【モータ評価】モータトルクの計測技術集
1.ヒステリシスブレーキの特性
1.1 ヒステリシスブレーキのドラッグトルクとは? ドラッグトルク vs. 回転数 の特性
ブレーキのドラッグトルクとは、ブレーキに電流を流していないときに物理的な摩擦によって発生するオフセットトルクです。
Drag Torque 英語で引きずりトルクという意味です。
ヒステリシスブレーキは、ボールベアリングに支えられたシャフトと、シャフトに繋がったカップ状のロータがエアギャップの間を回転しています。
ドラッグトルクが発生する要因は、(1)ボールベアリングの摩擦と、(2)カップ状ロータの風切り摩擦です。
モータのトルク試験ではドラッグトルクがあるため、無負荷(ブレーキ電流ゼロ)でもトルクがゼロにはなりません。
理想的なモータ特性は右図で赤点のトルクゼロで回転数が最大となります。
ドラッグトルクがあると、トルクがゼロから始まらず、回転数も低い特性が得られます。
実際のモータ試験では、赤点のトルクゼロを外挿して計算で求めることがあります。
特に無負荷回転数が数万rpm のモータではドラッグトルクの影響が大きくなりますので、無負荷回転数だけを測るためにブレーキを切り離してモータを回す場合もあります。
Magtrol 社製のヒステリシスブレーキの場合、カタログ仕様は1000rpm 時の代表値としてドラッグトルクを記載しています。例えばAHB-5 は 50 mN・m @ 1000 rpm です。 回転数が100rpm より高くなると、実際のドラッグトルクは増大します。増大のしかたは、ブレーキのサイズ・形状、モータとの軸合わせの精度、ベアリングの劣化状態によりますが、1000rpm ごとに1%から5%程度です。
AHB-5 で1000rpm ごとに5%増大として計算すると、
5000rpm 時に60 mN・m (+20%)
10000rpm 時に72.5 mN・m(+45%)
15000rpm 時に85 mN・m(+70%) となります。
実際はドラッグトルクと回転数の変化が直線状ではなく、10000rpm を超えると指数関数的に増大する場合もあります。
モータの試験装置を導入する際は、このドラッグトルクの影響を考慮することが重要です。モータの種類が多い場合、小さなモータに対して大きなブレーキを用いると、ドラッグトルクで定格トルク程度になってしまうこともあります。
測定したいモータの定格トルクが、ブレーキの定格トルクの1/5 より大きくなるようにブレーキを選定することをおすすめします。モータ定格の範囲が広い場合は複数のブレーキを使い分けたほうがよいです。
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モータトルクの計測技術集
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