表面改質による硬度変化の測定

金属部品の表面強度を上げるために、ショットピーニングや焼入れ等の様々な手法が用いられています。ナノインデンターでは試料の極表層の硬度・ヤング率を高精度に測定することができるため、表面改質の結果を定量的に評価することが可能です。

測定例1 アルマイト処理による硬度・ヤング率変化

連続剛性測定法(CSM/CSR法)を用いて、表層の硬度・ヤング率のプロファイルを取得しました。装置はiMicro型ナノインデンターを使用しています。アルマイト処理により表層の硬度が大きく上昇していることが確認できます。

硬度の上昇に対し、ヤング率は表面付近でほとんど変化がなく、また深い領域では処理前より低下していることがわかります。硬度とヤング率の比(H/E)は降伏歪みに比例する量で材料の機械特性を評価する上で、一つの指標になると言われています。H/Eの値で比べてみると、試料表面は非常に傷つきにくくなっているとさらに言うことができます。

硬度・ヤング率は連続剛性測定法(CSM/CSR)のプロファイルから求めることができますが、荷重変位曲線からも他の機械特性を取得することが可能です。下図は純アルミとアルマイト処理の試料の押し込みにおける荷重変位曲線です。アルマイト処理の試料では荷重変位曲線の押し込み時に変曲点が見受けられます。

荷重変位曲線の微分は下図の通りです。この信号は試料に破壊(割れ等)が起きると低下します。

金属顕微鏡による観察を行ったところ、アルマイト処理を施したサンプルではクラック(割れ)が確認できました。アルマイト処理により硬度は上昇していますが、割れに対する強さは低下していると考えられます。


純アルミサンプルの圧痕

アルマイト処理サンプルの圧痕