Euro NCAP認定メンバー来日講演「ADASアセスメントセミナー」を初開催(2/2)
2022年11月17日、18日の2日間、東陽テクニカ本社にて開催した技術セミナー「ADASアセスメントセミナー(有償)」。Euro NCAP(European New Car Assessment Programme:欧州で実施される自動車安全性テスト)の策定にかかわり、認定試験ラボも持つCSI社(イタリア)から2名の技術者を講師としてお招きしました。後編では2日目の様子をご紹介いたします。
1日目(アセスメントとは、安全運転、衝突回避<車両>、アセスメント実例)の様子はこちら
Euro NCAP認定メンバー来日講演「ADASアセスメントセミナー」を初開催(1/2)
セミナー2日目:衝突回避<歩行者>、Euro NCAPロードマップ2030、計装・設備
2日目は、衝突回避機能の続き、2030年に向けた今後のロードマップ、アセスメントに必要な試験設備の詳細について紹介がありました。
質疑応答では、1日目の内容も含めて活発なやり取りが見られました。
特に欧州のレギュレーション認証の関係性や、Euro NCAPアセスメントの特定プロトコルの詳しい評価ポイント、アセスメント更新頻度などのロードマップに関する質疑応答は興味深い内容となりました。世界各地で自動車を販売する自動車会社、そして関連会社の参加者の皆さまには、日ごろ抱える疑問などを直接お話しいただく機会となりました。
アジェンダ
① 衝突回避-2:衝突回避支援機能―AEB-VRU(歩行者/自転車を検知する自動緊急ブレーキ)
②「Euro NCAPロードマップ2030」:概要、新たに追加されるもの
③ 計装・設備:アセスメントでの使用が承認されている機器や組み合わせ
④ 質疑応答
講義の概要
① 衝突回避-2
1日目に引き続き、導入済みのプロトコルを紹介しました([ ]内は導入年)。
AEB VRU (Vulnerable Road User):交通弱者保護
[2016] 車両軌道にいる大人の歩行者(CPNA25, CPNA75)/ 徒走者(CPFA)/ 駐車車両からの子供の飛び出し(CPNC)
[2018] 歩行者への追突Longitudinal Adult(50% AEB / 25% FCW)/ 自転車への追突Longitudinal Cyclist(50% AEB / 25% FCW)/ 自転車との交差Cyclist Crossing / 夜間テストの導入
[2022] 6シナリオ追加 (2 Cyclist crossing, 2 Pedestrian turning, 2 Adult reverse)
[2023] PTWのシナリオ導入、自転車シナリオ追加、Dooringシナリオ(停止時ドア開きによるPTW,自転車との衝突)導入 / 子供、Farsideシナリオへの夜間テストの追加 / 子供対応を含む後退シナリオの追加
②「Euro NCAPロードマップ2030」
2030年に向けたロードマップの作成は2020年に開始されました。事故の調査や議論を重ね、各産業分野と相談、検討を行い、2022年11月に発表しました。
「Euro NCAPロードマップ2030」は、自動化技術・さまざまな車両/人の安全性・データ通信技術などの社会的背景を考慮しつつ、「センシング」「コネクテッド」「ビッグデータ」「AI」「バーチャルテスト」「試験ツールや設備の開発」などの技術的背景、また、投資費用・知識不足・信頼性といった障壁となる背景の影響も含めながら、事故ゼロ・人の保護・ジェンダー平等・高齢化社会への対応など持続的な都市・社会への貢献を目指すものです。
今後、Euro NCAPのプロトコルは3年ごとに見直され、更新される予定で、この先の10年で、更新・追加される予定の主な内容は次の通りです。
- 安全運転:スピードアシスト、乗員監視、ADグレーディングをスター評価へ統合
- 衝突回避:AEB、ステアリング(C2C、VRU)、車線支援、VILS導入、ペダル踏み間違い
- 衝突保護:衝突時乗員保護、むち打ち予防、歩行者・自転車保護
- 衝突後:救助支援機能、救出・火災・水没、デジタル緊急サービス
他にも、自律走行車両の評価スキーム導入、サイバーセキュリティの格付けに向けた取り組み、Green NCAP(環境性能評価)の統合などの実施が予定されています。
③ 計装・設備
Euro NCAPではISO 19206に基づいて認定されたダミーとプラットフォームを使用します。ISO認証だけではダミーとプラットフォームの組み合わせに関して不十分なため、Euro NCAPの測定ワークショップで認可された組み合わせを用いる必要があります。
こちらに関する情報(TB029とAppendices)は、Euro NCAPのWebサイト内、Technical Bulletinsに公開されています。現時点の最新版は、2022年10月公開の「TB029 – Suppliers List v4.0 Appendices I & II 11-10-2022」です。
https://www.euroncap.com/en/for-engineers/supporting-information/technical-bulletins/
ADAS機能は日々進歩を遂げており、今後も機能の拡張・新技術の導入が見込まれます。
eスクーターなどの新しいダミーターゲットの開発や先進車室内モニタリング、ペダル踏み間違い、コネクテッド技術に対応する計装・設備の検討も行われています。
「ADASアセスメントセミナー」は東陽テクニカとして初めての開催でしたが、参加者アンケートでは、毎年開催を希望される声や、今後具体的に知りたい内容(「Euro NCAPロードマップ2030」、今後のテストケースシナリオ、シナリオ開発の優先順位など)を多くいただきました。改めて、海外の自動車開発の動向を直接お伝えできる有意義な時間になったと感じます。
1日目(アセスメントとは・安全運転・衝突回避<車両>・アセスメント実例)の様子はこちら
Euro NCAP認定メンバー来日講演「ADASアセスメントセミナー」を初開催(1/2)
東陽テクニカでは、自動車開発における最新情報をリアルセミナーやオンラインセミナーで随時ご紹介しております。皆さまのお役に立つ情報を適時提供してまいりますので、お困りごとなどございましたら、ぜひお問い合わせください。
東陽テクニカが提供する海外での「フリート試験サービス」のご紹介
CSI社「フリート試験サービス」
https://www.toyo.co.jp/mecha/products/detail/fleet-test.html
CSI社の「フリート試験サービス」は、世界16か国、17の地域での試験走行実績があり、220項目におよぶ試験基準に対応します。海外のあらゆる地域にエンジニアを派遣し顧客指定のプロトコルで走行試験を実施します。
主な試験
- ADAS を含む車両機能検証
- 市場での AEBS システム機能検証
- 寒冷地での耐久試験
- 高地環境における完成車耐久試験
- 高速走行試験
- 市街地走行試験
フリート試験とは
フリート試験は、複数の車両を同じ時間帯で公道を走行させることで、車両の機能、ADAS機能安全性能、車載インフォテイメント※1、排出ガス規制遵守を確認するテストです。寒冷地などの特殊環境やさまざまな道路状況で数万キロ走行させることで、車両性能や信頼性の確認を行い、世界各国での自動車販売につなげています。
※1 経路案内や道路交通情報の表示、カーオーディオや車載 TV チューナーなどのシステムの総称。
フリート試験が必要とされる背景
近年はADAS/自動運転の高機能化とともに、開発した車両の性能や機能の確認項目が急増し、フリート試験の必要性が高まっています。
EUにおいては、GSR(一般安全規則)法規改定により、車両にTSR(交通標識認識機能:カメラで標識を認識し、ディスプレイに情報を表示)やISA(自動速度制御装置:TSRが検知した制限速度で車速を制限)機能の適用が義務付けられます。これまでは、メーカーが自主的にフリート試験を実施してきましたが、今後はTSRやISAの機能検証のためEU圏で公道や試験走行路上での車両評価が義務付けられ、フリート試験が必須になります。
また、新型コロナウイルス感染予防の観点から海外渡航制限が続くなかでも、海外での走行試験の必要性は変わらず、自動車の開発現場では日本と海外現地との調整に時間を要するなどの課題も出ています。
CSI社では「フリート試験サービス」を、30年以上にわたり世界各国で実施し、その走行試験において各国の自動車メーカーとともに経験を積んでおり、さまざまな計測から車両性能評価を提供します。
東陽テクニカは、この「フリート試験サービス」を自動車メーカーに提供することで、自動車産業の、海外におけるさまざまな地域での安全・安心な自動車提供を支援いたします。
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