造挙動を抽出します。古典的なモーダル解析と組み合わせてよく使用されます。古典的なモーダル解析と実稼働モーダル解析には、自動車の構造、関連するシステムおよび部品の設計において、どちらも利点と制限があります。

実稼働モーダル解析は、実際の運転条件下でモーダル特性が必要な場合や、構造への力の入力を定量化することが難しい場合、あるいは時間とコスト面で古典的なモード解析テストの利点を上回る場合に採用されます。自動車市場では、時間とコスト面の理由、および今日のモーダル解析モデルの信頼性の高まりにより、実稼働モーダル解析が主流となっています。この方法の利点には、実際の動作条件を反映した応答の確保、迅速なセットアップ、そして多くの場合に測定が他の車両開発試験と同時に行えること、などが含まれます。しかし、古典的なモーダル解析とは異なり、応答は同時に収集されなければならず、多チャンネルのデータ収録装置が必要です。

最適な実稼働モーダル解析加速度計は、高感度、大きな過渡入力を可能にするのに適切な範囲、頑丈な構造、小さな質量、などの特長を備えたものです。これらの要件は、実稼働モーダル試験で見られる厳しい屋外環境に耐えられるようにハーメチックシールされた、チタン製パッケージの10または100 mV/gの小型三軸加速度計が満たしています。

古典的モーダル解析および実稼働モーダル解析の詳細については、弊社へお問い合わせください。