FAQ

燃料電池

燃料電池評価

ID.

Q. 高電流密度になると電流が伸びなくなるのはなぜ?

A.


まず電子負荷装置の測定の設定として「下限電圧」の設定をしていないことを確認してください。セル保護のために低電圧にならない設定をしていると、その制限により電流密度を上げられなくなる場合があります。

設定制御上の下限が設定されていない場合は次を参考にしてください。
一般的な電子負荷装置には、”低電圧動作特性(最低動作電圧)”という仕様があります。これはその電子負荷装置で”最大電流を測定するために必要な電子負荷装置側の電流端子間電圧”を示すものです。「1.5V@100A」というような表記で記載され、この場合は100Aの測定を行うには電子負荷装置の電流端子間電圧が1.5V以上必要だという意味になります。この限界ラインは0A/0Vからの直線で存在し、同じ装置の場合50Aの測定には0.75V以上が必要ということになります。
当社システムで標準搭載している電子負荷890eシリーズでは燃料電池単セル(max 1.2V前後)の測定をするため「0.1V@50A」というように、かなり低い電圧まで測定できる設計になっています。
注意が必要なのは、4端子測定の場合、セル電圧がこの下限電圧以上あっても電流測定系ではケーブルの抵抗による電圧降下が起こり、計測器側の端子間電圧は下限電圧に到達することがあることです。オームの法則により高電流密度(大電流)になるほど電圧降下は大きくなり、低電圧域での測定は困難になっていきます。
例えばケーブルの抵抗が1mΩあった場合、1A発電時の電圧降下は1mVで殆ど気になりませんが、100Aでは100mV=0.1V低下します。面積の大きいPEFC単セルで1000Aの発電を同じケーブルで行うと1V低下することになるため、起電圧自体が1V程度のPEFCでは現実的に測定不可能という事態になるわけです。
この状況になっていると思われる場合は、電子負荷装置側の端子間電圧をテスター等で測定し、電子負荷装置の下限電圧に到達していないかを確認してください。
このケーブル抵抗による電圧降下を小さくするには、ケーブルを太く・短くして抵抗を小さくするしかありません。しかし、太くするとケーブルが曲がらず取り回しが難しくなり、短くすると融通が利きませんので、ある程度妥協が必要となります。

この電子負荷装置の最小動作電圧(低電圧通電特性)の問題を無視できるタイプとして、「ゼロV対応電子負荷」と呼ばれるモデルを販売しているメーカーもあります。弊社で取り扱っているScribner社製 890ZV型もその一つです。
このゼロV対応電子負荷は、内部に電圧降下分を相殺するための直流電源を搭載したような構造になっており、装置の端子間電圧がゼロVになっても高電流の発電測定が可能となっています。
ここで注意が必要なのは、補助電源によってセル電圧がゼロVになっても大電流が流せてしまうことです。補助電源に頼ってI-V測定を行うと、0V/50Aといった状態まで測定される場合があります。この時の発電電力は”0V×50A=0W”となりますから、明らかに不自然な状態になっていると言えます。ゼロV対応負荷は便利ですが、注意点も把握して使用しましょう。
なお、大容量の電子負荷装置ではゼロV対応のモデルはまずありません。なぜなら最大電流と同じだけの出力を出せる電源を内蔵する必要があるためで、それだけ大容量の電源を電子負荷装置に内蔵することは価格的にナンセンスだからです。
その点で数100A以上の出力の燃料電池単セルの測定がFC評価装置で最も難易度が高く、価格的にも高価になる可能性があります。なぜならスタックセルにすると電圧が稼げるため、電圧降下相殺用の直流電源が不要になる可能性があるからです。

なお、ゼロV対応電子負荷装置と同じようにゼロVまで測定できる計測器として、電子負荷装置ではなくバイポーラ電源を搭載しているメーカーもあります。
バイポーラ電源の場合、制御の主体は電源になりますので、燃料電池に電源から電流/電圧を流し、FCは無理矢理その”場”に馴染むように動作する、という構図になります。バイポーラ電源は正負跨いで電流・電圧を印加できるため、FC自身の性能を超えてしまう場合があります。ゼロVラインを跨いだI-V曲線(一部メーカーでは”過負荷試験”と呼ばれています)などがその例で、こういう状態では通常の発電反応では起き得ない反応現象が起こっていますから、故意でなければ要注意となります。

自分の使用している電子負荷装置(または機能的に類する機器)の仕様をよく把握して測定することをお奨めします。

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