第61次南極地域観測隊で行われる、観測船「しらせ」での海底地形の調査に、当社のエンジニアの柴田 成晴(しばた みちはる)が参加します。南極という過酷な環境での調査の様子や、隊員ならではの日常など、柴田隊員が南極の風景をお届けします。
第61次南極地域観測隊で行われる、観測船「しらせ」での海底地形の調査に、当社のエンジニアの柴田 成晴(しばた みちはる)が参加します。南極という過酷な環境での調査の様子や、隊員ならではの日常など、柴田隊員が南極の風景をお届けします。
第61次南極地域観測隊で行われる、観測船「しらせ」での海底地形の調査に、当社のエンジニアの柴田 成晴(しばた みちはる)が参加します。南極という過酷な環境での調査の様子や、隊員ならではの日常など、柴田隊員が南極の風景をお届けします。
第61次南極地域観測隊で行われる、観測船「しらせ」での海底地形の調査に、当社のエンジニアの柴田 成晴(しばた みちはる)が参加します。南極という過酷な環境での調査の様子や、隊員ならではの日常など、柴田隊員が南極の風景をお届けします。
3月19日の昼過ぎに、61次夏隊と、1年を超える南極での滞在を終え帰国する60次越冬隊を乗せた観測船「しらせ」が無事にオーストラリアのシドニーに入港しました。例年であれば少し身体を休めたり、事務手続きを行ったりするためにオーストラリアに数日滞在するので観光などもできるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響で出入国に制限がかかる恐れなどもあり、全く外出することもなく、翌日早朝の飛行機で日本へと向かうこととなりました。仕方がないことですが、少し慌ただしいですね。
まだ日が昇る前に慌ただしく帰国。「しらせ」ともしばしのお別れ。
61次隊では海洋観測が大きなミッションのため、「しらせ」は昭和基地を出発した後もトッテン氷河を中心にさまざまな観測を行いながら1か月以上かけてオーストラリアに到着しました。その活動の様子は改めて皆さんにご紹介できたらと思います。
1月29日に観測船「しらせ」は昭和基地を離れ、いよいよ復路の海洋観測がスタートしました。我々マルチビーム測量班のメインイベントの一つである、リュツォ・ホルム湾内での12時間測量、湾外での20時間耐久測量を実施しました。
調査風景はというと…
一日中PCの画面を見ながら機器の設定値を調整しています。「しらせ」は観測対象の海域を漏れなく測量するため、マップ上に引かれた測線と言われる等間隔のコースを1本ずつずらしながら行ったり来たりしています。湾外での測線長は60kmにもなり、ついつい眠くなってしまいます。
第3観測室、通称サンカンで一緒に仕事をしている仲間たち。左がイケメンクライマーの久野さん、右が美しすぎる海上保安官の池内さんです(真ん中が私)。3人のうちの誰かはここに詰め、24時間機器を監視しています。
2月1日に無事越冬交代を終えた60次越冬隊の方々、夏期間目一杯仕事を頑張り、2月4日に61次越冬隊と涙の別れをしてきた61次夏隊の方々を船に迎え、復路のメンバーが揃ったところでとうとう東へ進路を向けました。しかしながら、シドニー到着、日本帰国はまだまだ先の話。これからケープダンレー沖を経てトッテン氷河での3週間にわたる海洋観測を実施していきます。
海洋観測チームはこれからが本番です!!
昭和基地の夏はハードです。夏隊のいる夏期間は、ほとんど毎日一日中明るく、長時間労働にはもってこいです。今年の夏期間は短いですが、やらなければならないことは盛沢山です。氷上輸送、航空輸送、持帰輸送から古い建物の解体、新しい建物の建設やコンクリートの打設、野外や昭和基地周辺での観測、観測隊の引継ぎなどなど、皆さん昼夜を問わず働いています。日課はだいたい以下のような感じです。
6時30分 朝食
7時45分 朝礼
12時 昼食
19時 夕食
19時45分 ミーティング
21時 お風呂
食事は基本的に時間通りに全員集まってとりますが、夜のミーティング後も作業が行われることもしばしばです。
朝礼後には何年か振りにラジオ体操をしました。
で、私はというと…昭和基地、野外、観測船「しらせ」にそれぞれ1週間くらいずつ滞在させていただきました。接岸している時には「しらせ」での測量作業はないのですが、「しらせ」は接岸後もたまに移動します。一回目は氷上輸送が終了してヘリによる空輸が始まるときにヘリが飛びやすい方角に船を向けました。二回目は氷採取のため氷山近傍まで移動しました。昭和基地のある東オングル島の周囲はびっしりと氷で覆われており水深が不明瞭なところだらけです。移動する際には船の航行安全のために水深を計測する必要があるので、その期間だけ私は「しらせ」に戻ります。昭和基地では海上保安庁さんの副標観測のお手伝いや国土地理院さんの測量のお手伝いをさせていただきました。
副標観測用のやぐら組み立てをお手伝い。
アウトドアシリーズ最終回です…第4話。またしても国土地理院さんのお仕事に同行させていただきました。1月24日に観測船「しらせ」を出発。今回向かったのは、インステクレパネという聞き慣れない場所です。ここは昭和基地より100km程南にある、白瀬氷河というどでかい氷河(なんと川幅は10㎞!Wikipediaより)の中流に位置する川岸の露岩地帯です。氷河に削られたほぼ垂直の崖が約1㎞にわたって続いている非常に面白い場所で、1枚目の写真のように、氷河の表面から我々がいる所までの高さは100mほどもあり、さらに氷河自体の厚さも数百mあるそうで、高層ビルの屋上の縁でキャンプしているような気分です。実際に見るまでは氷河と聞いて平らな氷をイメージしていましたが、川の周縁部では明らかに氷の流れが混濁しており、静かに激流が流れているという印象です。事実一日に5m以上の速さで流れているとのことです。私たちが出かけたのは、ちょうど白夜終わりで10km先の対岸の氷床に夕日が沈むのがよく見えました。スケールが大きすぎて距離感がわからない雄大な景色に、ただただ心奪われました。
対岸の氷床に沈む夕日。
重い機材を2時間担いで、南極に新たな基準点を設置しました。
崖の下には氷河の辺縁。激流が静かに流れる氷河。
今回は昭和基地での生活をご紹介いたします。我々61次隊は2月1日の越冬交代を終えるまで、全員が“レークサイドホテル”と呼ばれる第1夏隊宿舎(1夏)と、“エアポートホテル”と呼ばれる第2夏隊宿舎(2夏)に宿泊します。よくテレビなどで紹介される診察室や通信室、バーといった施設が完備されている昭和基地の宿舎は、隊員達から“神々の御殿”とも呼ばれる越冬隊の居住区で、1夏と2夏はあまり紹介されることはないかもしれません。それもそのはず、1夏や2夏は夏季限定の宿泊施設のため、狭い部屋に2段ベッドを押し込んだだけの非常に簡素な施設です。それでも1夏はまだましで、風呂、トイレ、洗面所、食堂が完備されています。ちなみにここは越冬隊の居住区で火災などが発生した際の予備的な施設でもあるそうです。
対して2夏はというと…水回りは全くなく、風呂、食事、トイレの際には500mほど南極の大地を歩いて1夏まで向かわねばなりません。しかしながら頻繁に起きる生理現象に都度対応しては時間がないので、通称“ションポリ”と言われる簡易の小便器が設置されています。
こんな感じです。これがどうしても克服できなくて昭和基地に行けない人がいるとかいないとか…。
続きまして第 3 弾。今回は“明るい岬”という昭和基地から北東に50㎞程離れたところにある、海岸の露岩地域(雪や氷に覆われていない、岩が露出している所)に行ってきました。ここではインフラサウンドという大気中の長周期振動をとらえるセンサーと地震計のバッテリー交換、データの抜き取りを行います。作業は専門の観測隊員が行うため、我々はテントの設営や、食事の用意、トイレのセッティングを行いました。実は、南極の野外におけるトイレ事情は、南極条約に基づく南極環境保護法というもので厳しく制限されています。例えば…大きい方も小さい方も海域への排出は OK。小さい方はやむを得ない場合のみ陸での排出もOK。海岸から5㎞以上離れていればどちらも氷床上に穴を掘って埋めてよし。それ以外はお持ち帰りです。雄大な自然を見ながら海に…というのもいいですが、そうはいかない場合もあります。お持ち帰り用の便利なグッズとして、災害時に簡易トイレとしても使用されるペール缶トイレというものがあり、我々はこれを持って野外に出かけ、現場に到着後はまず初めにこのトイレを設営します。テントや便座も付属しておりなかなかに快適です。気になる方は検索してみてください…。
待ち時間に周辺をお散歩。付近にはペンギンのルッカリー(みんなで集まって子育てをする場所)。子供にはまだ産毛が生えています。奥には大きな氷山が見えます。
水洗…ではなく沢を流れる雪解け水。植物は全くないものの、春を感じます。
大陸氷床の末端。この上には広大な白い大地。
今回も国土地理院さんの野外観測に同行させていただきました。S17という大陸氷床上(大陸だけど氷の上です)に行きました。ここはなんと滑走路! 飛行機が発着可能な氷床上の空港です。今年は残念ながら飛行機は来ませんが…。この付近に3か所設置してある赤白のポールを見つけ、そのポールの位置をGNSSを用いて 24 時間観測し、正確な氷床の変動を計測するというのが今回のミッション。ここでは1年間におよそ 5m、海に向かって氷床が流れているそうです。ポールが折れていて探すのに苦労した所もありましたが、何とか3か所ともGNSSアンテナを設置できました。受信機とバッテリーは穴を掘って埋めます。突如として強風が吹き荒れる南極大陸、機器が風で移動すると発見が難しくなってしまうので、できる限りしっかりと固定しています。
設置作業中は10m/s程度だった風速が、作業終了後2時間もすると…
猛吹雪になり、外にいると視界がほとんどありません。風速20m/sの風が15時間くらい吹き続け、その間は雪上車にて待機しました。中にはベッドもありなかなか快適です。食事も寝るのも車内です。トイレだけは頑張って外に出陣。
その後はブリザード一過の晴天に恵まれました。強風で倒れてしまっているのでは、と危惧していたGNSSアンテナも踏ん張ってくれており、無事にデータを取得できました。
GNSSの動作確認。この時 23 時です。白夜なので明るい。
国土地理院さんの観測の支援のため、ラングホブデ雪鳥沢近傍に設置している GNSS※固定観測装置の点検に同行させていただきました。ここでは、GNSS装置を固定設置して地殻変動の状況を通年で観測しています。通信設備があれば観測データの回収も楽ですが、無いために毎年現地に赴いてデータの抜き取り作業を行っています。また、今年は風雪により破損してしまったソーラーパネルの交換も実施しました。会社での普段の業務でも国土地理院さんにはお世話になっていますので、一緒に仕事をすることができありがたいです。
※Global Navigation Satellite System(全地球測位システム)。GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)などの衛星測位システムの総称。
寝泊まりした小屋周辺。美しい景色。
GNSS 固定点での作業終了後、付近の高台まで登山し基準点の整備を実施。
衛星から視認できるよう、白ペンキで対空標識を描きました。
年が明けて1月5日の15時頃、南極観測船「しらせ」はとうとう南極大陸の昭和基地沖に接岸しました。接岸といってもきちんとした港があるわけもなく、船は100m以上の深さの海の上に張った氷の真っ只中に泊まっています。まずはこの状態でロープを括り付け船を固定します。そして氷の上にタラップを設置し、そこから人や物資を下ろし、越冬や夏の間の作業に必要な大量の物資を昭和基地に向けて送ります。
私は海底のデータを取るために接岸するまで「しらせ」に残っていましたが、実はほとんどの観測隊員は接岸前、昭和基地の近海に停泊した1月2日より、ヘリコプターで基地に移動しています。 同行者を含めると70名近くいた観測隊員も接岸時に船中に残っていたのは10名ほど。こうなると日々の食卓も何だか寂しく感じます。
しかし、いよいよ南極大陸に到着しました。これからは陸上での調査が中心となり、海洋観測はひとまずお休みとなります。活動の場が変わることで、観測隊の雰囲気も変わってきました。私自身も貴重な昭和基地での生活を体験しつつ、陸上での調査や基地生活のサポートについて、できる限りのことをしていこうと思っています!
ついに南極大陸に上陸!
接岸した「しらせ」。氷の上での輸送が始まっています。
12月11日に今回の観測隊の第一目的地であるトッテン氷河海域に到着しました。12月21日までこの海域に留まり、たくさんのポイントで船やヘリコプターを駆使したさまざまな海洋観測を行いました。トッテン氷河はその氷が融けることで海水面の上昇に大きな影響を与えることが懸念されている氷河です。そのため、この海域の水温や塩分、海流、氷の厚さなどを調査することには大きな意味があると考えられています。
私の仕事は、これらの調査における重要な基礎情報である海底地形データを、観測船「しらせ」に搭載されているソナーを駆使して正確かつ迅速に提供することです。採泥や海底へのブイの設置など、海底地形の情報が特に重要な観測では、正確かつ精密な地形情報が不可欠です。調査の行われた海域では、精密な水深調査はこれまでほとんど行われておらず、調査地点の決定のために海底地形のデータはすぐに活用されました。
10日間天候にも恵まれ、ほとんど中断することなく順調に観測を続けることができました。また、「しらせ」にはたくさんの専門家の方が乗船しています。その専門は海流、海底の生物や堆積物、水中のプランクトンなどさまざまです。そして全員が自分の専門はもちろん、専門外である作業にも携わり、お互い協力しながらCTD※の操作や海水、海氷、泥の採取、観測ブイの設置などを行います。チームワークがあってこそ、調査をやり遂げることができるのです。
現在は氷海域を抜け、一路昭和基地に向かって移動中です。
※Conductivity Temperature Depth profiler。深さに沿って海水温や塩分などの変化を調べることができる機器
取得した海底地形の3次元データ。これを基に観測地点を決定しました。
オーストラリアのフリーマントルを出港して以来、我々を乗せた観測船「しらせ」は一日約5度※のペースでまっすぐに南下を続けています。出航から六日目の12月7日午前には航海開始後初めて氷山が見えました。目視観測によると全長500m、海面からの高さ70mの巨大な氷の塊です。
これを記念して「しらせ」搭載のドローンによる写真撮影が行われました。この間、艦橋やその上のアッパーデッキは記念撮影を行う観測隊員やしらせ乗員の面々でごった返しています。航行中、海底の地形調査を行っている私をはじめ、海洋観測を担当する隊員はほぼずっと観測を行っている状態であるため、あまり時間をとれないのですが…この時ばかりは、ここぞとばかりに記念撮影をしました。
しかしながら、南極経験者の多くは氷山には全く目もくれず…それぞれの仕事を黙々とこなしています。それもそのはず、南下を続けるにつれ日に日に周りには氷山が増え、現在は写真のような状態です。あちこちに氷山があり、一面流氷に覆われています。
現在はここで船を停めての観測や次の観測のための準備をしています。ここはすでに南極、時折氷の上にペンギンやアザラシが姿を現します。しかし最初のころに出てきてくれた動物たちは皆にちやほやされ、いっぱい写真を撮ってもらえるものの、氷山と同じく段々と物珍しさが薄れていき…今出てきてもあまり喜んでもらえません。目の前に、夢にまで見た景色が広がっているのに、「慣れ」というものは恐ろしいものです。かくいう私も今ではすっかり見ることに慣れてしまい、あまり写真も撮っていません。そのうち、良い写真を撮ってお見せできればと思います。
※距離を緯度で表したもの。1度はおよそ111km
まずは、自己紹介をさせていただきます。
名前は柴田成晴(しばた みちはる)、北海道江別市出身、千葉県在住の41歳、東陽テクニカに勤務して13年になります。
主に海洋観測や、計測に関係する機器のメンテナンス、顧客サポート、観測、測量支援を行っています。海のあるところ日本全国津々浦々を飛び回っており、一応会社に席はあるものの、そこで仕事をすることはほとんどありません。
家族は妻、長女(高1)、長男(中1)、次女(小5)の4人です。出張がちの生活を送っているため、我が家では私のいない社会が完成してしまっており、たまに家にいると腫れ物もしくは空気として扱われ…今回の第61次南極地域観測隊への参加が決まった時も、妻からは「よかったね」、子供たちからは「そうなんだ」と言われ、快く(?)送り出してもらっています。
12月2日午前10時過ぎに観測隊を乗せた南極観測船「しらせ」はオーストラリアのフリーマントルを出港し、文明都市とはしばらくお別れとなりました。
なかなか想像がつかないと思いますが、船の上にはコンビニもホームセンターも薬局もないし、ネット通販も配達に来てくれません。業務内、業務外を問わず、万一トラブルが起きた時に必要なものがなくても、船の上ではそれを手に入れることはできないのです。フリーマントルを出てから3月中旬に同じくオーストラリアのシドニーに入港するまでの約4か月間、必要なものを補充する方法はありません。トラブルが起きないのがベストですが、何かしらの事象は必ず発生します。その時には、どれだけ事前に入念な準備をしたかと、あるもので何とかする対応力が問われるのです。例えば…ネジがなければ作るしかありません。
出港してからは、「しらせ」の運用を行ってくださっている自衛隊と観測隊のそれぞれの紹介から始まり、避難訓練、溺者救助、ヘリコプター輸送、火災訓練などなど、行事が目白押しです。艦内での生活や業務内容については追い追い紹介させていただきますが…まずは行ってきます!!