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技術コラム
2019/12/16

海外技術者のノウハウを紹介!「車載イーサネット試験ソリューションセミナー」レポート

2019年11月28日、東陽テクニカは「車載イーサネット試験ソリューションセミナー~通信プロトコルの検証から物理層の試験、システムテストまで、イーサネットの導入に不可欠な試験について解説~」を開催し、約50名のお客様にご参加いただきました。

自動運転の実現に向け、自動車のネットワークに大量のデータを流す技術が求められており、その要求を満たす手段として現在注目を集めているのがイーサネットです。実車への導入が検討され、各社が開発を進めていますが、通信性能の確保、相互接続性の確立、システムとしての動作の担保など、多くの技術的課題があります。本セミナーでは、海外の自動車業界でイーサネット導入を支援してきた企業の技術者が、豊富な経験に基づき、試験の手法を解説しました。セミナーの第1部と第2部、二つのセッションの概要をご紹介します。

第1部

発表者

Spirent Communications社
Andrei Panainte/ Senior Technical Marketing Engineer

セミナータイトル

「TODAY AND TOMORROW CHALLENGES IN VEHICLE NETWORKS(車載ネットワークにおける現在と未来の課題)」

TODAY AND TOMORROW CHALLENGES IN VEHICLE NETWORKS(車載ネットワークにおける現在と未来の課題)|モビリティ・テスティング|東陽テクニカ

アジェンダ

  • Spirent Communications社の紹介
  • 現在の車載イーサネット
    要件、ユースケース、課題→ソリューション
  • 未来の車載イーサネット
    要件、ユースケース、課題→ソリューション
  • まとめ
  • 質疑応答

概要

現在の車載イーサネット

現在、車載イーサネットに最も求められていることは、機能強化であり、そのためにはより広い帯域が必要となります。そしてもちろん安全性と快適性も重要であり、そのために時間についてさらに厳格になる必要があります。具体的な要件として必要なのは、車載イーサネットの通信規格100Base-T1に準拠すること、イーサネットスイッチ、そして時刻同期です。

車載イーサネットはどんな場面で使われるのでしょうか。主要な例を三つ挙げておきます。まずはインフォテインメント。これはインフォメーション(情報)とエンターテインメント(娯楽)を組み合わせた単語で、音声や映像を使った娯楽要素です。二つ目はOTA(Over-The-Air)による車載ソフトウェアの診断、そして三つ目は、ADAS(先進運転支援システム)のレベル2~レベル3における使用です。

車載イーサネットにおける現状の課題についてもお話しします。まずイーサネットプロトコルの検証です。OPEN Alliance TC8コンフォーマンステストによる検証が必要となります。次にイーサネットスイッチの検証で、複雑なスイッチ要件の仕様とその認証を定めたOPEN Alliance TC11に準拠する必要があります。そして最後に時刻同期です。車載ネットワーク内の複数のネットワークの時刻同期が必要になります。

Spirent Communications社は、これらの課題に対するソリューションを提供します。それが「Spirent Test Center C50」とTechnica Engineering社のユニットとの組み合わせによるソリューションです。ネットワークはさらに複雑になっており、それに伴いハーネスの重量が増えることも課題です。

未来の車載イーサネット

では今後、車載イーサネットにはどんなことが求められるようになるのでしょうか。将来、車が「デバイス」となることにより、機能はより複雑になります。その時にネットワーク要件として必要なのは、1000Base-T1とマルチギガイーサネットです。マルチポートのイーサネットスイッチも必要になりますね。低遅延、冗長性が求められるようになります。

ユースケースにも今後変化が見られることになるでしょう。一つ目は、自己診断と、いわゆるV2X(Vehicle-to-everything)「車とモノとの通信」に車載イーサネットが使われることになります。二つ目は、ADASのレベル3以上です。より多くのセンサが使われることになるため、高い安全性と広帯域が必要となります。そして最後に一番重要なのはバックボーンネットワークにイーサネットが適用されるということです。

将来実現しなくてはならないのは、冗長性・信頼性を高め、遅延を最小化し、不具合の切り出しをすることです。そのための、Spirent Communications社のソリューションには、TSNコンフォーマンステストシステムがあり、テストケースはお客様によって既に検証済みです。

TODAY AND TOMORROW CHALLENGES IN VEHICLE NETWORKS(車載ネットワークにおける現在と未来の課題)|モビリティ・テスティング|東陽テクニカ

質疑応答

Q1:マルチドメインのアーキテクチャを考えていらっしゃいましたが、車でマルチドメインになりますと802.1AS(gPTP)ではなくて、マルチドメインの時刻同期802.1AS-Revが必要になるのでしょうか。

A1:802.1AS-Revは802.1AS-2000からの当然の進化であり、それほどの違いはありません。複数のドメインコントロールがありますし、冗長性はADASのようなシステムでは必要とされていますので冗長性が要件です。802.1AS-Revは複数のタイムドメインでタイムレファレンスの冗長性を図っています。

Q2-1:ADASレベル3のユースケースにおけるイーサネットのカメラデータについて、二つ疑問があります。一つはデータの帯域幅がどうなのかということ、もう一つは時刻の同期です。例えばイーサネットの帯域幅が100MBpsでカメラの画像には不十分だったと想定しましょう。このようなアプリケーションではレイテンシーが極めて重要になります。生データを想定していますか?それとも圧縮したデータを想定していますか?

A2-1:ご質問ありがとうございます。1000BaseT1でADASレベル3を使えるようにするためには、圧縮しない生データをカメラから使えるようにするということを想定しています。1000BaseT1というのは、まだ不十分なのかもしれません。ただ非対称リンクというのは、マルチギガでのオプションも使えるということです。他の工夫も色々して、ということになるかもしれません。そして資料に載せたのは、あくまでもイーサネットアプローチにはこんなアイディアがあると言うことを紹介したかったからです。できるだけプロトコルを規格化していくということが大事です。それによってできる限り複雑性は排除していこうということです。コストも節約できます。ADASレベル3+というのは、カメラから圧縮したデータを使っているのはレイテンシーの問題があるからです。

Q2-2:そうすると時刻の同期が問題になりますよね?三つのカメラの図がありますが、お互いの時刻同期はどうやるのですか?それぞれのカメラが独立して機能すると、どのようにビデオを統合するかということです。タイムスタンプが違っていたら正確なものになりません。

A2-2:イーサネットの時刻の同期というのは、ADASレベル2、3であれば実装事例があります。時刻の同期というのは802.1ASで実証されています。カメラやレーダーでも同様です。ADASだけではありません。考え方としてはローカルクロックが各センサにある、それらが同じ時を示していればよいわけです。同じオブジェクトに同じタイムスタンプが付けばよいのです。時刻の同期は不可欠です。802.1AS-Revについては、冗長性も担保するということです。一つのECUが故障していたとしても、それでも同期を保証できるということになるからです。来年802.1AS-Revを発表することになりますが、その中で扱っていくことになると思います。

第2部

発表者

Technica Engineering社
Erick Parra/ Business Development Director

セミナータイトル

「CREATING THE AUTOMOTIVE FUTURE(自動車の未来を創る)」

CREATING THE AUTOMOTIVE FUTURE(自動車の未来を創る)|モビリティ・テスティング|東陽テクニカ

アジェンダ

  • Technica Engineeringの紹介
    (歴史、パートナー、ビジネスデータについて)
  • 事業内容について
    自動車業界における問題点、ニーズと当社のソリューション
  • 試験と課題
    試験レベルと課題
    車載イーサネットに関する基本的な試験コンセプトと最大の課題について
  • ソリューション
    製品とソリューションについての説明

概要

試験と課題

自動車の開発工程で最も一般的に参照される「V字モデル」についてご存知でしょうか。「V字モデル」では、開発と試験が密接に関わっています。それぞれの開発工程は、別々に評価する必要があり、SiL、MiL、HiLを行った後に、システムインテグレーションテスト、車両レベルでのテストが行われます。

では、車載イーサネットが導入されるとどんな利点があるのでしょうか。イーサネットは既存の技術に比べ非常に広い帯域を持っており、さまざまな通信を短時間で行うことができるようになります。車載イーサネットが初めて実用化されたのは、2008年、OBD(故障診断システム)においてでした。その後現在に至るまで、新しいアーキテクチャにおける車載イーサネットの使用が拡大されてきました。BMWが先導して導入したのを始め、多くの自動車メーカーで採用されています。そのような時代と共に変化する環境の中で、Technica Engineering社は、評価プラットフォームをいち早く提供したり、DUTテストやイーサネットネットワークテストのためのハードウェア・ソフトウェアツールを提供したりしてきました。

車載イーサネットネットワークアーキテクチャにおける課題は、イーサネットの動作についての知識やノウハウが必要になると言うことです。従来のCAN、LIN、FlexRayによるネットワークと車載イーサネットでは、物理レイヤ―やプロトコル、そして機能試験のコンセプトが異なります。そこで、Technica Engineering社のソシューションをご紹介します。

ソリューション

Technica Engineering社は、ハードウェアとしては、車載ネットワークイーサネットに対応したコンバータ―、スイッチベースソリューション、タップ、相互接続性試験機があります。また、ソフトウェアとしては、車載ネットワーク診断、データベース編集・レイアウト、イーサネットトラフィック分析、イーサネットテストツール、イーサネットビデオアナライザなどがあります。こうした製品群がどのように課題に挑むか、10年に及ぶ経験がエンジニアリングコンサルティングサービスとしてどのように有用なのかをご説明します。

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