ClearRead BSにおける胸部X線骨組織透過処理の動作原理
胸部X線画像は多くの肺疾患の検出や診断に対して重要な役割を担っています。特にこの胸部X線画像上における結節(最大径3㎝以下の隆起)影の検出は肺がんの早期発見に貢献し、がんの進行を最前線で食い止めるための重要な防衛線と言えます。しかし結節影を検出する際、胸部X線画像上で結節影と肋骨・鎖骨等骨組織とが重なり、検出が非常に困難になることがあります。
当社が国内で展開するClearRead XRシリーズは胸部X線画像上の骨組織を画像処理によって透過させ、肺組織の視認性を向上させるとともに、経時差分処理や医療用チューブを強調させることにより医師の画像観察を強力にバックアップする画像処理技術です。ここではClearRead XRシリーズのベースとなるClearRead BSによる骨組織透過処理の動作原理を紹介します。
図1:画像処理の流れ
ClearReadが持つ先進的なアルゴリズムを適用する対象は胸部X 線正面像です。対象画像は通常のワークフローで得られるものであり、撮影時における放射線技師やコ・メディカル(医師以外の医療従事者)による特別な操作は必要ありません。また受診者の負担になる追加撮影も必要なく、通常の撮影で得られる画像に対して全自動処理を行います。特別な機器や骨組織透過処理画像を見るための専用ビューアシステムも必要ありません。処理対象の装置としてCR、DRさらにはポータブルX 線撮影装置(可搬性のあるX 線撮影装置)等あらゆる機器に対応しており、院内で撮影される胸部X 線画像に対して利用することができます。
図1は画像処理の流れを簡単に表したものです。まず院内のX 線装置、もしくはPACS(Picture Archiving and Communication System: 院内画像保管、画像表示システム)から処理を実施する画像を取得します。取得される画像はメーカ間、さらに撮影装置の種類(CR、DR、ポータブルやフィルムスキャン等)によってさまざまな特性を持っており、そのままの状態では正確な処理を行うことができません。その為まずは画像の正規化処理を行い、メーカ間の特性を一旦画像から除去します。これらの特性とはグレースケールレンジ、ピクセルサイズ、画像コントラストやシャープネス、さらにはノイズまでもが含まれます。正規化処理の後、肺組織を中心に処理を適用させるために胸郭を抜き出します( 図2)。
図2:胸郭の検出
これにより胸郭外の領域に対しての処理を実施しないようにします。正規化された画像の胸郭を検出し、肺組織領域を決定した後、肋骨・鎖骨の走行推定を行います。この骨組織推定は高度な数学的モデルに基づいて行われ、胸郭内の骨組織のピクセル値を推定します。このモデルは骨組織のパターンや各画素が持つ コントラスト等幾つかの要素を用いて動作します。
その後ニューラルネットワークを用いた骨組織予測により、骨組織を強調した画像(これをBone Imageと呼びます)を生成します。Bone Image生成においては様々なスケールで計算、描出することで複数の骨組織形状のパターンを作成し、最終的なBone Imageを決定します。図3は様々なスケールにおける骨組織形状のサンプルイメージです。
図3:様々なスケールでの骨組織形状例
最適にスケーリングし、高解像度用に調整されたBone Imageをオリジナルの胸部X線正面画像から減算することで、オリジナル画像から骨組織画像を透過させた軟組織のみの画像を得ることができます。最後に、冒頭で除去したオリジナル画像が持っていた特性をレストアすることによって最終結果としての骨組織透過画像を得ることができます。このClearReadによる骨組織透過処理で得られる画像は、元の画像のコントラストを維持する設定の他、骨組織透過画像のコントラストを強調させることも可能です。 これにより画像内の低コントラスト部分を強調し、ノイズ特性を改善させることができます。
以上のようにClearRead BSで得られる胸部X 線骨組織透過処理画像は、実際には院内の専用サーバによって自動処理が実施され、作成された骨組織透過画像は自動的に院内の画像サーバに送信されます。医師が胸部X 線画像を読影する際には元画像に加えて骨組織透過処理画像も同時に観察することが可能であり、結節影検出の支援、判断の一助として使用することができます。勿論画像サーバに保管することにより、読影用の画像ビューアだけでなく、院内のあらゆる端末からこの骨組織透過処理画像を観察することが可能です。
ClearRead は1台の専用サーバを配置することにより、院内で撮影される胸部X線画像全体の品質を向上させ、そのメリットを院内全体で活用することが可能です。