スマートフォン保護フイルムの測定例
スマートフォンの画面に貼り付けるフイルムには、傷つき等から保護するために様々な機能が施されています。今回、ナノインデンターで表面の硬度・ヤング率の違いや回復性、割れ性等の様々な機械特性を評価しました。高分子材料の材料に対し、このような評価がナノインデンターで実現できるという参考にしていただけましたら幸いです。
- サンプル:5種
- A社傷防止(鉛筆硬度3H)
- A社傷修復
- R社傷防止(鉛筆硬度5H)
- R社傷防止+耐衝撃(鉛筆硬度5H)
- R社傷修復
上記に加え、ポリカーボネート板(厚さ500um)を参考のためデータを併記しています。
1. 硬度・ヤング率の測定
- 測定条件
- メソッド:連続剛性測定法
- 圧子:バーコビッチ
連続剛性測定法を用いて、各サンプルの硬度・ヤング率を取得しました。傷防止機能を持つ硬いサンプルについては、深い領域では柔らかい下地(中間層や背面の粘着剤)の影響を受けて見かけ上硬度・ヤング率が下がっているように見えます。
傷つきやすさを表す表層付近の硬度・ヤング率を棒グラフで比較しています。鉛筆硬度の違い通り、硬度・ヤング率に差が出ていることが判ります。
各試験の荷重変位曲線は下図のようになります。
この荷重変位曲線からサンプルの回復性を表す弾性変形仕事率を算出することが可能です。下図は荷重を変化させて弾性変形仕事率がどのように変わるかを取得したものです。傷修復の機能を持つものが、弾性変形仕事率が高いことが判ります。ポリカーボネート板のようなバルク(薄膜ではない材料)の場合は荷重によらず一定ですが、薄膜の場合は下地との兼ね合いで降伏のし方が変化します。
2. 破壊靭性値の測定
傷のつきやすさは硬度・ヤング率以外でも割れやすさを表す破壊靭性値でも表現することが有効な場合があります。キューブコーナー圧子を用いて押し込み試験を行い、SEMで圧痕の観察を行いました。
1000mN荷重の圧痕
2mN荷重の圧痕
破壊靭性値はクラックの長さ等から下記の式で求められます。
E:ヤング率
H:硬度
P:印加荷重
C:クラック長
荷重2mNで求めた結果は下記の棒グラフの通りとなり、鉛筆硬度5Hのサンプルが強いことが判ります。