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インタビュー
2018/04/18

新たに東陽テクニカに加わった自動車メーカー出身のエンジニアに聞く(2)

今後の自動車社会では計測の重要性がさらに増す

—— : 東陽テクニカとのご縁は、7~8年前からということになると思います。

木内健雄(以下、木内):第3期F1を離れた後の仕事のなかで、いろいろなバリエーションのいいハイブリッドシステムをある程度安く作るための技術のベースを整えることができたかな、と思っていますが、それを手掛けている頃に初めて東陽テクニカを訪問する機会がありました。そこでいろいろな取り扱い機器を私や部下たちにプレゼンしてもらったんですが、そこで大きなインパクトを受けました。東陽テクニカは基本的に商社なんですが、理系の人、技術的なことを計測の原理からよく知っていている人が多くて、説明も詳しくわかりやすい。他とはレベルが違う、と強く感じました。

—— : 2012年にはホンダ様の栃木研究所で当社のセミナーを一緒に開催していただいたこともありました。

木内:当時で7,000~8,000 人いた栃木研究所の人間から、一人二人を東京や大阪で開催されるセミナーに出させるより、たくさんの人間に一斉に計測技術を、「何故これがはかれるのか」を勉強させていただける機会が欲しい、ということで、2日間ぶっ通しのセミナーを栃木でやってもらえないか、と東陽テクニカにお願いしたわけです。 ホンダ側でも実行委員を立て、事前にアンケートをとるなどして取り組みました。 その効果もあって、どの講座もほとんど満員の大盛況でした。 東陽テクニカから提示されたセミナー候補の中には自動車に対するサーバーアタックを防ぐためのセキュリティーの内容もありました。サイバーセキュリティーは今でこそ自動車会社にとって重要な内容になりつつありますが、この当時はまだ漠然としか考慮されていない時期でしたので、既にソリューションを紹介できる東陽テクニカの先進性には驚きました。

—— : 2012年にはホンダ様の栃木研究所で当社のセミナーを一緒に開催していただいたこともありました。

—— : 木内さんが描く今後の自動車、モビリティ社会というもののかたちとは、どういったものでしょうか。

木内:歩いている人とモビリティの距離がもっと近くなっていくのではないかと考えています。日本が少子化に向かっている中で、街もそれに合わせたカタチに変わっていく。実際には一人しか乗っていない大きなクルマ、空気運搬車がたくさん走っている状況がこのまま続くのではなく、もう一回、実用性のあるクルマというのは小型車へいくのではないか。この先、5 年、10 年で変わってくるような気がします。ファーストカーはガソリン車で遠距離用、そしてセカンド、サードカーは街と環境にフィットしたコミューターという状況になって、現状それは電気自動車になるんだろう、とも考えます。私もここ4 年ほどコミューターに携わっていましたが、フルスケール車の電気自動車は現状のバッテリーに関する技術を考えると、搭載するバッテリーの量が多くなるから難しい。やはり、小型車に少量のバッテリーでうまくバランスをとることになるんだと思います。100kmくらい走れるバッテリーなら比較的安価に済みますし、充電も短い時間で済ませられます。

—— : 社会の動きと技術進化とが組み合わさって次の時代の“かたち”が決まってくる、ということですね。

木内:そうだと思います。それと、コミューターのような新しい分野に取り組むことが、自動車そのもののエンジニアリングという部分で(自動車メーカーのエンジニアたちにとって)新しい挑戦にもなる、そういう側面もあると考えています。私自身も直近にコミューターに携わっていた経験から言いますと、なにしろ500kgもないような軽い車重ですから、タイヤのグリップを得ることが難しいんです。また一方では、行き過ぎて(カーブで外側に膨れたような場合で)もイナーシャが小さいからすぐ戻ってこられるという特性が、やはりその軽さゆえにある。乗り物としての新しい面白さ、それもコミューターの開発にはあると思います。

ホンダ・栃木研究所でのセミナー風景|モビリティテスティング|東陽テクニカ

ホンダ・栃木研究所でのセミナー風景

医療関係の機器にももっと日本人の感性を活かすことでより良いものを

—— : 燃料電池車(水素燃料電池車)の今後については、いかがでしょう?

木内:水素+電気というかたち、今のハイブリッド車のエンジンの代わりを燃料電池が受け持って、加減速は電気で、という方向にいずれは収斂すると思います。街の有り様を考えれば、排気ガスが出ない方がいいのは確かですから。また、昨今話題の自動運転ですが、私個人としては「操る歓び」というものが失われることには非常に疑問を感じています。ただ、人間にはどうしても見落としなどがありますから、それをサポートするシステム、完全な自動運転というよりはドライビングサポート的な方向に当面は落ち着くのではないかと思っています。自動運転車と、そうでないクルマとの混在というのも想像できない面があります。ただ、これもやはり社会情勢との共存の仕方であって、たとえば人口減少が進んでいる地域などではエリア限定の局地戦的に自動運転の出番もあると思います。

—— : 計測という分野にも新たな進化が求められてくるところかと思います。

木内:今、アドバルーン的に各自動車メーカーがさまざまな先進技術のことを言っていますが、なかなか彼らが言っているようにはなりません。それらの技術を実現させるのには、もはや、一人の技術者のアタマでなんとかなる時代でないのでしょう、要素が多すぎて。だからこそ、システムを複合的に計測して最適解を導くことが重要になる。そこが進化しないと、クルマの進化もないのです。計測したデータを集めて、そのまま出すのもありだと思いますし、それをまとめて最適解を分析して出す、そういうことができる分析・解析の「脳ミソ」の部分を高めるところが今後の計測には重要になってくるだろうと予感しています。

—— : では最後に、東陽テクニカの一員として木内さんが今後やりたいこと、考えていることについて、あらためて一言お願いします。

木内:やはり私が貢献できるのは技術開発の分野だと思いますが、東陽テクニカは取り扱い分野が広く、自動車関係だけでなく海洋分野やメディカルなどもありますから、私にとってはとても広い海に出られる、そういう気持ちでおります。
もちろん自動車と違って知見のないエリアですぐに何かができるとは思いませんし、自分自身の努力が大前提であることも理解していますが、たとえば医療関係者の話を人伝に聞いたりしますと、海外の製品には日本人の感性からすると「使い勝手がもう一歩」というところもあるといいます。そういったところに日本人のアイデアや創意工夫を盛り込んでいけたら、すごく良いものができるのではないでしょうか。自動車以外にもいろいろありそうだ、ということを頭の片隅で考えながらチャレンジしていきたいと思います。

—— : ありがとうございました。そして、これからよろしくお願いします。

代表取締役社長 五味(右)と木内所長(左)|モビリティテスティング|東陽テクニカ

代表取締役社長 五味(右)と木内所長(左)

プロフィール
PROFILE

       

木内 健雄

株式会社東陽テクニカ
技術研究所 所長

昭和56年に本田技研工業株式会社に入社。
同年10月に株式会社 本田技術研究所に配属となり、同社初のEFIエンジンの開発に携わる。
その後モータースポーツ分野(F1)でエンジン開発やアイルトン・セナやアラン・プロストの担当エンジニアとして輝かしい実績を上げた。
電動車両開発、スマートモビリティ開発にも中心的に携わり、常に先端技術を突き詰めてきた。

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