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技術コラム
2018/04/19

自動運転を支える高精度測位GNSS : RTK GPS

当社が販売する自律型運転ロボットは、人が行うことができない衝突試験やポッドテスト(落下試験)で活用されています。これらの試験では再現性の高い結果を得るために高精度な位置制御が要求されます。今回、正確な経路へ誘導するために必要な位置情報取得技術であるRTK(Real Time Kinematic)GPS技術について紹介します。

車両位置制御のためのGNSS

位置情報を取得するための手段としてさまざまな技術が存在しますが、最もポピュラーな位置情報取得技術は、全地球衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)です。
GNSSの代表格であるGPSは空の見える場所であれば、地球上のどこにいても自己位置を把握できる利便性の高い技術として、広く普及しています。他にもロシアのGLONASS、ヨーロッパのGALILEO、中国のBeiDou、日本の「みちびき」などがあります。
測位技術として定着したGNSSですが、自律運転を行う機器にとって完璧な位置情報取得技術であるとは言えません。
GNSSはいずれも、一般的な受信機を使用した場合、その測位精度は、±2~3mです。カーナビゲーションシステムやスマートフォンといった用途の場合、3mの誤差が生じても利用には大きな支障をきたしません。
しかし、クルマであれば、2~3mの測位誤差があれば、走行車線さえも把握できません。ましてや計測用として使用する場合、メートル単位の誤差では使い物になりません。

GNSSの仕組み

GNSSは、電波を使い複数の測位衛星と受信機の距離を割り出し、位置を特定する仕組みです。GNSSには構成や計算方法により、いくつかの方式があります。
単独測位は、カーナビゲーションシステムなどで採用されている最も基本的な測位方法です。GNSS衛星は極めて安定した原子時計を搭載し、高精度の時刻を刻んだ信号(C/Aコード)を乗せた電波を地球に向けて送信しています。GNSS 受信機の内部にも時間を刻む水晶時計が組み込まれており、受信機側で受信したデータを基に衛星から受信機までの電波伝搬時間を計測します。この電波伝搬時間に光速度を乗じることによって、衛星から受信機までの距離が得られます。
また、衛星電波に乗っている軌道情報(アルマナック)から受信機側で衛星の位置が計算されます。3つ以上の衛星の位置と距離を得ることで方程式を解いて、受信機の3次元位置(x,y, z)を求めることができます。受信機は衛星から送信される1.023MHzのC/Aコードを観測しますが、コード長が約300kmに及ぶ1023ビットの情報で構成されますので、1ビットあたり約300mとなります。受信機はこの1ビットを1/100にする分解能を持ちますので、GNSSの精度は±2~3mとなります。
さて、測位衛星から送られてくる電波は電離層や大気中の水分などの影響を受け、遅延が発生し、結果として測位にばらつきを生んでしまいます。
このばらつきの影響を考慮したのが、相対測位です。相対測位は、二つ以上のGNSS受信機を用います。一つの受信機は、固定局(基準局)として緯度経度という絶対位置を割り出した場所(既知点)に固定します。固定局は、衛星から受信した情報と、予め把握している絶対位置との差分を測定し、その差分情報を、別の受信機(測定局/移動局)に伝えます。移動局は自身が測位衛星から受信した情報を、固定局から得た差分情報を元に補正を行うことにより、高い精度の位置を取得します。

GNSSの仕組み|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

GNSSの仕組み

RTK GPSとは

RTK(Real Time Kinematic) GPSとは、相対測位の一種で、リアルタイムキネマティックGPSと呼び、センチメートル級(±2cm)の測位が可能になります。
RTK GPSでは、C/Aコードを地上まで送るための1575.42MHzの搬送波を直接観測します。搬送波の波長は約19cmです。受信機はこれを1/100にする分解能を持ちますので、約2mmの精度で測距します。この測距精度の違いがRTK 測位の高い精度を実現しています。

*東陽テクニカルマガジン 第23号より掲載

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