電波望遠鏡で地球をはかる
宇宙からの電波を観測して取り組む災害予知
大地震予知に活躍する次世代の電波望遠鏡
当社は、日本で唯一の次世代型VLBI技術を使った電波望遠鏡(直径13.2メートルのパラボラ型アンテナ)を国土交通省 国⼟地理院の石岡測地観測局(茨城県⽯岡市)に設置しました。電波望遠鏡自体が設置されている位置(経度・緯度)をミリメートル単位の高い精度で測定できることが最大の特長です。国土地理院は、このVLBI技術を用いて、地球上の日本の位置を決定しています。得られた位置情報は⽇本列島の状態を知る基本データとなり、さまざまな機関に情報が提供されます。
その位置の測定方法とは、宇宙に存在するクエーサー(Quasar:非常に明るく、強い電波を放出している天体)を電波望遠鏡で観測し、これらの天体を基準点として地球上にある電波望遠鏡の位置を算出します。これにより、日々変化する地球の自転速度や自転軸の傾き、そして大陸プレートの変動を高い精度で測定することができます。また、地殻の動きをとらえたデータは、大地震の発生や火山の噴火活動の予測などに役立ちます。
石岡測地観測局の全景(右側の白いパラボラ型アンテナが電波望遠鏡)
出典:国土地理院ウェブサイト(https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/vlbi-igos.html)
電波望遠鏡による天体観測で、
地球上での位置をミリ単位で知る
このVLBI測定技術を使ったプロジェクトには世界20カ国以上が参加しており、地球規模で観測できるように各国でVLBI電波望遠鏡の設置が進められています。日本国内では、⽯岡測地観測局に設置した電波望遠鏡を基準に各観測地の位置や⾼度が決められることになります。クエーサーが放つ電波が地球上に到来するまでには膨大な年月が経過していますので、非常に微弱な電波となっています。地上では既に私たちが利用している多種多様な電波が飛び交っていますので、このクエーサーからの電波をとらえることは大変難しく、そのために直径13.2メートルのパラボラ型アンテナが必要となります。
従来技術の電波望遠鏡を使った測定では位置精度がセンチメートル単位で、測定した位置を決定するのに最低1週間かかりましたが、次世代の電波望遠鏡は24時間以内にミリメートル単位の精度で位置を決定することができます。
VLBI電波望遠鏡のメンテナンス風景(石岡測地観測局)
クエーサー(イメージ画像)
なぜ高精度な位置データが防災に役立つのか?
電波望遠鏡の位置を長期間にわたり観測すれば、地球規模で起こるさまざまな地殻変動をとらえることができます。その代表例が大陸のプレート運動です。地球表面はプレートが十数枚に分かれてマントル上で動いており、これが巨大地震や火山噴火の原因となっています。
1985年、長い距離を精密に測ることができるVLBI技術によってプレートの動きが初めて実測され、最大で年間数センチメートルという速度で動いていることがわかりました。実際のプレートの観測例として、米国ハワイ島と日本の距離は年間約6センチメートルずつ近づいているという計測結果が得られています。
地殻や海⾯の変動を精密にとらえることは、地球規模で起こる地震や津波、火山噴火、海水面変動、洪水などの災害を予知し、地震発⽣のメカニズムや地球温暖化などの現象解明にも役⽴つと期待されています。
プレート運動の模式図 出典:国土地理院ウェブサイト(https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/vlbi-goal.html)
日本では、いつどこで大きな地震が起こっても不思議はありません。東陽テクニカは、“はかる”技術で防災や災害復興を支援しています。
※VLBI=Very Long Baseline Interferometry(超長基線電波干渉法)