Euro NCAP認定メンバー来日講演「ADASアセスメントセミナー」を初開催(1/2)
はじめに
2022年11月17日、18日の2日間、東陽テクニカ本社にて、Euro NCAP(European New Car Assessment Programme:欧州で実施される自動車安全性テスト)の策定にかかわり、認定試験ラボも持つ、イタリアのCSI S.p.A(以下CSI社)から2名の技術者を招き、技術セミナー「ADASアセスメントセミナー(有償)」を初開催しました。
Euro NCAPは、欧州における自動車開発の安全性の評価基準となるものです。今回、欧州での動向を踏まえた最新の技術情報をご紹介するにあたり、参加者の皆さまとの活発な議論が必要であると考え、久しぶりにリアルでのセミナーを開催しました。セミナーの様子を2回に分けてご紹介いたします。
CSI社の紹介
イタリアに本社を置く、自動車産業向けの試験サービス提供会社で、幅広い試験・認証サービスを提供しています。また、欧州における車両の安全性性能評価のためのEuro NCAPの認定試験設備も持っています。さまざまな規格に準拠したアクティブセーフティテストの実行に必要な機器とノウハウを備えており、現在のプロトコルと法律に従いテストすることにより、ADAS(先進運転支援システム)の開発をサポートしています。さらに、Euro NCAPのパートナーメンバーとして、アクティブセーフティプロトコルを開発する技術作業部会にも出席しています。
またAEB C2C(車を検知する自動緊急ブレーキ)、AEB VRU(歩行者/自転車を検知する自動緊急ブレーキ)、ラテラルサポートのテスト手順の開発と適用に携わっており、V2Xと自動運転技術の開発にも取り組んでいます。
セミナー1日目:アセスメントとは、安全運転、衝突回避<車両>、アセスメント実例
1日目は、CSI社より、ADASアセスメントの背景やコンセプト、安全運転および衝突回避に関する機能のレーティングプロトコルの現状と2023年改定内容、CSI社の持つ試験設備や提供サービス実績について紹介がありました。
今回CSI社が紹介した試験設備や提供サービスは、Euro NCAP 認定試験のADASアセスメントのプロトコル評価に必要な設備とノウハウとなっております。この試験設備やサービスは東陽テクニカの提供する「CSI社フリート試験サービス」にも一部含まれております。
詳細は「Euro NCAP認定メンバー来日講演「ADASアセスメントセミナー」を初開催(2/2)」、「東陽テクニカが提供する海外での「フリート試験サービス」のご紹介の項目」をご参照ください。
アジェンダ
① イントロダクション:セミナー講師・CSI社の紹介、セミナー概略
② 予備コンセプト:アセスメントとは ~繰り返し性と再現性~
③ 安全運転:安全運転支援機能、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)、AD グレーディング(運転支援グレード)
④ 衝突回避-1:衝突回避支援機能―概要、AEB-C2C(車を検知する自動緊急ブレーキ)、LSS(レーンサポートシステム)
⑤ ADASアセスメント実績:開発支援サービス、レーティングサービスの実例紹介
講義の概要
② 予備コンセプト
「Euro NCAPの認証試験を、単なる“テスト”ではなく、“アセスメント”と呼ぶ理由は何か?」
ここで言うアセスメントとは、実測性能の繰り返し性および再現性の評価において、条件を満たす特定の環境で実施した試験を表します。一定の試験項目・方法に基づき、同一の設備・機器、作業者による試験によって繰り返し性を、異なる設備・機器、作業者による試験によって再現性を確認します。Euro NCAPのアセスメントでは、ISO規格(ISO 17025)によって試験所を規制し、承認済みのテストツールと方法のみを用いることで、ADAS機能の正確な評価が行えるようになっています。
③ 安全運転
安全運転に関するADAS機能は、公道上での安全運転を促すための継続的な支援を行うものを示します。スピードアシストシステム、乗員監視、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)の項目で、対象車両が具体的にどのような機能を有し、どこまで正確に機能するかが評価されます。
また、安全運転支援機能はADグレーディング評価の基準の一部にもなっています。ADグレーディングは、「ドライバーエンゲージメント」と「車両アシスタンス」のスコアの低い方に、「セーフティバックアップ」のスコアを足し合わせたものとして評価されます。「ドライバーエンゲージメント」には乗員監視やHMI、ドライバーへの情報提供、ドライバーとの連携の機能が含まれ、「車両アシスタンス」にはスピードアシストやステアリングアシスト、ACC(アダプティブクルーズコントロール)性能が含まれます。また、「セーフティバックアップ」にはシステム不具合時の動作、ドライバー無応答時の介入、衝突回避の機能が含まれます。
④ 衝突回避-1
衝突回避に関するADAS機能は、緊急事態が差し迫った状況で、事故の影響を回避・緩和するために作動します。こうした機能に関するEuro NCAPのプロトコル作成は、必ず、技術的な実現可能性と事故論的な社会問題の特定から始まります。事故を分類し、変数を持たせることによって、事故状況を再現するプロトコルを作成していきます。
以下はすでに導入済みのプロトコルとなります([ ]内は導入年)。
AEB C2C:前方に車両がある場合の自動緊急ブレーキ
[2013] Car2Car rear stationary(CCRs) / rear moving(CCRm) / rear breaking(CCRb)
[2018] GVT(3Dバルーンターゲット)導入によるオーバーラップ率の設定
[2020] Car2Car Front Turn Across Path (CCFtap)
[2023] Car2Car Crossing Straight Cross Path (CCCscp) / Front Head on (CCFho)
LSS:車線支援システム
[2016] Lane Keep Assist (LKA) / Lane Departure Warning (LDW)
[2018] Emergency Lane Keeping (ELK) – Road Edge / Oncoming & Overtaking
[2023] Powered Two Wheeler (PTW)導入 – Oncoming & Overtaking
⑤ ADASアセスメント実績
従来、多くの車種の評価に用いられてきた試験方法は、バーチャルテスト→実試験→市場試験の順にそれぞれの段階をクリアしてから次の段階へ進む、というものでしたが、これからの評価試験には、物理的な試験から得られたデータを元に各段階の評価試験内容を検証する双方向のアプローチが取り入れられます。これにより、さらに完成度の高い試験シナリオ・条件でのシミュレーション・実試験を網羅できるようになります。
CSI社がEuro NCAPのアセスメントを実施した実績についても紹介がありました。2021年に5つ星を獲得した車両メーカーには、レーティングだけでなく、公道におけるフリート試験、リアルタイムデータ収集サービスによるモニタリングと解析、夏季・冬季試験やADAS/SAPA(半自動駐車支援)/インフォテイメントの信頼性試験など、統合的な車両開発支援サービスを2017年から提供しています。
CSI社は試験とデータ収集・解析により問題解決への支援を行うとともに、試験の方法論や要求に合わせた試験システムの開発・試験品質の管理を行うことで、車両開発をサポートしています。
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