March 31, 2023
バージョン管理とは?
*本記事は Perforce Software社の以下のブログ記事(2024年9月13日時点)の参考訳です。
What Is Version Control?
*ブログの内容は更新されている可能性があります。
バージョン管理ソフトウェアとは何か。まず基本的な話として、「バージョン管理」とはファイルの変更を記録・管理するプロセスを指し、このプロセスの自動化を助けるのが、バージョン管理ソフトウェアです。しかし、これはバージョン管理ソフトウェアの基本的な機能に過ぎず、これだけではその重要性を語り切ることはできません。
目次
バージョン管理とは?
バージョン管理とは、デジタルアセットの変更を記録し、管理するプロセスを指しますが、その方法は様々であり、ファイルの命名規則や決められた整理の仕方を守るというのも、その方法の一つといえます。しかし、「バージョン管理」の話題が出た場合、大抵は「バージョン管理ソフトウェア」や「バージョン管理システム」のことを指していると考えてよいでしょう。これらのツールは、並行作業の支援や重要な作業データの消失を防止するために設計されています。
(注:「バージョン管理」は「ソース管理」と同義で使われることが多くありますが、後者はソースコードの管理に特化したものになります。)
バージョン管理ソフトウェアは、あらゆる業界の開発チームにとって不可欠であり、コードやファイルの変更を記録・管理できるだけでなく、複数のチームメンバーが同時に同じプロジェクトで作業することを可能にしてくれます。優れたバージョン管理システムを使うことで、より良いコラボレーションとスピーディーな開発を実現し、そしてデジタルアセットの変更履歴を完全な形で記録しておくことができます。
では、バージョン管理システムとは何か、その機能と重要性について詳しく見ていきましょう。
VCS(バージョン管理システム)とは?
バージョン管理システム(VCS)またはバージョン管理ソフトウェアは、バージョン管理のプロセスを自動化するものです。ファイル単体や複数のファイルに対する変更を記録できるため、手動での管理や、管理のためのカスタムスクリプトを用意などの必要がなくなります。バージョン管理システムには、コードやファイルの変更履歴が全て保持されるため、必要に応じて、以前のバージョンに戻ることもできます。
バージョン管理ソフトウェアにおけるブランチとマージ
ブランチは、バージョン管理システムの主要な機能の一つです。以下の図は、アセットに対して様々な変更や分岐が行われた様子を示しています。「メインライン」とも呼ばれる中央の線がアセットの進化の過程を示す樹の幹のようなイメージで、そこからの分岐が、枝のように考えられています。
一般的なバージョン管理システムでは、これらの分岐を「ブランチ」と呼んでおり、ブランチ上で行われた変更によって意図しない問題が発生した際に、その問題からメインラインを保護する目的で利用されます。このようにメインラインとブランチの独立性を保っておくことは、プロジェクト全体の完全性を損なわないために重要な措置です。各ブランチ(およびメインライン)に変更が加えられていくにつれ、ブランチとメインラインの間の分岐や差異は大きくなっていきます。ブランチ側で行った重要な作業を反映するためには、ブランチでの変更を元のブランチ(通常はメインライン)に統合する必要があります。これを、一般的に「マージ」と呼びます。
このマージを行う際に、統合するブランチ間で競合が発生することがあります。プロジェクトを問題なく進行するためには、このような競合を解消する必要があります。メインライン内のアセットを保護し、ブランチ側での問題を引き継がないようにするために、不可欠な作業です。バージョン管理の理念では、メインラインを常に「良好な」状態に保つことが重要とされます。これは、これまでの作業をベースにした開発や意図せず生じた誤動作の修正(バグ修正)を行うためには、適切に管理されたメインラインからブランチを作成できるようにしておく必要があるからです。
■ 参考記事: Branching Best Practices
バージョン管理ソフトウェアが重要な理由
バージョン管理を行うことは、コードやファイル、その他のデジタルアセットの変更を記録・管理しておくうえで非常に重要なことです。 複数のチームメンバーが関わるアセットや開発プロジェクトでは必ず、バージョン管理ソフトウェアを使用しておくとよいでしょう。
また、バージョン管理ソフトウェアに求められるのは、ファイルの記録や管理だけではありません。製品の開発やリリースをスピーディーに行うことができるようサポートすることも求められます。これは、何かしらの変更が加えられたタイミングで、最新バージョンのテストやビルドが実施される、DevOpsワークフローにおいて特に重要です。優れたバージョン管理システムは、変更によって競合などの問題が起こる可能性がある場合、その変更がプロジェクトのメインラインに入る前に検知し、知らせてくれます。そのため、開発者はその時点で問題を解消し、後の工程に持ち越さないようにすることができます。
適切なバージョン管理ソフトウェアを使用することで、以下のようなことが可能になります。
- プロジェクトの可視性を向上できる
- ファイルの競合や無駄な作業を最小限に抑えられる
- 世界中のチームとコラボレーションしやすくなる
- 製品のリリースを高速化できる
バージョン管理ソフトウェアを使用する主なメリットとは?
複雑なプロジェクトの管理にバージョン管理システムを利用することには、コラボレーションの改善から開発の高速化まで、様々なメリットがあります。バージョン管理システムと言っても、色々な種類がありますが、以下に一般的なメリットをまとめてみました。
バージョン管理で、「信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)」を実現
バージョン管理システムを使用する主なメリットの一つとして、チーム全体の「信頼できる唯一の情報源」を作れることが挙げられるでしょう。これにより、チームの全員が共通の場所にアクセスして、同じデータ(ファイルやコードなど)を使用することができるようになります。
バージョン管理で、完全なファイル履歴を保持し、可視性を向上
優れたバージョン管理システムでは、全てのファイルに対して誰が、いつ、どのような変更を加えたかを確認できます。完全な監査履歴を保持するバージョン管理システムは、ガバナンス(Governance)、リスク(Risk)、コンプライアンス(Compliance)などのGRCや法規制に関連した要件を満たすうえで欠かせません。そして、このようなログ情報は、自動車、航空宇宙、医療機器、半導体業界において特に重要になります。
さらに、バージョン管理ソフトウェアは可視性を向上させることができます。つまり、現在、誰がどのファイルを操作しているかが分かるため、作業の重複やファイルの上書きを防止するのに役立ちます。また、問題が発生した場合でも、全てのファイル履歴が保持されているので、簡単に以前のバージョンに戻すことができます。
バージョン管理で、並行開発を実現
開発プロジェクトが複雑化するにつれて、コードやファイル、さらには製品全体を複数のバージョンにわたって管理する必要が出てきます。また、多くのチームメンバーが同時に、同じプロジェクトに携わることもあるでしょう。
優れたバージョン管理システムは、開発を並行かつ同時に進めることを可能にしてくれます。複数の開発者やデザイナーが同じファイルセットで作業する際に、作業の重複や、他のメンバーの作業を誤って上書きしてしまう心配がなくなるだけでなく、同時進行での作業が可能になることで、製品をより早く市場に投入できるようにもなります。
例えば、あなたが高性能なインターネット接続セキュリティカメラのIoTシステム化を担当しているとしましょう。その製品ライフサイクルにおいて、それぞれに異なるチップを持つ、10種類のカメラを使用し、チップごとに異なるソフトウェアが必要になるとします。
適切なバージョン管理ソフトウェアを使用すれば、各カメラのチップやOSの機能に応じたコードを複数のバージョンに分けて管理することができます。上で示したような図の例で考えると、10種類のカメラの開発を別々のコードラインブランチで進め、共通の要素や再利用可能な要素があれば、メインラインにマージしておくというようなイメージになるでしょうか。このようなコードの再利用の概念が、優れたバージョン管理システムにおいては非常に重要になってきます。
このように管理していれば、カメラに対するハッキングを防止するための重要なセキュリティパッチを適用する必要がある時も、簡単に対応できます。なぜなら、影響を受けるコードを即座に特定し、必要な変更を行い、パッチを展開することができるからです。
バージョン管理で、チームのコラボレーションを改善
誰がどのファイルで作業をしているのかが把握できる。同時に同じプロジェクトで作業できる。この2つの実現が、より良いコラボレーションには欠かせません。携わるメンバーが多い、大規模で複雑な開発プロジェクトにおいて効率的に共同作業を行うためには、バージョン管理が不可欠になります。
さらに、企業活動は優秀な人材がいてこそ成り立つものです。そのため、拠点を含め、様々な場所で働くチームメンバーたちが、必要なデータにグローバルにアクセスできる仕組みを用意する必要が出てくるかもしれません。適切なセキュリティおよびID・アクセス管理の下、「信頼できる唯一の情報源」に基づいて作業できる環境を整えることが、ビジネスの成功の鍵となります。適切なバージョン管理システムがあれば、各チームメンバーがプロジェクトの最新データに簡単にアクセスし、作業を進めることができます。
バージョン管理で、開発プロセスを自動化
今日の開発チームにとって、品質向上と生産性の向上は最優先事項です。そして、これらの達成には、テストやデプロイメントなどのタスクの自動化が必要になります。
ビルドやコードレビューを自動で行う、継続的インテグレーション(CI)はソフトウェア開発における標準的プロセスになっていると言えるでしょう。
一方、半導体などのハードウェア開発では、次のような自動化が考えられます。
- フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によるテスト
- シミュレーション検証システムや合成システムとの統合
ここで使用されるFPGAや検証・テストシステム自身も、非常に大規模なデータファイル含め、バージョン管理しておかなくてはなりません。また、小さな変更であっても記録・管理しておく必要があります。つまり、バージョン管理ソフトウェアはIP(知的財産)管理の中心となるものです。適切なものを使用しさえすれば、1日に数百万のファイルが関わる、数百万のやりとりでも自動で処理することが可能になります。
バージョン管理ソフトウェアの仕組み
既に説明した通り、バージョン管理ソフトウェアは、バージョン管理のプロセスを自動化するものです。ファイルやファイルセットに対して行われた変更を自動的に記録し、その履歴を管理します。
ここでは、一般的なバージョン管理ソフトウェアの仕組みを簡単に説明しておきましょう。
- まず、ファイルとその全てのバージョンの保存場所となるリポジトリが作成されます。
- そのリポジトリに保存されているファイルに変更が加えられると、その変更は自動的に記録され、何が、いつ、誰によって変更されたかが分かる状態になります。
- 作業を行いたいファイルがある場合、そのファイルをチェックアウトしてから、変更を行い、その変更をリポジトリに対してコミット(チェックイン)します。このようにファイルをチェックアウトし、他のチームメンバーにそのファイルが作業中であると分かるようにすることで、作業が上書きをされることを防止します。変更がチェックインされると、そのファイルの最新バージョンが他のチームメンバーにも利用可能な状態になります。優れたバージョン管理ソフトウェアでは、作業中のファイルを「ロック」して、他の変更が加えられるのを防ぐことができます。この機能は、簡単にマージができないような、大きなバイナリデータを扱う場合に特に重要になります。
- 例えば、新しい機能を試してみたい時など、他のチームメンバーに影響を与えることなく、プロジェクトに変更を加えたい場合は、新しいブランチ(プロジェクトのコピーのようなもの)を作成することができます。このブランチを使えば、独立した状態で変更作業を行い、必要な変更だけを後からメインブランチにマージすることができます。
バージョン管理の仕組みについてもう少し知りたい方は、以下のビデオをご覧ください。
バージョン管理システムの種類
ここからは、バージョン管理システムにはどのような種類があるのかを見ていきましょう。
バージョン管理システムには主に、集中型と分散型の2種類があります。集中型のバージョン管理システムでは、全ての変更が一か所に保存され、最新のファイルに即座にアクセスできる仕組みになっています。一方の分散型では、各チームメンバーが自身のPC上にある、リポジトリのローカルコピーに対して変更を行う形になります。特定のユーザーが変更を素早く実施したり、オフラインで作業することができます。
集中型バージョン管理
集中型バージョン管理システム(CVCS)では、全てのファイルの全てのバージョンおよび変更が、一つのサーバーに保管されます。このタイプでは、ユーザーはファイルをチェックアウトして作業を行い、その後、変更したものをサーバーにチェックイン(コミット)することができます。また、プロジェクトの別ブランチを作成し、単独で作業した後、メインブランチに戻す(マージする)ことが可能です。全ての変更(コミットやマージ)は中央のサーバーに同期されます。
集中型VCSの主な利点としては、全てのユーザーが最新のファイルバージョンにすぐにアクセスできることが挙げられるでしょう。これにより、作業が他のメンバーによって上書きされたり、作業の重複が発生したり、マージできないファイル(バイナリファイルなど)に変更を加えてしまい、作業が無駄になったりするリスクを大幅に減らすことができます。
分散型バージョン管理
分散型バージョン管理システム(DVCS)では、各ユーザーがリポジトリのコピーをダウンロードし、ローカル(自分のマシン)でファイルに変更を加えることができます。メインのリポジトリは存在しますが、これは全てのファイルやその変更内容を保管するためのものではなく、ファイル間の差分だけ(バイナリファイルの場合は除く)を保管するためのものです。
このタイプのバージョン管理には、一部の集中型システムに比べて、ユーザーが変更のコミットが素早くできるという利点があります。また、オフラインで作業ができるという違いがあります。
バージョン管理システムの例
市場には多くのバージョン管理システムが出回っており、無料のものもあれば、商用のものもあり、それぞれに長所や短所を持っています。以下に、利用者の多いバージョン管理ツールをいくつか簡単にご紹介します。
- Helix Core
- 代表的なバージョン管理システムの一つで、Perforce Software社が提供する集中型のバージョン管理システム。ゲーム開発者の間で特によく使用されているが、メディアやエンターテイメント、半導体設計など、その他の業界でも活用されている。誰がどのデータを使用中か把握できるため、チームでの共同作業に便利。重要なデータの上書きを防止するためのロック機能も備えている。5ユーザーまで無料で使用可能。
- Git
- 開発者に非常に人気のある分散型管理システム。オープンソースであるため、無料で使用できる。ブランチ作成が簡単。ただし、ファイルサイズとリポジトリサイズには制限があるため、小規模なプロジェクト向け。
- SVN
- Apache社が開発したオープンソースのバージョン管理システム。無料で使用可能。集中型バージョン管理システムで、並行開発プロセスへの対応が優れているが、ブランチやマージの機能は弱め。
- ClearCase
- 別名「IBM Rational ClearCase」。バージョン管理に使用される、ソフトウェア構成管理ツール。有料の集中型システム。
- Mercurial
- 2005年にリリースされた無料の分散型システム。Gitのような複雑なシステムに比べて、初心者にとって使いやすく、簡単だとされている。
- Plastic SCM/Unity Version Control
- Codice Software社によって開発されたバージョン管理ツールだが、現在はUnity社が提供元となっている。有料の分散型システム。
- TFS
- Microsoft TFS(Team Foundation Server)は、バージョン管理、問題のトラッキング&レポート、アプリケーションライフサイクル管理のためのツールであり、現在はAzure DevOps Serverに名称変更されている。
主要なバージョン管理システムの違いについて詳しく知りたい方は、以下のリンク先のチャートをご参照ください。バージョン管理システムを比較する >>
Gitのソース管理とは?
Gitのソース管理ツールはオープンソースです。つまり、誰でも利用することができます。分散型の無料で使えるバージョン管理ソフトウェアとして、最も人気のあるツールの一つです。
しかし、Gitのソース管理ツールにはいくつかの欠点もあります。それは、セキュリティが不十分で、スケーラビリティにも限界があるという点です。また、大きなバイナリファイルやアートファイルのバージョン管理が必要になる、アーティストやデザイナーなど、開発者以外のチームメンバー向けには設計されていません。さらに、Gitだけで「信頼できる唯一の情報源」を実現するのは簡単なことではありません。そのため、Gitを使用しているチームの多くは、自分たちのニーズに合わせて、他のツールと組み合わせて使用しています。
Helix Coreバージョン管理とは?
前述の通り、Helix CoreはDevOpsソリューションのリーディングプロバイダーであるPerforce Software社が開発した集中型のバージョン管理システムです。Gitをはじめとする他のバージョン管理システムとHelix Coreの異なる点は、以下の通りです。
- 開発者からアーティストまで、チーム全体にとっての「信頼できる唯一の情報源」として機能
- 世界中にチームメンバーが分散して作業するような環境にも対応。10,000以上の同時コミットを行っても、超高速なパフォーマンスをキープ可能
- エンタープライズレベルのセキュリティと、ファイル/IPアドレス単位での詳細なアクセス制御
- 「ストリーム」という高度なブランチ機能を提供
- パフォーマンスを犠牲にしない、優れたスケーラビリティ
Helix Coreは無料で使用可能
バージョン管理ソフトウェアを使用するメリットを、無料で手に入れませんか?Perforce Helix Coreは、5ユーザーまでなら、無料で使用可能。機能制限もありません。小規模からスタートして、後からスケールアップするもよし。小規模チームであれば、ずっと無料で使用できます。
Helix Coreを導入すれば、並行開発がしやすくなり、タスクの自動化や変更履歴の管理も効率化されます。また、高い可用性を確保し、問題が起こった際に迅速に復旧できる体制を整えることができます。
今すぐ無料のバージョン管理ソフトウェアを使ってみませんか?
Helix Coreは5ユーザーまで無料でご利用いただけます。Helix Coreについて詳しく知りたい方はこちらをご覧いただくか、以下までお気軽にお問合せください。