3分でわかる はじめてのハンマリング試験 | 東陽テクニカ3分でわかる はじめてのハンマリング試験 | 東陽テクニカ

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ハンマリング試験に関するお問い合わせ

伝達関数を求める方法はいくつかありますが、一般的な手法として「ハンマリングによる伝達関数測定」と「加振器による伝達関数測定」があります。 ハンマリングによる伝達関数測定は、その手軽さによって、昔から広く実施されてきております。 今回は「ハンマリングによる伝達関数測定」に関して、初学者でもわかりやすく解説します。

ハンマリングとは

伝達関数測定の必要性

伝達関数とは、入力と出力の関係を表す数学的な関数で、入力信号と出力信号の比として表現されます。
機械構造物が発生する振動・騒音の大きな原因のひとつが共振現象です。
共振周波数は各構造物固有のものです。
設計図面の段階で有限要素法などを使って、これらの固有値、モードを計算で求めます。
複雑な構造物の場合、計算値とは違った結果になる事が多いため、出来上がった実際の構造物に強制加振を行い伝達関数を測定します。
測定された伝達関数から共振周波数(固有振動数)と振動モードなどがわかります。

1.原理

構造物にインパクトハンマーや加振器を使って強制加振力を与え、 発生した振動を主に加速度計を使って測定し、伝達関数を計算します。 式で表すと以下のようになります。

2.最小構成

ハンマリング試験で使用する計測器は、FFTアナライザ、加振用インパクトハンマー、加速度計から構成されます。それぞれの役割は次のようになります。

①インパクトハンマー:加振力の計測、加振タイミングの取得
②加速度計:加振に対する応答(加速度)の取得
③FFTアナライザ:データ収録、FFT演算

3.何故ハンマリングなのか

メリット
  • セッティングが簡単で、加振器を設置する手間が省ける
  • 一回の加振で幅広い周波数範囲のエネルギーが得られる
  • ローディングマスが小さい ・ローコスト

測定動画

ハンマリング試験効率化機能

ハンマリングでは共振点以外にもFRF、位相、コヒーレンス等多くの物理量を監視する必要があります。
OROSではダブルハンマリング検知、コヒーレンス監視に加え、条件を満たさないデータを自動的にリジェクトする機能があります。

OROS 動画コンテンツはこちら

FAQ

Q: 共振周波数はどうやって見つけたら良いですか?

A: 共振周波数の部分では、位相は90°遅れます。位相の情報から、測定対象の共振周波数がどこにあるのかを正しく把握することができます。
また、共振周波数の部分で位相が90°ずれるということは、実部がゼロとなり、虚部が大きくなります。このことから、実部/虚部表示にすれば、共振周波数がどこにあるのかわかりやすくなります。

Q: コヒーレンスって何ですか?

A: コヒーレンスも伝達関数同様にクロススペクトラムから求めますが、定義式の元々の形は、「誤差を除いた応答と誤差が混入したままの応答の比」です。
ここで、「誤差を除いた応答」というのは、「入力のFFT分析結果(スペクトラム)に、測定された伝達関数を掛け合わせることで予想された応答」を示し、「誤差が混入したままの応答」は応答のスペクトラムを示します。つまり、「応答にどれだけの誤差が含まれているか」ということを表す量でしかありません。

Q: ハンマリングではどんなウインドウ関数を使用しますか?

A: ハンマリング試験において使用されるウィンドウ関数は2種類あります。
① フォースウィンドウ
入力(ハンマー)信号側にかけるウィンドウ関数で、ハンマーのインパルス波形以外の部分を強制的にゼロにします。ノイズの除去ができるので、コヒーレンスの向上に役立ちます。

② レスボンスウィンドウ
応答(加速度センサ)信号側にかけるウィンドウ関数です。減衰が長く、1FFTブロック長内で振動が収まらない場合、レクタンギュラウィンドウでは、リーケージの影響を受けてしまいます。そのため、端に行くにしたがって、次第に信号を減衰させるようなウィンドウ関数を適用します。ただし、応答波形を無理やり減衰させるため、本来の減衰率と異なってしまいますので、レスボンスウィンドウの形状には注意が必要です。

ハンマリングによる伝達関数の測定の場合、ウィンドウ関数をかけることなく、コヒーレンスの高い伝達関数を得ることができるのが理想的です。しかし、難しい場合が多くありますので、特性を理解した上で、適切なウィンドウ関数を利用することをお勧めいたします。

Q: ハンマー選定のコツはありますか?

A: ハンマーの選定には大きさ(重さ)が重要です。主に加振対象の大きさと重さによって使い分けます。大きい・重いものには大きなハンマーを使用し、小さい・軽いものには小さなハンマーを使用します。
 大きなハンマーは加振力が大きいため、加振点と応答点の位置が離れている場合でも、S/N比よく計測ができます。しかし、小さいものを加振するのには向きません。一方で、小さなハンマーは叩きやすく、高い周波数まで加振できます。しかし、加振力が小さいので加振点と応答点が離れていると、S/N比が低下してしまう場合があります。マスを追加することで、この問題はある程度解決できますが、マスを追加した場合、ハンマーについているセンサの感度が変化しますのでご注意ください。

Q: ハンマーのチップには何を使えばいいの?

A: 主にソフト、ミディアム、ハードの3種類があり、加振できる周波数の範囲が異なります。高い周波数までの伝達関数を求めたい場合は、ハードチップにし、高い周波数まで加振する必要があります。もし、高い周波数まで伝達関数を求めるにも関わらず、ソフトチップを使用した場合、伝達関数の高周波側にノイズ(伝達関数がギザギザする)が発生してしまいます。ソフトチップの利点は、低周波側に加振力が集中しているため、S/N比の向上が見込める点にあります。

Q: 加速度計の重さってどれくらい結果に影響するの?

A: どの程度変化をするのか、表したものが下の図です。測定対象物に対して7% の重さのセンサを付けた場合、約10Hzも伝達関数のピークがずれています。そのため、ハンマリング試験をする際は対象物に対して十分に軽い加速度センサをご使用ください。
加振対象物: 1.39kg
軽量センサ: 0.8g (0.05%)
工業用センサ: 51g (3.6%)
工業用センサ+マグネットベース:101g (7.2%)

機器選定ガイド(基本編)

測定ステップ ① 試験体固定
試験対象物を固定します。一般的な固定法として、対象物の拘束を行わないFree-Free法があります。
柔らかいゴムでつるしたり、スポンジやクッションの上に対象物を設置します。

測定ステップ ② 機材
インパクトハンマー、加速度計(1軸or3軸)、FFTアナライザ(PC)を用意、設定します。
平面的な挙動を知りたい場合は1軸、3次元的な動きを知りたい場合は3軸加速度計を使用します。
※選定方法は「機器選定ガイド」参照

測定ステップ ③ センサー設置
加速度計を試験対象物に貼り付けます。
感度や形状よりも、「重さ」を重視する。小型軽量であるほど良い。

測定ステップ ④ 加振
インパクトハンマーで加振するポイントを決定し、加振する。
この時、ハンマーからの信号を受けFFTアナライザが信号の収録を開始。

測定ステップ ⑤ 分析 収録した結果をFFT分析し、伝達関数を取得する

測定ステップ ⑥ ③~⑤を繰り返す(※モーダル解析を行う場合)
加振位置(ハンマーでインパクトを与える点)を固定し、加速度計を動かしながら③~⑤を繰り返すのが最も簡単。

ハンマリング試験に関するお問い合わせ

計測パッケージ例

ハンマリング測定器キット  価格(税込み ¥1,500,000 ~)

アナライザ O4-FREQ-4   OROS 製品一覧
FFT分析、3次元カラーマップ分析、時間波形レコード、クロススペクトラム・伝達関数演算

センサ・ケーブル(米国PCB社製)   PCBセンサ・オンラインストア
・086C03 PCB社製インパクトハンマー
・012A10 BNCケーブル(3m)
・356A32 三軸ICP加速度計(11.4mm角、感度:10 mV/(m/s2
・034K10 三軸センサ用BNCケーブル(3m)

オーダートラッキングキット  価格(税込み ¥1,700,000 ~)

アナライザ O4-FREQ-4   OROS 製品一覧
FFT分析、3次元カラーマップ分析、時間波形レコード、クロススペクトラム・伝達関数演算

次数比分析オプション ORNV-ORD-4

センサ・ケーブル(米国PCB社製)   PCBセンサ・オンラインストア
LTレーザータコメータ *電源供給のためにO4の入力1chを使用します。
・070A11 タコメータ電源供給用コネクタ
・012A10 BNCケーブル(3m)
・356A03 三軸ICP加速度計(6mm角、感度:1 mV/(m/s2
・034G05 三軸センサ用BNCケーブル(1.5m)

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無料セミナー

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事例紹介

発電機のステータコア外側にあるステータ巻線に対するハンマリング事例(別ウィンドウ)