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技術コラム
2023/01/13

EV(電気自動車)特有の音を「はかる」(1)【再掲】

※本記事は2018年7月24日に掲載した記事の再掲載となります。情報はもとの掲載日現在の情報です。
最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

EVは快適?

クルマの車内にはさまざまな音があふれています。家族や友人との会話、カーオーディオから聞こえてくる音楽やラジオ。そのほとんどは心地よいものですが、中にはロードノイズや風切り音といった、ある程度大きくなると不快に感じる騒音も含まれています。

我々消費者がクルマを新たに購入する際に重視するポイントは、燃費、デザイン、走行性など人それぞれですが、振動や騒音が少ない、運転手・同乗者にとっての「快適性」も車選びにおいて大きな決め手と言えます。快適性を追求する中で特に注目される課題の一つが低騒音化です。世界的に開発が進むEV(電気自動車)では低騒音化が実現され、快適性は格段に向上すると言えるでしょう。

電動化することで「気になる」車室内騒音

車室内の騒音レベルは、走行スピード、路面状態やエアコンの風量など条件によって異なりますが、おおよその目安として一般的なガソリン車の場合、時速60~80kmで70dBA台、低騒音化を図りラグジュアリー感が演出されている高級車で60dBA台です。一方EVの場合、エンジン音がなくなったことで、一般ガソリン車に比べ数dBA~十数dBA程度、騒音レベルが下がっています。

図1:EVとガソリン車の車室内の音レベルの比較(出典:一般社団法人 次世代自動車振興センター「電気自動車の5つの不安にお答えします!」)

図1:EVとガソリン車の車室内の音レベルの比較
(出典:一般社団法人 次世代自動車振興センター「電気自動車の5つの不安にお答えします!」)

電動化によって静粛化されてはいますが、以下のように、従来とは異なる騒音問題が生じています。

エンジン音に埋もれていた騒音の表面化

ロードノイズや風切り音など走行することで発生する騒音や、トランスミッション内で生じるギアノイズ、電動ステアリングのモーター、エアコンのコンプレッサーなど各コンポーネントが稼働することで生じる騒音です。これらは、従来の主たる騒音源であったエンジン音がなくなったことで、相対的に目立つようになってしまった結果、対策を要する騒音の一例です。

人間に不快感をもたらす高周波音の発生

EV特有の、ヒュイーンと鳴り響くインバーターの音が代表的です。その騒音レベルは、エンジン音に比べれば十分低いのですが、人間の耳は4kHz付近の高周波音に対し最も感度が高いため不快に感じてしまうのです。

音を測り、最適な対策を

上記で挙げた通り、EVになっても騒音源は多岐にわたりますが、それらの音源すべてに対策を講じるのは効率が悪く、コスト的にも限界があります。吸音材を多用すればコストがかかる上、車体の重量が増して燃費・航続距離に影響を与えます。また、人間が不快に感じない音には対策を講じる必要はありませんので、騒音計測を実施しその結果を解析することで騒音対策を最適に行うことが重要です。その計測をする際に用いられるのが、計測用精密マイクロホンです。

図2:計測用精密マイクロホンPCB社製ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」

図2:計測用精密マイクロホンPCB社製ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」

実際に精密マイクロホンを使って車室内の音を測る手順を説明します。

計測

  1. 騒音レベルを測りたい場所(運転席付近や助手席、あるいは後部座席における人の耳の位置など)にマイクロホンを配置する(図3参照)。
  2. シャシダイナモによる台上試験やテストコースでの走行試験で、実際に走行した時の音を計測する。
  3. 取得したデータを周波数解析やオクターブ分析し、対策を講じるべき騒音源を特定する。

低騒音化対策

  • 騒音源から人が音を感じる耳の位置までの、音の空気伝搬経路に、吸音材やシール材を配置して音の伝搬を低減する
  • 振動伝達系の構造を工夫し、振動伝搬によって生じる音を軽減、あるいは周波数をシフトする
図3:マイクロホンの配置例(左:運転席付近)

図3:マイクロホンの配置例(左:運転席付近)

図3:マイクロホンの配置例(ドライバー耳位置)

図3:マイクロホンの配置例(ドライバー耳位置)

“ローノイズマイクロホン“の必要性

EV特有の騒音は、エンジン音がなくなったことで快適性を害する音としてクローズアップされた音であり、騒音としては低いレベルの音です。そのため、計測にはより感度が高く小さな音も検知できるマイクロホンが必要となります。当社が販売代理店となって40年近い歴史があるマイクロホン(以下PCB社)のローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」はそのようなニーズを背景に開発されました。

住宅・オフィス・工場などの生活労働環境における「快適性」と同じように、クルマにおいても「快適性」に対するニーズは高まっています。そしてそのニーズが高まるほど、測るべき騒音レベルは下がり、ローノイズマイクロホンはますます需要が高まると考えています。

PCB社について

振動加速度、脈動・衝撃圧、衝突力といった機械的に生じる物理現象を精密に計測するためのセンサを多数供給し、同社の製品は振動・騒音評価、機械構造物の構造解析など幅広い工業製品の開発プロセスで愛用されてきました。

ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」の特長

  1. ノイズレベルの低さ(6.5dBA)
    マイクロホンは自己雑音であるノイズレベルより小さい音は検知できない。より小さい音を検知するためにはより低いノイズレベルである必要がある。
  2. 感度の高さ(450mV/Pa)
    騒音レベルに対しマイクロホンが高い電圧信号を出力できれば計測器側でより精度の高い測定ができる。
  3. 周波数範囲の広さ(10Hz~16kHz)
    ローノイズ・高感度でありながら1/2インチと小型でダイアフラム(受感面)が小さいため、EV特有の高周波の音まで計測できる。
  4. ICP型プリポラライズドタイプ
    従来のローノイズ・高周波マイクロホンである外部分極型は、200V電源ユニットと専用ケーブルが必要だが、ICP型マイクロホンは比較的安価なシグナルコンディショナ(定電流電源)と同軸ケーブルのみで駆動できるため、計測システムを安価に構築できる。

プロフィール
PROFILE

       

石田 雄一

2008年 東陽テクニカに入社以来
機械計測センサ製品の販売を担当

関連ソリューション
SOLUTION

       

ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」

感度が既存のPCB社製のマイクロホンの約10倍の450mV/Paと非常に高く、かつマイクロホン自らが発生する自己雑音レベルは6.5dBAと非常に低いです。

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