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技術コラム
2019/05/27

一歩先行くLiDAR ~ADAS・自動運転の開発に~

はじめに

100年に一度の大変革に挑む自動車産業。CASE(C:Connected、A:Autonomous、S:Shared、E:Electric)の中の一つである「自動運転」は、世界中でさかんに開発競争が行われています。自動運転の際に人間の「目」の役割をするセンサは、カメラ、レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging:光による検知と測距)などに分類されますが、対象物の検出はもちろん車両と各対象物との距離を正確に計測できるLiDARの搭載を検討する自動車メーカーが多くなり、注目されています。

東陽テクニカは、ベルギーのLiDAR開発ベンチャー、XenomatiX(ゼノマティクス)社の周辺環境計測システム「XenoLidar」(ゼノライダー)を取り扱っています。

「XenoLidar」で何ができる?

① 3D点群データと2D画像を同時に表示できる

「XenoLidar」はメーカー標準のソフトウェアを使って、3D点群データだけではなく同時に2D画像も表示することができます。図1の左の画像は3D点群データによる周辺マッピングを表し、右の画像は車両前方の実風景を2Dで表したものです。これらをリアルタイムに表示することができ、2つの画面を見比べることでより簡単に対象物を判別できるようになります。

例えば、3D点群データによる周辺マッピングは、“距離”のレンジで表示することはもちろんのこと、“光の反射強度”のレンジでも表示することができます。“光の反射強度”レンジで表示した場合、左の画像のように、光をより強く反射する白線や横断歩道、ガードレールを描写することができます。

昨今のADAS/自動運転開発ではLiDAR、カメラ、ミリ波レーダーなど、複数のセンサを組み合わせる「センサーフュージョン」が行われていますが、「XenoLidar」はLiDARという一つのセンサでありながら、白線などを検知する際のカメラの役目も担うことができます。

図1 「XenoLidar」による公道での実測例(左:3D点群データ、右:2D画像)|モビリティ・テスティング|東陽テクニカ

図1 「XenoLidar」による公道での実測例(左:3D点群データ、右:2D画像)

② 動いているものと静止しているものを区別する

下の動画は「XenoLidar」の「オブジェクトトラッキング」機能(対象物を四角で囲って追跡する)を使った測定の一例です。他社製のLiDARとの大きな違いは、ユーザーがプログラムを作成する必要がなく、標準ソフトウェアに機能として実装されている点です。

動画の中で、人や自転車など動いている物は青色の四角、柵など静止しているものは白色の四角で囲われます。車速と操舵角の情報をcan通信で自動車から「xenolidar」に取り込むことにより、数フレーム前から現時点までのデータをもとに、対象物の軌跡を黄色の線で表示することもできます。「人が運転している自転車」は青色の四角で囲われますが、人が自転車から降りると、「人」と「止まっている自転車」は別々の対象物として区別され、駐車した自転車は静的な物として白色の四角で囲われます。

また、必要に応じて、対象物までの距離・対象物の速度を画面上に表示することもできます。

LiDARをフロントガラスと一体化

LiDARは車両のルーフに搭載するのが一般的なため、天候の影響を受けやすいという問題点があります。雨や雪が降った場合、LiDARから出力されたレーザーが雨粒や雪粒に反射し、測定したい対象物との距離を誤検出してしまうのです。また、LiDARを車内に搭載しようとする場合、レーザーがフロントガラスで減衰してしまうため、測定したい対象物からの反射光を検出することが困難であるという課題があります。

XenomatiX社とAGC株式会社のグループ企業であるAGC Automotive Europe社の両社はこれらの課題に対応すべく、両社の最先端の製品・技術を組み合わせて、自動運転のための“次世代フロントガラス一体型LiDAR”の開発を進めています。AGC Automotive Europe社の自動車用フロントガラス「WideyeTM」の内側にXenomatiX社のLiDARを一体化するものです。車内に搭載できるLiDARは、現在市場には存在せず、画期的な製品となります。

図2「XenoLidar」を自動車用フロントガラス「WideyeTM」の背後に統合したフロントガラス一体型LiDAR|モビリティ・テスティング|東陽テクニカ

図2「XenoLidar」を自動車用フロントガラス「WideyeTM」の背後に統合したフロントガラス一体型LiDAR

「XenoLidar」について

XenomatiX社製の周辺環境計測システム「XenoLidar」は、自動車のルーフや車内などに取り付けレーザーを照射し反射光を受信するまでの時間(TOF:Time of Flight)を計測することで、周辺環境を測定する高精度な光学センサです。世界で初めてLiDARにマルチビームを採用したTrue-solid-state型マルチビーム方式のLiDARとして特許を出願中です。

これまで車載用として製品化されてきたLiDARは、ビーム偏向器を利用した走査型のシステムが主流でした。これに対し、「XenoLidar」で採用されているsolid-state型は可動部と回転機構を持たないため、壊れにくく、自動車での設置場所の自由度も広がります。広義のsolid-state方式の一つであるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)さえも使用しておらず、数千本のレーザーを同時に照射することで一度に多くのターゲットを高空間分解能に検出でき、昼夜・天候を問わず、200m先まで正確に検知・計測が可能です。

図3 周辺環境計測システム「XenoLidar」|モビリティ・テスティング|東陽テクニカ

図3 周辺環境計測システム「XenoLidar」

おわりに

XenomatiX社は、周辺環境計測システム「XenoLidar」の、より広範囲の視野角を有しさらに高空間分解能なモデルのリリースを予定しています。従来の走査式LiDARは高コストでサイズも大きいため、搭載できる車種が限定されてしまいます。XenomatiX社のTrue-solid-state型LiDARは、安心で安全なLiDARの普及を図り日本の自動車産業の革新・発展に貢献できると考えています。

「XenoLidar」の特長

  • True-solid-state型(TOF方式)
    可動部・回転機構を持たないため、小型で壊れにくく、設置場所の自由度が広がる
  • 3D点群データと2D画像のリアルタイム取得
    標準ソフトウェアで2つのデータを同時に取得、対象物の高精細な判別が可能
  • 光の強度マップ出力
    3D点群マップは距離のレンジだけでなく、光の強度のレンジに切り替えることが可能で、道路の白線や道路標識など平たい面の表示も判別可
  • 200mの距離計測能力
    たった20%の反射率で測定が可能で、昼夜・天候問わず正確な計測を実現
  • マルチビーム方式
    125,000点/秒(25Hzデータ出力)と高速で高空間分解能な計測が可能

プロフィール
PROFILE

       

水戸部 涼太

株式会社 東陽テクニカ
機械制御計測部

2011年 東陽テクニカに入社。
バッテリーの充放電装置などの電気化学測定器、半導体や低温・磁気デバイスを評価する物性測定器の営業を経て、現在はADAS/自動運転用のLiDAR製品を担当。
執筆や講演活動も手掛ける。

関連ソリューション
SOLUTION

       

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