HOME  /  トピックス  /  EV(電気自動車)特有の音を「はかる」 (2)【再掲】
技術コラム
2023/01/13

EV(電気自動車)特有の音を「はかる」 (2)【再掲】

※本記事は2018年12月19日に掲載した記事の再掲載となります。情報はもとの掲載日現在の情報です。
最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

音のマスキング効果

前回の、“EV(電気自動車)特有の音を「はかる」”の中で『EV特有の騒音は、エンジン音がなくなったことで快適性を害する音としてクローズアップされた音』としてご紹介しましたが、今回その点についてさらに掘り下げたいと思います。

EV化によって、ICE(Internal Combustion Engine:内燃機関エンジン)による音のマスキング効果がなくなることで、EV特有の高周波音が表面化します。ICEによるマスキング効果とは下図のようなイメージです

図1:音のマスキング

図1:音のマスキング
(出典:Inter.noise 2014 “Measurement and analysis of the interior noise and the transfer path of acoustic phenomena into the driver cabin of a battery electric vehicle”
https://www.acoustics.asn.au/conference_proceedings/INTERNOISE2014/index.htm

車速と騒音レベルの関係において青色がICEによる騒音、濃淡の灰色がそれぞれロードノイズ、風切り音を表しますが、EV化でICEがなくなったことで電動パワートレーンや補器類の騒音(黄色)が表面化していることを示しています。

この図でもう一つ着目したいのが、黄色い部分が特に低速域で支配的である点です。つまり低速域ではロードノイズも風切り音も発生しておらず騒音レベル全体が低い中で、電動パワートレーンの駆動音が車室内騒音で大きな割合を占めていることを示しています。

低速走行時の高周波音

下図はEVの低速時(時速0~5km)の車室内における騒音レベルと周波数の関係を示した計測結果ですが、8,000Hzより高い周波数でレベルが著しく高くなっている部分が複数箇所あります。

図2:EV車室内騒音(上:周波数評価 下:周波数カラーマップ)

図2:EV車室内騒音(上:周波数評価 下:周波数カラーマップ)
(出典:Inter.noise 2014 “Study of high frequency noise from electric machines in hybrid and vehicles”
https://www.acoustics.asn.au/conference_proceedings/INTERNOISE2014/index.htm

例えば交通渋滞により停止・発車を繰り返す低速運転中はこのEV特有の耳障りな高周波音が頻繁に生じていることになります。乗用車メーカ各社は、この高周波音が快適性を阻害する要因と考え低騒音化対策のために日々努力を重ねていますが、対策が施されるたびにそれまでマスキング効果で目立たなかった新たな騒音が問題視されることになります。

ローノイズマイクの必要性

上記のように明確に高いレベルを示す騒音成分に対策を施すことは当然のことですが、より高い快適性が求められる車種開発では、よほど注意深く聞かなければ気付かないような僅かな騒音も見極めた上で対策を施す必要があります。

個人差はあるものの人間の聴覚は優れたもので、特に高周波音では、電気的ノイズに埋もれて計測結果として表れない程度の騒音でもキャッチし、一度その音の存在に気付くといつまでも気になってしまうことがあります。例えば検査の現場では、計測によって評価するのではなく、聴覚の優れた技能官による官能評価に頼るケースも多々あります。計測センサも、自己ノイズが小さくより僅かな音でも聞き分けられる能力は必要です。

米国PCB Piezotronics社(以下PCB社)の1/2インチマイクロホン「378A04」は、自己ノイズレベルが従来のマイクロホンよりも格段に小さくなっていることが最大の特長です。

図3:計測用精密マイクロホン PCB社製ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」

図3:計測用精密マイクロホン PCB社製ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」

スペック上では、従来の1/2インチマイクロホン「378B02」の自己ノイズレベルがオーバーオール値で15.5dBAであるのに対し、「378A04」は6.5dBAです。この2つのマイクロホンを1/3オクターブ分析して比較したものが次の図です。

図4:マイクロホン自己ノイズ

図4:マイクロホン自己ノイズ

赤枠で囲った5,000Hz以上の高周波域でも6dB~10dB自己ノイズレベルが下がっています。

前述のEVの車室内音の例では、従来のマイクロホン「378B02」でも明確にレベルが高い騒音成分は十分見極められると言えます。しかし、今後さらなる低騒音化が進むと、計測センサとしても「378A04」のようなより精密な計測性能が求められます。

PCB社について

振動加速度、脈動・衝撃圧、衝突力といった機械的に生じる物理現象を精密に計測するためのセンサを多数供給し、同社の製品は振動・騒音評価、機械構造物の構造解析など幅広い工業製品の開発プロセスで愛用されてきました。

ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」の特長

  • ノイズレベルの低さ(6.5dBA)
    マイクロホンは自己雑音であるノイズレベルより小さい音は検知できない。より小さい音を検知するためにはより低いノイズレベルである必要がある。
  • 感度の高さ(450mV/Pa)
    騒音レベルに対しマイクロホンが高い電圧信号を出力できれば計測器側でより精度の高い測定ができる。
  • 周波数範囲の広さ(10Hz~16kHz)
    ローノイズ・高感度でありながら1/2インチと小型でダイアフラム(受感面)が小さいため、EV特有の高周波の音まで計測できる。
  • ICP型プリポラライズドタイプ
    従来のローノイズ・高周波マイクロホンである外部分極型は、200V電源ユニットと専用ケーブルが必要だが、ICB型マイクロホンは比較的安価なシグナルコンディショナ(定電流電源)と同軸ケーブルのみで駆動できるため、計測システムを安価に構築できる。

音響に関するよくある質問(FAQ)はこちらからご確認いただけます。

 

※本記事の内容は、初回公開日現在の情報です。
 製品名や組織名など最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※記載されている会社名および製品名などは、各社の商標または登録商標です。

プロフィール
PROFILE

       

石田 雄一

2008年 東陽テクニカに入社以来
機械計測センサ製品の販売を担当

関連ソリューション
SOLUTION

       

ローノイズマイクロホンアセンブリ「378A04」

感度が既存のPCB社製のマイクロホンの約10倍の450mV/Paと非常に高く、かつマイクロホン自らが発生する自己雑音レベルは6.5dBAと非常に低いです。

詳細を見る
本ウェブサイトではサイト利用の利便性向上のために「クッキー」と呼ばれる技術を使用しています。サイトの閲覧を続行されるには、クッキーの使用に同意いただきますようお願いいたします。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。