加振器は下図のように幅広いアプリケーション・市場で使用されております。また用途は、大きく分けて「モーダル試験」、「NVH (騒音、振動、ハーシュネス)試験」、「汎用振動試験」の3つに分けられます。
それぞれについて、実際のアプリケーション例をご紹介いたします。
加振器のアプリケーションと市場
モーダル試験
モーダル試験は、構造物の動的特性を解析するための手法のひとつです。構造物の共振周波数(固有振動数)を振動モードとして可視化することで、構造物の振動特性を知ることができます。モーダル試験では、構造物に振動を励起するために加振器を使用します。例1
アプリケーション例:航空機のモーダル試験 GVT(Ground Vibration Testing)概要:航空機は、高飛行時間・高飛行サイクルに耐えられるだけの構造安全性が求められます。そのための評価の一環で、加振器を使って機体の振動モードを同定し、その振動特性を評価することがあります。機器構成例はこちらから。
例2
アプリケーション例:自動車のモーダル試験概要:自動車の快適性や商品価値を向上するためには、車内振動・車内騒音の低減が重要となってきます。振動源(エンジンや駆動系など)から伝達系(振動伝達する各部位)を通して伝わる振動は、伝達系の共振特性を知ることで対策ができることがあります。この共振特性は、加振器を用いて伝達関数を求めることで評価することが可能です。機器構成例はこちらから。
自動車のモーダル試験のイメージ
例3
アプリケーション例:無人航空機の研究(ノースダコタ大学)概要:ADS-B装置(位置通報・管制をする装置)を両翼に取り付けることで、機体の構造特性や飛行特性がどのように変わるのかを研究するために、加振器を使ったモーダル試験を行います。この研究において、The Moda lShop社 SmartShakerが使用されています。
騒音、振動、ハーシュネス試験
騒音、振動、ハーシュネスは自動車の快適性を評価する重要な指標となります。実稼働状態における車体への振動入力を加振器を用いて模擬することで、振動伝達経路解析や騒音評価などの各種NVH試験を効率化することができます。例1
アプリケーション例:自動車のエンジン音・振動が運転者に与える不快感に関する研究(大阪工業大学様)概要:事前に実車走行にて得られたステアリングの振動を、加振器を使って模擬し、運転者が主観的な不快感評価を行います。この研究において、The Modal Shop社 SmartShakerが使用されています。
ハイブリッド車のエンジン自動始動音・振動が運転者の不快感に及ぼす影響について(大阪工業大学 吉田準史教授 論文)
https://www.motorauthority.com/news/1031370_gm-performance-parts-offering-body-in-white-camaro-for-7000 より引用
例2
アプリケーション例:実稼働TPAとCAEの連携による、ロードノイズに対する高寄与ボディモードの抽出に関する研究(大阪工業大学様)概要:実稼働状態を模擬するため、車体モデルの4箇所に加振器で振動を入力し、各パネル振動(参照点)と車内音(応答点)を計測します。これを解析して得られる実稼働時の主成分モードと、CAEによって得られる振動モード(固有値)の相関関係から、車内音を悪化させるのに大きく寄与している振動モードを分析します。
この時、実稼働状態を模擬するための加振器として、The Modal Shop社 SmartShakerが使用されています。
実稼働TPAとCAEの連携による、ロードノイズに対する高寄与ボディモードの抽出に関する研究(大阪工業大学 吉田準史教授 論文)
その他汎用振動試験
一般的な振動試験の用途でも、幅広いアプリケーション・業界で加振器が使用されています。例1
アプリケーション例:骨の強度に関する研究(オハイオ大学)概要:骨の強度を評価する手法の一つであるMechanical Response Tissue Analysis (MRTA)において、加振器を使用します。加振器で人の腕を加振し、その時に計測される力と加速度から伝達関数(FRF)を算出することで、骨の剛性を調べることができます。この加振器として、The Modal Shop社 SmartShakerが使用されています。
例2
アプリケーション例:環境発電デバイスの開発(MicroGen systems, Inc)概要:振動からエネルギーを採取して電力を得ることができるMEMSデバイスを開発しています。このデバイスから取り出した電力により、工場内設備の振動モニタリング装置(ワイヤレス振動センサー)を駆動したり、バッテリーを駆動することができます。このMEMSデバイスの製品開発の中で、振動発生装置としてThe Modal Shop社 SmartShakerを使用しています。
例3
アプリケーション例:乳がんの検出方法に関する研究(シャーブルック大学 カナダ)概要:乳がんを検出するための方法として、Magnetic Resonance Elastography(MRE)があります。このMRE法は、外部から一定周波数の振動を乳房細胞に入力し、その振動が伝播していく様子を画像化する方法のため、外部加振装置が必要となります。この装置として、The Modal Shop社 2025Eを使用しています。
医療系イメージ
例4
アプリケーション例:弾性物質の弾性力に関する研究(マサチューセッツ工科大学)概要:細長い構造体(棒やプレート)に、整列させた複数台の加振器(The Modal Shop社 SmartShaker)を使って動的な力を加え、構造体の弾性特性を調査します。
例5
アプリケーション例:ハチの振る舞いと、花紛採取に及ぼす影響についての研究(ハーバード大学)概要:マルハナバチは、自分の腹部を振動させて花を揺らすことで花粉を採取します。振動の周波数が、花粉の放出量とどのような関係性があるのかを調べる研究をしています。このとき、ハチの腹部の振動を模擬するために、加振器(The Modal Shop社 SmartShaker)を使用します。
例6
アプリケーション例:振動による害虫防除に関する研究(和歌山県果樹試験場うめ研究所//森林総合研究所)概要:害虫は、振動などの刺激により、驚愕反応、擬死、逃避行動や行動停止を示すことがあります。
本研究では、ウメの害虫の1種であるアカマダラケシキスイの成虫や幼虫の行動反応を、どのような振動を与えることで誘発できるのかを研究しています。
その研究において、任意の周波数・振幅で加振ができる加振器(TheModalShop社 SmartShaker)を使用しています。
(論文1)振動が誘発するアカマダラケシキスイ成虫の擬死と驚愕反応
(論文2)振動が誘発するアカマダラケシキスイ幼虫の逃避行動
(ともに和歌山県果樹試験場うめ研究所 貴志学研究員/森林総合研究所 高梨琢磨主任研究員の論文)
例7
アプリケーション例:消費者向け商品の各種試験概要:消費者向けの様々な商品においても、耐久性試験や性能試験などの幅広い用途で、加振器が使用されております。