ノーベル物理学賞受賞の裏に先進テクノロジー
“はかる”技術で青色LEDの開発をサポート
(掲載日:2018年12月19日)
20世紀中の開発は不可能と言われた青色LED
今では家庭でも電球や蛍光灯の代わりにLED照明が広く使われるようになりました。しかし白い光を出す照明用のLEDも、青色LEDなくして実現はかないませんでした。
1960年代の初めに最初の赤色LED、続いて黄緑色LEDが実用化されました。しかし青色LEDの開発は困難を極め、20世紀中の実現は不可能とまで言われていました。光は色によってそれぞれ持っているエネルギーが異なります。赤色と青色の光を比べると、赤色の光の方が低く、青色の光の方が高いエネルギーを持っています。この高いエネルギーを持つ光を出す青色LEDと黄色の蛍光体を組み合わせることで初めて、高輝度で省電力の白色光源を安価に作り出すことができるのです。ノーベル物理学賞でもこの点が高く評価されました。そして、青色LEDの実現により、私たちの生活にもたくさんの恩恵がもたらされることとなりました。
白色光の仕組み
開発を支援した、東陽テクニカの半導体試験装置
この世紀の開発を成し遂げた赤﨑教授、天野教授、中村教授の3名全員が使っていた測定器に、東陽テクニカが開発したホール効果測定装置「レジテスト※1」があります。半導体試験装置の一種です。
LEDは半導体と呼ばれる物質でできており、半導体の中を電子(電気)が流れ、電気のエネルギーが光のエネルギーに変わります。半導体から出る光のエネルギーの高さは、半導体の材料である元素の種類と結晶の構造で決まります。つまり半導体から出る光の色は、光のエネルギーの高さによって決まると言えます。
青色LEDの開発が進まなかったのは、高いエネルギーを持つ青い光を出す半導体を作る難しさにありました。レジテストは半導体の品質を決める要素である、内部の電子の数と移動の速さ、エネルギーレベルを、それまでの測定器と比べて桁違いの精度で測ることができます。目に見えない電子の動きを正確に測ることは新しい半導体の開発サイクルを速め、青い光を出す半導体の開発に大きな役割を果たしたのです。
※1:測定の感度を従来の100倍以上に向上させた、東陽テクニカ独自のAC(交流)磁場によるノイズ除去技術を搭載したホール測定装置。
LEDの発光の仕組み
半導体試験装置、レジテスト誕生までの道のり
1980年代は、青い光を出す半導体を作るための元素の種類と結晶の構造は既にいくつかの候補が考えられていましたが、品質の良い結晶を作る方法が確立されていませんでした。そこで行われていたのが、試作品を作っては測定してでき映え(品質)を評価し、さらに改良を加えて試作品を作るといった、堅実ではありますがとても地味な方法でした。そしてこの方法は、試作した半導体の品質を正確に測ることが必要であるにも関わらず、当時はこの測定すら満足に実現できていませんでした。半導体の品質を測る方法として、ホール効果測定という技術を用いるアイディアは当時からありましたが、開発の初期の段階では、「ホール効果信号」はとても小さくノイズだらけで測定器で測ることは困難でした。
東陽テクニカはこのノイズを除去し、小さなホール効果信号を測ることのできる「ACホール測定法※2」を考案し、青色LEDの材料となる半導体の評価試験に役立つホール測定装置「レジテスト」の開発に成功したのです。
※2:「ホール効果測定装置及びその方法」の名称で株式会社東陽テクニカが特許を保有する技術です。
3教授の研究開発を支えた、ホール測定装置「レジテスト(ResiTest)」。
最先端の研究開発と共に歩む
レジテストの核となるACホール測定法は、世界最先端の計測機器が身近にありいつでも使うことができる、当社ならではの環境が生み出したものです。そして何よりも、後にノーベル賞を受賞されるような革新的な研究開発者の方と課題を共有し、刺激を受けることができたのは大変貴重な体験です。そんな方々の情熱に打たれ、研究開発が技術的な壁に突き当たった時に抱いた “何とか支援したい”という強い思いが、イノベーションを生み出す原動力となったのです。
東陽テクニカはこれからも最先端の“はかる技術”で研究開発者の方たちを支援していきます。