元HONDA F1総監督、木内健雄の新たな挑戦。 日本の自動車開発に、新たな活力を与えたい。
2018年7月31日に開催された「ナレッジマネジメントコンファレンス2018」(主催:アクセラテクノロジ株式会社)で東陽テクニカの木内健雄(元本田技術研究所 上席研究員。2017年1月より東陽テクニカ 技術研究所 所長)が特別講演を行いました。
テーマは、「世界で勝つ ものづくり人づくり」。世界を相手に最前線で活躍する人材に必要なものとは…。当日の講演の模様の一部をご紹介します。
※聞き手は、日経BP社の望月洋介様(日経BP社 上席執行役員、日経BP総研 所長)です。
ホンダ社内の伝統的なミーティングスタイル
—— : ホンダ社内では、伝統的な独特のミーティングスタイルがあったとお聞きしています。
木内:ホンダには、みんなのチカラをあわせて、世界に向けて大きなホンダパワーを発信しようとする雰囲気があります。実際、本社の役員室は大部屋スタイルでした。壁も仕切りもありません。いつも全員がホンダを背負い、真剣に議論を重ね、世界に挑戦しているのです。
定例のミーティングも、車座になって行っていましたね。全員が輪になって座って、ミーティングするのです。役職とかは関係ありません。ミーティング参加者全員が一つ輪になり、みんなの顔をしっかり見ながら、真剣に議論を尽くす。そこに徹底的にこだわっていました。結果、いい議論が生まれ、最終的に革新的な案につながったケースも多々ありました。そういうミーティングのスタイルは、ホンダの強さの原動力の一つになっていたと思います。
ホンダF1第二期(1983~1992年)
—— : ホンダF1第二期(1983~1992年)は、圧倒的な勝率でした。その裏側には、ご苦労された部分も多かったのではないでしょうか?
木内:1988年のF1は、16戦15勝でしたね。外から見ると連戦連勝で、すごくいいね、となりますが…当時、私も含め現場は本当に大変でした。勝つのが当たり前のようになってしまっていて…勝ち続けなければいけないのです。今週のレースで勝ったとしても、2週間後のレースで勝てる保証はありません。ライバルチームが、どのようなアップデートをしてくるのか…全く分からないのです。ライバルが、私たちの予想以上のアップデートをしてくる可能性もあります。そのアップデートの上を行くために、世界で勝つために、考えられるアイデアを、つねに全て注ぎ込んでいました。
そんな状況がしばらく続いた中で、先輩のリーダーシップを見て改めて痛感したのは、毎朝自分で考えたアイデアをチームに伝えるなど、チームを引っ張るリーダーの姿勢と能力の大切さです。チームを導く、リーダーのビジョンですね。しっかりとビジョンを示し、現場のチカラを最大限に引き出し、それらをいかに上手く勝てるパッケージとして一つにまとめていくか、そこにはリーダーの強いリーダーシップが絶対必要です。
ホンダでの人材育成
—— : 現場のチカラを最大限に引き出すために大切にされていたことなどありますか?
木内:いい答えを導くために、いいヒントを現場に与えることですね。気づきのヒントです。答えは自分で探させるのです。あとはどうすればいいのか…自分でしっかり考えさせることが大切。いい人材を育てるためには、成功体験がとても重要です。最終的に成功体験につながるようなヒントを、現場に与えることを心がけていました。
ホンダF1第三期(2000~2008年)
—— : ホンダF1第三期(2000~2008年)では、リーダーとして大きな決断もされました。
木内:リーダーに要求されるのは、結果です。私は2002年にF1の現場に復帰する際、3年という期限を自分で設定しました。3年で結果を残す。3年で結果を残すことができないなら、潔くリーダーは代わるべきです。私はそうした考え方を、メディアを通じて表明しました。
期限を明確にして、与えられた時間の中でチームを一つにまとめて、とにかく全力を尽くすことにこだわりました。チームのリーダーには、強い覚悟と決断力が必要なのです。
ハブ結合式シャシダイナモメータシステム「ROTOTEST® Energy™」
—— :さて、長年にわたってホンダで世界最高峰の自動車を追求してきた木内さんが新しいステージとして選んだ、東陽テクニカ。現在取り組まれているテーマについて教えてください。
木内:以前から、完成した実車のパフォーマンス評価システムに関して、思うところがありました。もし実車のパフォーマンス評価を室内でできたら…開発者も研究者も、本当に助かります。
しかし、従来のシャシダイナモは直進のみの走行を前提としていて、ステアリング操作はできません。様々な事態が発生する、実際の走行環境を想定した実車評価はできないわけなのです。
技術研究所で開発しているDMTS®(Driving & Motion Test System)を導入していただければ、新しい手法でのシャシテストが可能となります。DMTS®のダイナモは可動式です。エンジンに負荷をかけた状態でのステアリング操作が可能です。ラボに実際に車両を持ち込んで、実走行に近い状態での環境試験ができるのです。
—— : 室内で、実際の道路を走行しているようなテストができるのですか?
木内:はい。例えば、実車を走行させ、時速40km、時速80kmで、それぞれステアリングを操作できます。室内で公道走行を再現しながら、実車の性能評価ができるのです。この環境を有効活用していただければ、新車研究開発のスピードアップと効率化にも確実につながります。
このラボを通じて、これからの日本の自動車開発を担う、研究者や開発者のみなさんを強力にサポートしていきたいと思っています。
技術研究所で開発しているDMTS®(Driving & Motion Test System)を導入していただければ、新しい手法でのシャシテストが可能となります。DMTS®のダイナモは可動式です。エンジンに負荷をかけた状態でのステアリング操作が可能です。ラボに実際に車両を持ち込んで、実走行に近い状態での環境試験ができるのです。
—— : まずは実際に施設を見学したい、という方にもご対応いただけますか?
木内:はい。もちろん施設見学も可能です。ラボに設置されているシャシダイナモの実演もご覧いただけます。ぜひお気軽に、一度当社のテクニカル&ロジスティクスセンターにお越しください。厚木でお待ちしています。
デモ施設
東陽テクニカ テクニカル&ロジスティクスセンター
〒243-0124 神奈川県厚木市森の里若宮11番1号
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プロフィール
PROFILE
木内 健雄
株式会社東陽テクニカ
技術研究所 所長
昭和56年に本田技研工業株式会社に入社。
同年10月に株式会社 本田技術研究所に配属となり、同社初のEFIエンジンの開発に携わる。
その後モータースポーツ分野(F1)でエンジン開発やアイルトン・セナやアラン・プロストの担当エンジニアとして輝かしい実績を上げた。
電動車両開発、スマートモビリティ開発にも中心的に携わり、常に先端技術を突き詰めてきた。
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